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大阪湾クジラ「よどちゃん」死亡で「これからが大変」かつてクジラが迷い込んだ市に聞いた

社会・政治 投稿日:2023.01.14 06:00FLASH編集部

大阪湾クジラ「よどちゃん」死亡で「これからが大変」かつてクジラが迷い込んだ市に聞いた

発見された1月9日の「よどちゃん」

 

 大阪湾の淀川河口に迷い込んだマッコウクジラが、1月13日、大阪市の調査ですでに死んでいることがわかった。

 

 SNS上で「よどちゃん」と親しまれたクジラは、1月9日早朝に河口付近で発見され、ほぼ同じ場所にとどまり続けた。当初は尾ひれを動かしたり、潮を吹いたりしていたが、11日の夕方からほとんど動かなくなっていたという。

 

 Twitterでは「気になって見にきた」など、容体を心配する声が多数投稿されていたが、よどちゃんは生きて海に帰ることはできなかった。

 

 

 マッコウクジラはふだん外洋を泳ぎ、河口まで入ってくることは珍しいとされている。だが、過去の事例を調べると、こんな “奇蹟” があった。

 

 2009年5月14日、全長約15メートルのマッコウクジラが、和歌山県田辺市の内ノ浦湾に迷い込み、衰弱していたところを発見された。さっそく田辺市役所や現場最寄りの新庄町の漁協が中心になって対策本部を設置した。

 

 当時、同漁協の組合長だった谷本晋一さんが語る。

 

「このあたりはリアス式海岸で、絶壁が突き出るような形になっていて、海は水深10メートルほどです。クジラは内之浦湾のいちばん奥、つまり陸地側に入ってきたんです。

 

 潮を吹くこともありましたが、元気はありませんでした。ほとんどじっとしていて、ときどき旋回したり、少し泳いではまた停止するみたいなことを繰り返していました」

 

 対策本部は、検討の結果、音や放水によってクジラを海に追いやることにした。田辺市役所に当時のことを問い合わせると、対応に携わった職員のほとんどがすでに退職していたが、わずかに残っていた職員に辛うじて話を聞くことができた。

 

「たしか市役所でドラム缶を用意して、海中でそれを鉄の棒で叩いたり、消防車で放水した記憶があります」(田辺市職員)

 

 しかし、作戦は失敗に終わる。

 

「最初、クジラもびっくりして海のほうへ逃げるそぶりをするんですが、だんだん慣れてきて(笑)。しまいにはどんな音や放水にも反応しなくなりました」(同)

 

 対策本部は人事を尽くしたということで、クジラを見守ることにした。だが、クジラは日を追うごとに衰弱していったという。観察記録によると、5月21日から1週間ほどは、湾最奥部の波打ち際で頭を水面から出し、船が座礁するような形でじっとして動かなかったという。

 

 谷本さんは、心配が募っていったと語る。

 

「東京から来た専門家が、『迷い込んだクジラやイルカは1カ月ほどで死ぬことが多い』という話をしていたので、このクジラも長くないなと思って見てました」

 

 そして、対策本部では、“善後策” の議論が始まった。

 

「クジラが死んだ後、どうするかをよく話し合っていました。死体を放っておくと、お腹に溜まったガスが爆発する可能性があるそうなんです。

 

 それで、『船で沖まで運んで沈めるのがいい』という意見が出たのですが、『和歌山にはこんなクジラを運ぶ船はないので大阪からチャーターするしかない』などと話していました」(田辺市職員)

 

 ところが、事態は急転する。

 

「5月の最後の数日です。突然クジラが元気になって、幅200メートル、奥行き1000メートルほどの湾のいちばん奥から、中ほどに来ては横切ってまたいちばん奥に戻るという旋回を繰り返すようになったんです。別のクジラかと思うほど、動きは活発でした。

 

 2~3日、そうやって湾内をぐるぐる元気に泳ぎ始めたので、このまま湾の外に出ていってくれたらええのになと思っていたら、5月31日の夜、本当に湾から出ていったんです」(同)

 

 クジラは、その後2日ほど、外洋と接する田辺湾にいて、6月2日になって、白浜町沖で潜水したまま姿を消したという。

 

「当初、専門家は、このクジラがいつも同じ方向に傾いて旋回しているので、方向感覚を司る器官がおかしくなって迷い込んだのではと指摘していました。

 

 湾からいなくなった後は、『ここで休んで体力が回復し、方向感覚が元に戻った』とも話していましたが、実際のところ、なぜ突然元気になって海に戻ったのかはわかりません」(同)

 

 最後に、亡くなったよどちゃんのことを尋ねた。

 

「テレビで見守っていましたが、残念ですね。ただ、亡くなるケースが普通なんだと思います。ここ(内之浦)は湾が深いから、クジラが潜ることができたし、運がよかっただけだと思います。よどちゃんとはもともと『元気』の違いがあったのかもしれません。

 

 でも、よどちゃんは、亡くなった後の処理が大変だと思います。今回は大阪市がやるんでしょうか。私たちも当時、船でそうとう沖まで引っ張っていって、網に重しをつけて海底に沈める計画を立てていましたから。大阪市も大変やと思います」(谷本さん)

 

「うち(和歌山)に来たクジラも、日に日に元気がなくなり、もうダメかなとみんなあきらめかけたところで、急に元気になって海に出て行ったので、よどちゃんもと思っていたんですが……残念です。

 

 われわれはクジラの生態についてはまったくわからないので、専門家に来ていただき対応しましたが、なにが生死を分けたのかは、見当もつきません」(田辺市職員)

 

 よどちゃんの大きな体はこれからどうなるのか、気になるところだ。

( SmartFLASH )

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