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座礁事故でタンカーが立ち往生「スエズ運河」1回の通行料は4000万円!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.03.26 15:20 最終更新日:2021.03.26 15:20
3月23日、エジプト・スエズ運河でコンテナ船が座礁し、航路を遮断した。いまなお、復旧のメドはたっておらず、多くの貨物船が運行再開を待っている状態だ。
今回災難に見舞われた船は、世界最大級の巨大コンテナ船「エバーギブン」だ。全長は400メートルに及ぶ。強風と砂嵐による視界不良で船体が押し出され、座礁したとみられている。
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現場となったスエズ運河は年間1万9000隻もの貨物船が通行しており、通行したすべての船の重量を合わせると11億7000万トンになる。まさに「ケタ外れ」の運河だが、驚くのはその「通航料」だ。海洋問題研究家の山田吉彦氏に話を聞いた。
「(通航料は)平均で3000万円強は取られるんですよ。今回のエバーギブンだと、大きさから考えて4000万円くらいだと考えられます」
通航料は船の「重さ」「種類」「リスク」に応じて計算される。たとえば、液化天然ガスを運ぶ場合はリスクが高いので、5000万ほどに高騰する。いったいなぜ、ここまで高く設定されているのか。
「中東とアラビア海とヨーロッパを結ぶ航路で、スエズ運河以外をたどるとなれば、南アフリカの喜望峰を進む以外にありません。でも、アラビア海とロンドンを往復する場合、喜望峰を通ると2万1000kmですが、スエズ運河を通ると1万2000kmですむんです。
喜望峰だと、タンカーで行くと10日くらい余計に時間がかかってしまう。タンカーは、燃料代や人件費を考えると、1日1000万円くらいコストがかかります。そうすると10日で1億円ですよね。となるとスエズ運河に5000万円の通航料を払ったほうが、お金も時間も “お得” になるんです。要は、別の航路を進むよりコストが半分ほどですむなら、それなりに通航料を払ってもいいという計算なんです」(山田氏)
巨額の通航料は、エジプトに大きな利益を与えている。
「満額というわけじゃないですが、基本的にはエジプト政府に入る金額が多くなります。エジプトのGDPの約2.5%がスエズ運河の通航料なんで、まさに国益そのものです。だからエジプト政府もスエズ運河を必死に守りますが、海の事故は自然相手なので、完全には避けられません。であれば、事故後の処理をすみやかにするしかないでしょう」
現在、タグボートでの離礁作業が進められているが、25日、船の所有会社は「離礁は困難を極めている」との見解を発表した。一部報道によれば、運河の航行不能による損害額は、単純計算で1時間430億円にのぼるという。エジプト政府としても、気が気でないはずだ。