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片道8時間…いま敢えて尖閣諸島に行ってきた!

社会・政治 投稿日:2012.10.09 07:00FLASH編集部

 日本のみならず、世界で報じられる尖閣諸島問題。だが、そこで伝えられるのは政治の動きばかり……。尖閣の海とともに生きる人々の心情は伝えられない。彼らにとって尖閣とはなんなのか?本誌記者は国境警備の最前線・石垣島に飛んだ。

 

「明日、天気がよければ尖閣に行きます。あくまでも漁をするんですよ」

 

 地元漁師の言葉に本誌記者は安堵した。取材最終日の前日、尖閣諸島に向かう算段がようやくついた。尖閣周辺海域は基本的に漁業目的の航行以外は認められていないので、本誌記者とカメラマンの書類上の身分はこのときから”漁師見習い”となった。

 

 10月2日午後9時半、チャーターした漁船を海上保安庁(海保)と公安調査庁の職員が取り囲む。『臨検』と呼ばれる厳重なチェックをするためだ。

 

「尖閣には上陸しないように。犯罪になりますからね」と海保の職員は何度も言った。石垣島から尖閣諸島までの距離は約170キロメートル。漁船が出港すると、その後ろを2隻の海保の巡視船が追う。“尖閣には上陸するつもりはない”という記者の言葉は信用されていないようだ。

 

 荒波にもまれること8時間。空が白みはじめたころ、はるか先に魚釣島が見えた。尖閣諸島で最大の島だ。思わず「でかいなぁ」と声が出た。

 

 魚釣島の手前5キロメートルのあたりでいったん停止する。海保の立入り検査のためだ。上陸用ボートなどがないか、職員が目を光らせる。

 

「島から1海里(1852メートル)以内に絶対は入らないように」と再び釘をさされた。 尖閣諸島周辺の海は豊かな漁場だ。島の手前、3キロメートルのあたりで船を止め、マグロを餌に釣り糸をたれる。水深は250メートル。”漁師見習い”2人も作業を手伝う。

 

 早くもあたりがきた。1メートル級のカンパチと、50センチ級の高級魚アカマチが同時に釣れた。予想以上の釣果で、まさに入れ食い状態。

 

「釣り好きにはたまらない場所だよ」と船長は誇らしそうに微笑んだ。

 

 魚釣島の1海里ぎりぎりに近づく。このまま魚釣島を一周しようとしたとき、漁船の後方にいた巡視船が速度を上げ、島と漁船の間に割って入ってきた。魚釣島の裏側にまわろうとする漁船の進路を海保の巡視船が阻む。

 

「このまま曲がったら、ぶつかっちゃうよ。こんなのは初めてだ」と船長は言って舵を戻す。尖閣周辺の海域にいたのはわずか5時間。昼12時過ぎに尖閣を後にした。

 

 じつは同時刻、中国の海洋監視船3隻が尖閣諸島の領海を侵犯していたことを陸に戻ってから報道で知った。海保の巡視船に阻まれて行けなかった海域のほうだ。尖閣の豊かな漁場で安心して漁ができる日は来るのだろうか。

 

(週刊FLASH 2012年10月23日号)

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