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見よ!日本最強のパラシュート部隊「第一空挺団」の落下傘技術社会・政治 2017.01.11

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 防衛ジャーナリストの桜林美佐氏が、日本最強のパラシュート部隊「第一空挺団」の訓練の様子をルポする!

 千葉の習志野あたりに住む人に第一空挺団に行ってきたと話をしたら、「ああ、よく居酒屋で大騒ぎしている人たちね」と返されたので、思わず噴き出してしまった。考えてみれば、日本では、彼ら落下傘部隊が精鋭集団であると認知されているとは言いがたい。

 

 しかし、「空挺」といえば最精鋭部隊を意味することは世界中の常識だ。

 

「グリーンライト! ゴー!」

 

 米陸軍の第82空挺師団出身者によると、空挺学校でブラックハットと呼ばれる黒い帽子の鬼教官の下で覚えた手順が、いつまでも体に染みついているという。

 

 自衛隊も同じだ。ヘリの赤いランプが消え緑色が点灯したら降下の合図である。前に乗り出すと凄まじい風と轟音。しかし躊躇(ちゅうちょ)して瞬時でもタイミングを外すと、落下地点が変わってしまう。後続の仲間を危険に晒(さら)すことになるから、降下の合図と同時に何が何でも飛び出さなければならない。

 

 通常は300数十メートル上空から降下するが、この高さだと落下傘が開かなかった場合、9秒後に地上に激突する。落下傘の開傘(かいさん)は降下から4秒後と決まっている。主傘が開かなかったら、予備傘の開傘にも3~4秒かかるから、1秒ないし2秒後に対処しないと激突死してしまう。

 

 降下訓練では「4秒数えろ!」と叩き込まれる。「初降下…2降下…3降下…4降下、点検!」のかけ声で、4秒後に落下傘が無事に開いたかどうかを見る。落下傘が開いたらあらかじめ予想した降下地点に着地するため風上に向かい、両足つま先を揃え体重を分散する受け身の姿勢をとる。着地したらすぐに起き上がり、速やかに傘を畳んで次の行動に移る。

 

 第一空挺団が所在するのは千葉県船橋市にある習志野駐屯地だ。

 

「ここでは昔からいわゆる『鬼軍曹』がいて、隊員を育てています。空挺団は階級なんかじゃない、実力がものをいう世界。職人集団ですね。降下する際の機内では私も降下長の『降下!』の合図で跳び出すのです」

 

 そう語るのは第一空挺団長だ。正月明け、尖閣上陸を想定した「降下訓練始め」では、団長が先頭切って降下する姿があった。地上部隊指揮官の務めだ。しかし、航空機内を統制するのはあくまでジャンプマスターたる降下長である。これは下士官が将官に指示を出すわけで、ほかではありえないことだ。

 

 猛者はほかにもたくさんいる。たとえば、降下地点を地上から誘導する降下誘導員の力も大きい。降下誘導員は誰よりも先に降下するため、各人が誘導なしで降下できる実力を持っている。

 

「風を計算してぴったり一線上に降りられるよう飛行機を誘導するんです。オペレーションをする際、降下地点が狭いという日本特有の事情もありますが、米国の方式とはまったく異なるもので、世界に誇れる実力を持っています」(団長)

 

 自衛隊の敷地の目の前に住宅地が広がるという、信じられない環境が生んだ技だ。米軍などではそこまで正確な場所に着地する必要はない。

 

■空挺団にある『傘の絆』という言葉

 

 第一空挺団長がこんな話を聞かせてくれた。

 

「空挺団には『傘の絆』という言葉があるんです。自分の命を預ける落下傘ですが、これを誰が畳んでいるのかは、落下傘の点検状況を記した経歴簿を見ないとわかりません。人を信じ、互いに協力しなければ、空挺隊員はやっていかれないのです」

 

 落下傘を畳むのには資格が必要で、「パラシュートリガー」と呼ばれる落下傘の整備中隊がこの任にあたる。彼らは万国共通で赤い帽子を被り、一目置かれている。

 

 自分の落下傘が万全かどうかはリガー(整備員)にかかっている。偉い将官の落下傘を陸士などの若い隊員が畳んでいるかもしれない。それでも信じて飛べるのは、彼らが階級や年齢を超え、鎖のように固い傘の絆で結ばれているからだ。

 

 そもそも、主傘と予備傘、そして大きな背嚢(はいのう)に加え小銃などを装備すれば50キロ以上の負荷がかかり、身動きもしにくい。物をとったり紐を結んだりするのも互いに手助けしなければならない。団長は「空挺隊員は降下に関しては一人じゃ何もできないんですよ」としみじみ語った。

 

 私が彼らの屈強さ以外の一面を知ることになったのは、東日本大震災の取材をしていたころだった。捜索活動後、民家の布団や畳が整然と重ねて片づけられていて、住民が感動している区域があった。こんな仕事をするのは誰なのかと調べてみたら第一空挺団だった。

 

 また、かわいがっていた猫と犬をどうしても助けてほしいと懇願したら連れてきてくれたという話もあった。

 

 第一空挺団に女っ気はまったくない。いくら平等だ機会均等だといっても、やはりあれだけ過酷な任務を遂行することは女性にはできないのだ。

 

「今日死んでもいい、そんな悔いのない1日を送るように言っています」

 

 ベテラン隊員の言葉が耳に残った。たった4秒が生死を分ける、そんな日々を送る男たちの世界をほんの少し垣間見させてもらった。

(週刊FLASH 2013年10月22日号)

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