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漁業革命!町工場発の水中探査機で魚がバンバン取れる!?
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.03.06 17:00 最終更新日:2017.03.06 19:07
下町にある町工場が元気だ。
東京・葛飾区にある5つの町工場が、水深1000mを探査できる
小型カメラを開発した。「ド・ボーン」と名付けられた直径20cmの水中探査機は、ケーブルを通じて、水中映像を即時に映し出す。
プロジェクトリーダーを務めるのは葛飾区でゴム製品を作っている杉野ゴム化学工業所の社長、杉野行雄さんだ。
「日本の周りの海底にはメタンハイドレートやレアメタルなどのお宝ともいえる資源が眠っていると聞き、深海への思いを募らせたことが開発のきっかけです。最初に『江戸っ子1号』を手掛けて水深7800mの探査を成功させました。
その後、いろいろな方と話をしているうちに、求められているものは水深1000m程度の水中探査機で、しかも低価格なものだと気がついたんです」
小型で安価な水中探査機の需要が一番見込まれているのが、漁業への活用だ。
漁業では魚群探知機の登場以降、目新しい技術の進展がない。今までは勘と経験だけが頼りだったところに、魚の実際の姿をモニターで確認できる水中探査機が投入されれば、漁の確率が大幅に上がると期待されている。
従来の水中探査機は一台で数千万円もするが、「ド・ボーン」ならば300~500万円ほどで売り出せるという。決して安い買い物ではないが、事業投資と考えれば無茶な金額ではない。また水産高校などの学習用としても手が出る範囲だ。
「一番大変だったのは、資金の確保でした。開発しているのは町工場5軒ですから、どこもお金に余裕がありません。国や東京都の助成金を受けようと思って準備していたところ、葛飾区から特別資金として1000万円を出していただけることになったのです。それも助成率75%で、250万円の返金でいいという素晴らしい条件でした。資金の目途がたったことで開発は一気に進みました」
杉野さんには苦い思い出があった。
「最初の『江戸っ子1号』のときは、私が風呂敷を広げ過ぎてしまって……。話を進めようとするたびに20人が集まって会議をしなければならず、なかなか意見がまとまらなかったんです」
そこで「ド・ボーン」の開発は少数精鋭の5軒の町工場を選んだ。ポイントは「やる気がある」ことと「開発に必要な技術力を持っている」という2点だったという。
いいアイデアが浮かぶと「今晩、飲み行こう」と仲間を誘い、店の紙ナプキンにイラストを描いて説明をした。すると2~3日後には「できたよ」と返事が来るという。
「そのスピード感が町工場の強み」と杉野さんは胸を張る。
助成金を受け取ってから、わずか7カ月で「ド・ボーン」は2000mまでの耐圧検査をパスし、あとは春先の海中で実証試験を残すのみだという。
評判が評判を呼び、現在、商品化に向けた相談がどんどん舞い込んでいる。日本のものづくりの原点である町工場には、スピード感あふれる技術力と間違いのない職人技が今でも受け継がれているのだ。