北九州事件から2週間「Zenly」がサービス終了発表…業界内では上陸時から「危険すぎ」「儲からない」の指摘が

 

　9月1日、とある人気アプリが、突然サービスを終了した。その名は「Zenly」。2015年にフランスのZenly社が開発したスマホアプリで、今年4月に大規模アップデートしたばかりだった。

 

「Zenlyは “友達” としてつながっている知人の現在地や滞在時間などをマップ上で確認できるアプリです。2018年ごろに日本に上陸し、中高生を中心に爆発的な人気を誇りました。SNS上だけでつながる他人とも、アカウントIDをもとに位置情報を共有する友達になることが可能です」（ITジャーナリストの井上トシユキ氏）

 

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　便利に見える「位置情報共有アプリ」は、“ある凶行” の遠因になった。8月13日に発生した北九州母娘刺傷事件だ。

 

「福岡県北九州市で高校1年生の少女と母親が、自宅で待ち伏せをしていた男に刺され、重傷を負う殺人未遂事件が発生しました。少女は容疑者について『ネットでつながった県外に住む知人』と話しているそうです。

 

　少年は東京都葛飾区に住んでいましたが、8月8日に家族から行方不明届が出されていました。被害者少女と『位置情報共有アプリ』でつながっており、そこから少女の自宅を特定し、待ち伏せしたとみられています」（社会部記者）

 

　警察は、事件当日に現場近くで列車にはねられ死亡した17歳少年と、事件現場に残されたDNA型が一致したと発表。この少年が犯行に及んだとみて、捜査を続けている。

 

　実際に本誌記者が東京・原宿で取材すると、10代の男女30人中22人がZenlyを使用していると答えた。井上氏はこう話す。

 

「いまの子供たちは待ち合わせをするとき、明確に場所を指定しません。“言いだしっぺ” の責任感に耐えられないのか、『○○らへんで』と非常に曖昧な約束をして、近くまで行ったら、あとはZenly上に表示される友達の位置情報を頼りに “集合” するのです。

 

“東京ドーム何個ぶん” といった広さの巨大ショッピングモールが中高生の “遊び場” になる郊外や地方都市でも、ひと目で友達のモール内での居場所がわかるZenlyは、非常に役立つために浸透しているんです」

 

　他人から、自分の位置や行動履歴が丸見えになるーー。大人からすれば、いくらでも悪用の可能性が思い浮かぶが、中高生の “狭いコミュニティ” では、問題視されることはなかった。

 

　Zenlyのサービス終了は北九州事件を受けてのものなのだろうか。

 

「現地時間31日午後10時に公開されたZenlyの親会社である米Snap社のニュースリリースによると、2023年の事業再構築計画の一環としてZenlyを終了する段階に入ったということでした。つまり、“儲からない” からです」（前出の社会部記者）

 

　この “儲からない” 背景には、北九州事件のようなトラブルを引き起こすリスクがあるという。

 

「子供たちは無邪気に遊んでいるだけかもしれませんが、悪用する方法はいくらでもありますよね。日本にサービスが上陸する際も、売り込みをかけられた複数の投資家が『リスクが高すぎる』として投資を控えていました。

 

　まだそれほど目をつけられていませんが、第2、第3の “北九州事件” が起きたとき、世間から一気に非難を浴びる可能性があります。広告収益を得られるスキームもそれほど明確ではありませんし、危険を犯してまで儲けられるとは思えません。

 

　同じような判断をする投資家は多いでしょうから、資金的に苦しかったのではないでしょうか」（IT業界関係者）

 

　本誌の取材でも、20歳の女子大生はつい最近Zenlyで危険なトラブルに遭遇したと教えてくれた。

 

「19歳のときから、大学の同級生とつき合っていて、今年2月に別れました。電話で別れ話を切り出したら、カレには教えていなかった都内の実家マンションにまで来たんです。私も中学のときからZenlyを使っていたし、カレも使っていたので私の位置情報を調べて押しかけてきたんです。

 

　でも、部屋番号まではわからないから9階建てマンションの全部屋の呼び鈴を鳴らして、私の家を見つけ出そうとしました。その体験がとても怖くて、カレとの連絡を断つと同時に、Zenlyもスマホから削除しました」

 

　君子危うきに近寄らず、ということだ。

( SmartFLASH )