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【沖縄高校生失明事件】被害者に続く事実無根の誹謗中傷…過酷な「二次被害」に当事者は「見たくない」「心配されたくない」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.11.05 14:15 最終更新日:2022.11.05 14:15
「無免許だった」「バイクは盗難車」「ノーヘルだった」「親も悪い」「暴走行為をしていた高校生が悪い」……この文面の数々は、2022年1月におきた、「沖縄高校生失明事件」の被害者に寄せられた、ネット上の誹謗中傷だ。
2022年1月、沖縄市内の路上でバイク走行中の男子高校生(17)に対し、沖縄署勤務の巡査(30)が警棒で殴り、男子高校生が右目を失明する重傷を負った事件。沖縄県警は11月3日、巡査を特別公務員暴行陵虐致傷容疑で書類送検した。巡査は「咄嗟の行為だった」と容疑を大筋で認めた。
沖縄県警は11月4日、臨時警察署長会議を開催し、鎌谷陽之本部長は「本来守るべき少年に極めて重い障害を与えてしまい、慚愧(ざんき)に耐えがたいものがある」と訓示を述べた。
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だが、少年に対してはいまだ誹謗中傷がネット上で流れている。冒頭の内容のほか、「猛スピードで路地を暴走」「警察官の制止を振り切って逃げた方が悪い」など、何の根拠もない書き込みがあふれている。
「当時、沖縄署は、改造自転車を暴走させる『チャリ暴走』の取り締まりをしていました。たまたま現場近くのコンビニにいた高校生が、バイクで帰宅しようとして路地を走行したところ、路地で警戒していた巡査がバイクを制止しようとして警棒で殴打したといいます。
しかし、今回の被害にあった少年は、無免許でもなく、ヘルメットを着用し、自身が購入したバイクに乗っていました。警察が取り締まろうと思っていた『チャリ暴走』とは、まったくの無関係だったのです」(週刊誌記者)
ネット上に事実無根のコメントが流れる “異常事態” に、沖縄県警は事件後の2月18日、「高校生が暴走行為をした」などの噂を公式に否定。それでも誹謗中傷は収まらず、事件から9カ月たち、沖縄県警が謝罪したとの報道にさえ誹謗中傷が書き込まれる始末だ。
この心ない言葉の数々について、高校生の叔父が苦しい胸の内を明かした。
「いまだネットの書き込みは多いです。事件当時の最初の一報は『暴走族の取り締まりで高校生と接触した』という警察発表で、テレビなどで報じられました。それが今も定着していて、こうした誹謗中傷の原因となっている。そのことは警察も認めています。
被害者の母親は、ネットの書き込みを『見たくない』といって見ないようにしています。気持ちいいものじゃないですからね。いっぽうで被害にあった高校生のほうは、『わからないやつのことは気にしない』と言ってさばさばしています。
巡査が書類送検されたことで、また連日報道が続き、甥も周りの友人から『あのニュースってお前のことだよな』などと言われているようです。でも本人は『大丈夫だよ。心配されたくない』と気丈にしています。
半面、母親のこととなると『これから裁判もあって、お金がかかるかもしれないから、母親が心配。事件のことはそっとしておいてほしい』と言っています。
今回の謝罪と加害警察官の書類送検は、事件から9カ月もたってからでした。県警がもっと早く謝罪していれば、ネットの誹謗中傷は減ったかもしれないですね……」
前出の臨時警察署長会議で、鎌谷本部長は「事件後の誹謗中傷が被害者や家族に与えた苦痛に思いを来すと言葉もない」と、この事件の「二次被害」についても思いを述べた。
事件が大きく動き出している今、ふたたび被害者が誹謗中傷にさらされないようにするには、県警のさらなる対応が必要だろう。
( SmartFLASH )