社会・政治
海自・呉地方総監、国防費増額を「無条件に喜べない」発言に共産党も反応 ネットでは賛否両論が
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.07.06 20:26 最終更新日:2022.07.06 21:06
7月4日、海上自衛隊呉地方総監部(広島県呉市)の伊藤弘総監は、参院選で防衛費を対GDP費2%に増額することが争点になっていることについて記者会見で問われ、「もろ手を挙げて無条件に喜べるかというと、私個人としては、まったくそういう気持ちにはなれない」と述べたうえで、こうつけ加えた。
「社会保障費にお金が必要であるという傾向に、まったく歯止めがかかっていないわけです。どこの省庁も予算をほしがっている中にあって、我々が新たに特別扱いを受けられるほどに、日本の経済状態ってどうなんだろう、よくなっているのだろうかということを、一国民としての感想ですが、思います。
【関連記事:フジテレビ「防衛費 “倍増” 90%が支持」…安倍元首相は7兆円、高市早苗氏は10兆円明言で「どこまで上がる?」の声】
大事なのは、何を我々自身が必要としているか、ということをしっかりと積み上げる。整理して国民に提示していくということなんだろうなと思います」
さらに、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、国内で弾薬の確保を求める議論があることにも触れ、
「極論ですけど、ミサイルや大砲の弾をたくさん仮に買ったとしても、それを撃つプラットフォームである、船の手入れを怠ったら海の上に出て行けない。
目を引かれる装備とか技術とかいろいろあるんですけれど、もっと地に足を着いたメンテナンスですとか、ロジスティクス、ここにももっと注目をしてほしい。その辺に対する国民、一般の理解をいただけたらなというふうに思っています」
とも述べた。
伊藤総監の発言が報じられると、日本共産党公式Twitterがリツイート。立憲民主党の泉健太代表も自身のTwitterでリツイートしたうえで、こうつぶやいた。
《これはとても冷静な受け答えだと思います。制服組としては、派手な兵器購入より、真に必要な分野への防衛予算の積み上げが大事。と言ったまで。現場と実務を担う立場として当然のことと思います》
「伊藤総監は、前任の舞鶴地方総監時代、『どんなに素晴らしい機械ができても、使うのは人間。防衛力の根幹は人的資源であり、人を大切にしなければならない』と述べるなど、コミュニケーションを非常に重視する人です。1990年から2年間、コロンビア大学大学院に留学し、英語も堪能。舞鶴時代、Twitterの投稿を充実させ、フォロワー数を倍増させるなど、情報発信を大事にする人でもあります」(地方紙記者)
伊藤総監の発言があった翌5日には、防衛省の青木健至報道官が、「発言は総監個人のものだと承知している。事実関係について確認が必要だ」としたうえで、「防衛省としては、防衛力の抜本的強化にあたって裏づけとなる予算をしっかりと確保していく考えだ」と強調している。
伊藤総監の発言が報じられると、ネット上では称賛の声が上がった。
《自衛隊の幹部にこういうバランスの取れた、実践的な考え方を持っている人がいてくれることは実に心強い。こういう方の存在自体が防衛力を強めるのだと思う》
《安全保障の責任ある立場の人の考えを知って安堵。何が必要の議論が無いまま予算だけ倍にしても、無用の長物を準備し国会議員の活動実績になるだけで意味なし》
一方で、否定的な意見もあった。
《国防を担う自衛隊の高級幹部が例え個人的な意見と前置きしても(そもそも前置きする時点で異端の意見だと認識している)あってはならない発言だと思う》
《こういう政治向きの話は省内や議会で主張してもらいたい。職掌柄、少なくとも一般に公の場で公表するべきではないと思う》
2023年度の防衛費として、安倍晋三元首相は「6~7兆円」、高市早苗政調会長は「10兆円」と、金額を具体的に挙げている。「兆」という単位がいともたやすく語られる状況に、伊藤氏の発言が一石を投じたことは間違いない。
( SmartFLASH )