11月30日、種子島から小惑星探査機「はやぶさ2」が打ち上げられる。初号機の「はやぶさ」は、7年間かけて小惑星イトカワから微粒子を持ち帰り、’10年6月13日、オーストラリア上空で燃え尽き、その役目を終えた。今度の目的地はイトカワではなく、小惑星1999JU3だ。
「小惑星にはS型とC型があるんです。S型は石でできており、C型には炭素が豊富にある。炭素って、酸素と結びついて二酸化炭素になったり、水素と結びついてメタンになったり、変化しやすい元素です。にもかかわらず大量の炭素が残っているということは、その小惑星が誕生以来、手つかずで生き延びてきたことを意味します。つまり、46億年前に太陽系が出来たときの姿を知るうえで、とても貴重です」
こう話すのは、国立天文台の竝木則行教授だ。確認されている小惑星は60万個ほどだが、ほとんどが火星より遠くにある。現在の日本の技術でたどり着けるのは、わずか30個しかない。
「しかも、その30個のうち、C型は1999JU3ただひとつ。S型のイトカワは『行ける天体にまず行こう』ということでしたが、今度は『いちばん行きたい天体に行こう』ということです」(同)
竝木教授は’11年末から、レーザー高度計の開発に参加してきた。「はやぶさ2」で使用されるレーザー高度計は、小惑星にもっとも近づいたときの30メートルから、25キロ離れた距離まで光を拾うことができる。そして、このレーザ−高度計には、もうひとつ大きな目的があるという。
「初号機はイトカワから微粒子を持ち帰ってきましたが、本当のところ、どうやってサンプルを手に入れたのかよくわからないんです。マイナーな説ですが、小惑星の周りには小さなダストがふわふわ浮いているという考え方がある。だったら、レーザーを使って、そのダストを測定できないかと考えました。レーザーは、石など硬いものに当たれば強い反射が返ってくる。でも、空気中にダストがフワフワ浮いていると、弱い反射が返ってくるんです。われわれは、レーザーの反射を50分割して測定することにしました。これで、どの程度のダストが浮かんでいるか判断できる」(同)
ダストを見れば、小惑星の表面だけでなく、内部の様子も推測できる。すると、隕石の見方も変わるし、ひいては太陽系が出来たときの様子もわかってくる可能性が高いのだ。
「はやぶさ2」が誇る「目」はまだある。小惑星に水があったかどうかを測定するのが、近赤外分光計という特殊カメラだ。JAXA(宇宙研究開発機構)と会津大学が中心となって開発したもので、光がどれくらい吸収されたかがわかる。開発チームの北里宏平会津大学准教授は次のように話す。
「小惑星の表面は太陽の光で照らされています。もし小惑星の表面の物質に水が含まれていれば、特定の波長の光だけが吸収される。つまり、最初の光に比べて、反射された光はそれだけ暗くなる。水は近赤外線の光を吸収するので、それを観測することで、水があったかどうかわかるんです」
観測によって判明するのはそれだけではない。地球の水を作ったもととなるのが、彗星なのかC型小惑星なのかが証明されるというのだ。
「はやぶさ2」の小惑星1999JU3到着は’18年夏。地球に戻ってくるのは’20年末となる。「はやぶさ2」は、「太陽系の化石」と呼ばれる小惑星から、今度はいったい何を持ち帰ってくるのだろうか。
(週刊FLASH 2014年12月9日号)