6月30日未明、福島県の勿来(なこそ)火力発電所9号機がトラブルのため停止した。この9号機の出力は最大60万kwで、そのうち約半分の電力は東京電力に供給されている。
猛暑が続き、電力需給が逼迫する中、状況はさらに厳しいものとなる。
そんな中、浮上しているのが「計画停電」の噂だ。29日には「計画停電」がTwitterのトレンド入りしている。ネット上には
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《計画停電とか本当にやめて 小さい子供とかご老人がいる家は本当に死人出すよ……》
《この暑さで計画停電とかやったら死者も出るし、何より冷凍庫が全滅する!政府は責任取ってくれるのかしら?》
と、悲鳴のような声が多数上がっている。
多くの人たちの記憶にあるのは、2011年に起きた東日本大震災後の計画停電だ。福島の原発だけでなく、多くの発電所が運転を停止、深刻な電力不足に陥ったため、東京電力管内で大規模な計画停電が実施されたのだ。対象地域をグループ分けし、順番に停電する「輪番停電」は、3月14日から2週間続いた。
《節電か…なんか震災思い出した 計画停電辛かったな》
《冷凍庫に保冷剤を追加しておきました。震災で経験した計画停電。二度と嫌!!何でこんなことに。。日本の高性能火力発電はどうなった》
資源エネルギー庁は、東京電力管内に「電力需給逼迫注意報」を出し、節電を呼び掛けているが、本当に「計画停電」は起こりうるのか。電力システムに詳しい「エネルギー経済社会研究所」代表の松尾豪氏に聞いた。
――「計画停電」はあるのか。
「現時点で、その可能性は低いと考えています。東京電力は東北電力など各社から電力を融通してもらい、需給バランスを保っている状況ですが、今後、いくつかの火力発電所が稼働し、発電量が増えます。可能性はゼロではありませんが、「計画停電」には至らないと考えます」
――勿来発電所のトラブルの影響は?
「予備率にして0.8%程度の影響はあるものの、30日夕方以降、復旧する見込みでなんとか持ちこたえられるでしょう。また、30日から老朽化で停止していた千葉県の姉崎火力発電所5号機が再稼働し、最大60万kwを供給します。これで状況はある程度、改善される見込みです。ただ、気温が高いと、勿来のように発電機のトラブルが増えます。トラブルが重複して発生すると、電力供給が下がり、非常に厳しい状況に陥ります。その場合は『計画停電』という可能性が出てきます」
――経産省が発表した電力需給の見通しによれば、夏より冬のほうが状況は厳しいとされていますが。
「その通りです。冬は夏よりも太陽光の発電量が落ちるためです。 夏よりもむしろ冬のほうが、『計画停電』の可能性は高いといえるでしょう」
――この電力不足、予測はできなかったのでしょうか。
「2018年の時点で、すでに電力不足になるという予測はされていました。再エネの拡大と電力自由化によって、火力発電所が維持できず、次々と廃止されていたのです。 このような弊害について、国民的議論がされることもなく、ここまできてしまったのは、非常に残念なことだと思います」
危機的状況にある今こそ、「本当に必要なものは何か」を問い直すチャンスなのかもしれない。
( SmartFLASH )