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米軍ヘリパッド建設で沖縄・高江地区は「オスプレイ銀座」に!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.11.06 20:00 最終更新日:2016.11.06 20:00
中央のメディアではほとんど触れられることのなかった沖縄県東村高江地区の米軍「ヘリパッド建設」問題。政権が「力による解決」を選択したその結末は――。ジャーナリスト・三山喬氏の渾身の現地ルポ!
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通常なら行き交う車もまばらな僻地の山中がこの夏、沖縄米軍基地問題の「ホットスポット」になっている。ぐるりと集落を取り囲む密林の海兵隊訓練場内に、6カ所のヘリパッド建設が持ち上がる東村(ひがしそん)高江地区。
政府は人口約140人のこの地区に7月、本土から500人もの機動隊を送り込み、抗議する住民や支援者を排除して、2年間止まっていた工事を再開した。
県内外から高江に結集する人はしかし、むしろ数を増し「徹底抗戦」する構えだ。
旧盆明けの8月19日、訓練場メインゲート前には、建設用土砂を運ぶダンプカーの通行を阻止するため、未明から500人を超す人々が座り込みに集まった。
「私たちは静かな暮らしを守りたいだけなのです」と、「住民の会」の男性が訴える。人々の背後には、愛知県警の車両と機動隊員がずらりと立ちはだかる。
一帯は特別天然記念物ノグチゲラの生息地で、その営巣期3月~6月には工事ができないため、抗議運動のリーダーは「来年2月まで週1日、あるいは週2日、大人数の座り込みで工事を遅らせれば、(早期完成を目指す)国の目論みをくじくことができる」と呼びかけた。
だがこの日も、作業の遅れは半日にとどまり、座り込み人数の減った午後、機動隊員は人々を押しのけて、ダンプを現場へと通した。高江では、こうした攻防が日々続いている。
2014年11月、自民党系の元那覇市長・翁長雄志が、普天間基地の辺野古移設反対を掲げて新知事に当選した。筆者は翌春から沖縄を取材しているが、この夏、県民の憤りは、過去最高レベルのボルテージに達している。
中央メディアの報道が、東京都知事選やポケモンGO騒動、そしてリオ五輪へと移り変わるなか、ここ沖縄では、政権の沖縄政策が7月から強硬策に転じるさまが、最大ニュースとして刻々と報じられてきた。
■「仕方がない」と容認する声もあったのだが
辺野古問題と比べるとマイナーな高江の問題が脚光を浴びたのも、「オスプレイ銀座」となる地元への同情のほか、あまりに暴力的な政府のやり方が「銃剣とブルドーザー」と呼ばれた米軍統治時代の基地収用と重なったためだ。
機動隊の大群が工事車両進入路を確保した7月22日には、座り込みの3人が救急搬送され、バリケードの車両上で男性が顔面を殴打される様子がニュース映像で流れた。
新たなヘリパッド建設は、北部訓練場過半の返還と引き換えにおこなわれるもので、県内には「仕方ない」と容認する声も少なくなかったが、まるで「武力制圧」さながらの光景に「ひどすぎる」という声が広がったのだった。
6カ所中2カ所はすでに完成し、オスプレイは昼夜を問わず集落の上空を飛び交っている。6月に発生した夜間から明け方にかけての騒音件数は383回にものぼった。
不眠に悩む子供を連れ、隣村に避難した住民もいて「6カ所すべてが造られたら高江にはもう住めない」と訴える。
「沖縄問題」の全体を見渡せば、昨年秋、辺野古の埋め立てが国と県との法廷闘争になったあと、反基地世論に停滞感が漂った時期もある。1月の宜野湾市長選では、自民系の現職が翁長派の新人に予想外の大差で勝つひと幕もあった。
だがそんな雰囲気は、元海兵隊員による20歳女性の暴行殺人事件で一変した。4月28日夜、自宅近くをウオーキング中だった女性を、容疑者は突然、背後から殴りつけ、何度も刃物を突き立てて殺害し、亡骸を山中に捨てた。
「これほどむごい犯罪は、沖縄でも珍しい」(稲嶺惠一元知事)というケースだが、遺族や県民の多くは「戦後、繰り返されてきた基地犯罪のひとつ」と受け止めた。
実際、1972年の本土復帰以後、米兵による凶悪犯罪(殺人、強盗、強姦、放火)検挙件数は600件近くにのぼっている。
だが、直後に報じられたのは「(伊勢志摩サミットを前に)最悪のタイミングだ」という、他人事のような政府・与党内の反応であった。
「事件を反基地運動に政治利用するな」
県内外からは、世論を牽制するそんな保守派の声も相次いだが、県議会は「海兵隊撤退」にまで踏み込んだ抗議決議を、公明党も含めて採択した(自民党は退席)。
6月5日の県議選(定数48)においては、社民、共産、社
大(社会大衆党)などの翁長知事与党が27議席を得て大勝した。