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「人事評価がすべて」はホント…メガバンク“出世残酷物語”

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2013.08.29 07:00 最終更新日:2016.03.01 22:16

「お前なんて銀行員やめちまえ!」

 

 みずほ銀行のさる支店長からの罵倒が毎朝、1カ月間も続く。しかも皆の面前で。罵倒された部下はじっと耐えるしかない。それが銀行という世界だ。

 

「ある支店では、課長が突発性の難聴になり左耳が聴こえなくなった。原因は不明でしたが、その課長の左側の席が副支店長と支店長の席。課長の耳は、異動したらすぐに治ったそうですけど(笑)」(みずほ銀行の40代本店勤務)

 

 支店長は「天皇」と呼ばれることも。人事評価を握る者が誰よりも権力を持つ。経済評論家の山崎元氏が言う。

 

「人事評価によって、そのときの給料の額だけじゃなく、どこまで出世できるか、銀行にいられる期間、将来の出向先のグレード、将来もらえる年金の額など、人生のほぼすべてが左右される。上司にたてつくのはほぼ不可能。評価を握る人事部は強大な権力を持ちます」

 

 銀行員がもっとも気にするのが行内での序列。だが、この序列はすでに入行時から決まっている。旧都銀出身で企業アドバイザーの津田倫男氏が語る。

 

「銀行側は否定するでしょうが、入行前から査定して、序列がついているのです。たとえば5段階評価で1~5までの“背番号”がついた状態で新人は入行します。本人が知らないだけ。1店め、2店めの配属で、ふるいにかける。2店めまでの評価で勝負はほぼ決まり。この評価が一生ついて回るのです。以降の逆転はほとんどありません」

 

 序列・肩書をもっとも大事にするのが銀行員というもの。だからこそ、銀行が吸収・合併され、メガバンクへと再編されるなか、どの銀行が主導権を握るかは生死を分けた戦いだった。

 

「吸収された旧行は、人事の持ち点をズタズタにされる。人事権を奪われるから、吸収された側は出世できないのです。’96年に三菱銀行と東京銀行が合併した際、主導権を握る三菱の官僚的体質になじめず、東銀の多くの行員が辞めていきました」(前出・山崎氏)

 

 ‘06年にUFJ銀行と合併する際も東京三菱銀行が主導権を握った。東銀ほどの冷遇はしなかったが、優秀といわれたUFJの勘定システムに三菱が飲みこまれることはなかった。さらに、「UFJ出身者が頭取になるのは無理」(旧UFJ行員)

 

 出世競争に勝ち抜いても吸収合併されれば終わり。厳しい世界だが、給料が高いのは事実だ。三菱東京UFJ銀行の30代営業部門の行員が語る。

 

「早ければ30代半ばで課長になり、年収は1000万円を超えます。早い支店長なら40代前半で1500万円。本部の部長ともなると役員一歩手前で2000万円に近い。役員になると2000万円超。ただ、同期で執行役員以上になれるのは、ざっくり言うと2%ぐらいでは……」

 

 いまは3大メガバンクなら毎年1000人の新人が入行する時代。総合職は500~600人。出世への道は、ますます厳しくなる。前出の津田氏が語る。

 

「部長代理になれたら万々歳という時代です。部長代理は普通の企業の係長ですよ。係長がキャリアのゴールっていうのも厳しいですよね。銀行が高給なのは間違いないですから、係長ならいいかと期待値を下げないとやってられないですよね」

 

(週刊FLASH 2013年9月10日号)

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