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中国 “スパイ罪” で懲役6年の日本人が状況を告白 ジャーナリスト山路徹氏は「日本にスパイがいる証拠」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.10.19 21:40 最終更新日:2022.10.19 21:41
10月18日、TBS系のニュースサイト、「TBS NEWS DIG」は、『【独自】“スパイ罪”で懲役6年の邦人 中国での拘束状況を初証言 “半年間で太陽を見たのは一日だけ”』という記事を報じた。
中国でスパイ行為に関わったとして起訴され、懲役6年の刑期を終えて帰国した日中交流団体の理事長だった鈴木英司氏が、初めてインタビューに答えたものだ。
鈴木氏は2016年7月、北京空港でタクシーを降りた途端、5人の男に無理やり車に押し込まれ、拘束からおよそ3年後、スパイ行為に関わったとして、非公開の裁判で懲役6年の実刑判決が言い渡された。拘束から半年間にわたった取り調べでは、24時間・4交代の監視がつき、トイレに行くときも監視された。半年間で太陽を見たのは、1日だけだったという。
判決では「日本政府の機関の任務を受け、北朝鮮に関わる中国政府の情報を提供した」などとして、“スパイ行為”に認定されたが、鈴木氏は日本政府からの任務は受けておらず、意見交換はしたものの、“機密”として扱われる情報も得ていないと訴えている。
この記事に反応したのが、ジャーナリストの山路徹氏だ。10月18日、山路氏は自身の Twitterに記事をリツイートしたうえで、こうつぶやいた。
《この記事で私が注目するのは、日本政府または、日本の情報機関に中国のスパイが存在するということですね。こんなことでは重要な情報は日本に入らなくなります》
あらためて、山路氏に話を聞いた。
「これまでのジャーナリストとしての仕事を通じて得た経験に基づいてツイートしたもので、具体的にこの事件について知っているわけでも、語れる立場でもありません。
ただ、記事では、鈴木さんが『日本政府と意見交換はした』とある。日本政府側は、内調(内閣情報調査室)とか、公安調査庁とか、警察もいる。そこで意見交換したことが、中国側に漏れたということです。客観的にそう見ざるをえない。その情報をもとに、鈴木さんが中国に次にやってきたときに、しばらく泳がせて、出国するときに捕まえたということでしょう。鈴木さんは文化交流を考えてやったことで、意識はしていなかったのでしょうが、それが中国側に漏れていたわけですから。日本政府と意見交換したものを、中国側は情報を渡している、と見たわけです。
常識的に考えて、日本政府にも公安調査庁にも警察にも、スパイはいるんです。2010年に、警視庁公安部外事第三課の資料が外部に流出した事件がありましたが、内部犯行であることは間違いないといわれるなか、結局、うやむやになってしまった。
秘密とか情報を扱うときに大事なのは、いかに情報提供者を守るか、にあります。情報提供者を守るべき人が、それを守らないと、こういうことが起きてしまう。
日本はカウンターインテリジェンス・防諜活動が非常に弱い。情報に価値をあまり置いていない。『スパイ防止法』もないですし。今の時代は『スパイ防止法』が必要です。それは仕方がない。情報を扱う人の質というか、緊張感を持っていかないと。
高市早苗経済安保担当相が、『セキュリティ・クリアランス』制度(秘密にすべき情報を扱う職員に対して、その適格性を確認する制度)の必要性を訴えていますが、公務員の人権の問題もあって、なかなか鶴の一声で実現しない。危機意識を養うためにも、『スパイ防止法』のようなものを作って、警察官や情報機関の人間がきちんと向き合っていかないといけません。現場の人、警察官や情報機関の人がその必要性をいちばん感じているとは思いますが。
中国では、たとえば2008年に四川省で大地震があったとき、現場に入ったジャーナリストに、私服警官がくっついていました。行動が逐一、監視される。日本は民主主義の国ですから、そこまでやれとは言いませんが、中国が大国化して力を持ってきている以上、日本も真剣に向き合い、カウンターインテリジェンス、防諜活動をしっかり守っていかないと、怖くなって誰も当局への情報提供など、できなくなると思いますよ」
本人の自覚はなくとも、ある行動がスパイとみなされてしまう恐怖。日中関係が緊張を増す中、情報の取り扱いには注意する必要がある。
( SmartFLASH )