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電通に丸投げされた「持続化給付金」の中抜き実態「一般社団法人」を隠れみのにした極秘スキームを暴く

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.02.27 16:00 最終更新日:2023.02.27 16:00

電通に丸投げされた「持続化給付金」の中抜き実態「一般社団法人」を隠れみのにした極秘スキームを暴く

 

 およそ3年間にわたって霞が関を担当した毎日新聞記者が、大手広告代理店がからんだ「一般社団法人の中抜き」の実態を明かします。

 

 

 コロナ禍で緊急事態宣言が発令され、収入が減った中小企業、個人事業主らに経済産業省から「持続化給付金」が配られた。

 

 持続化給付金の事務委託を巡っては、申請開始まもなく、一般社団法人「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」から大手広告代理店の電通と、その子会社などに再委託と外注を繰り返す構造が浮き彫りになった。不可解だったのは、サ推協をピラミッドの頂点とする委託スキームの中身がまったく見えないことだった。

 

 

 持続化給付金は、経産省が電通や人材派遣大手のパソナなどで構成するサ推協に769億円で委託。一般競争入札だったが、事業者側に事前ヒアリングを実施しており、出来レースに近かった。

 

 サ推協は委託費の97%にあたる749億円を電通に再委託し、さらに電通は電通ライブなど子会社に計645億円で事業を外注していた。結果として、電通に残ったのは計104億円。

 

 電通と子会社ぐるみによる委託費の「中抜き」が疑われ、野党は衆院予算委員会で、業務委託や外注が繰り返されている点について、「責任の所在、透明性がはっきりしない。誰がどこで何をやっているのか」と批判した。

 

 国会答弁などで明らかになったのは、電通子会社などからさらに複数社へ再委託や外注が繰り返されていたことだ。外注費の10%が「一般管理費」として、利益に算入される仕組みが次々と明らかになった。

 

 電通が最も多く外注した子会社は電通ライブで595億円。その下流ではパソナ(170億円)や大日本印刷(102億円)など計13社に外注されていた。外注先も大半の業務を別会社に回していた。

 

 不思議なのは、このピラミッド構造の頂点に、なぜ「一般社団法人」が置かれているかだ――。

 

 一般社団法人は、公益法人(旧社団/旧財団法人)で数々の不祥事が発生したことを受け、公益法人改革関連法が施行された2008年12月以降に広がった。事業内容に制限がなく、営利目的の事業も可能。設立したい人が2人以上いれば法務局への登記だけで設立できる。

 

 かつて、公益法人は、所管官庁が厳しく監督していた。ただ、手取り足取り指導するうち、天下り先と化した法人に税金から成る「埋蔵金」がため込まれ、納税者の知らないところで無駄な公金を使う「見えない政府」化が進んだ歴史がある。

 

 その教訓から新しい制度では、国が監督するのは公益性の認定を受けた公益社団法人のみとし、一般社団法人は行政の監督下に置かないことにした。

 

 一方で、一般社団法人が予算執行を担う場合の監視は難しくなった。情報公開が社員や債権者のみを対象としているためだ。サ推協の情報開示文書には黒塗りが多いが、説明義務が法令上、存在しないことに由来する。そして、監視の目が行き届かないことに目をつける人たちがいるのは当然だった。

 

 足元では一般社団法人を隠れみのにした不正が横行している。

 

 2013年には東日本大震災の復興予算の流用先となった法人の不透明な実態が問題となり、法人を使った課税逃れも続出した。決算公告を怠る法人も後を絶たなくなっているが、改善に向けた打ち手はないままだ。

 

 外部監視が可能な情報公開のルールを整備する必要があるが、監督省庁がないことが足かせになって野放しになっている。

 

■委託業務の始まり

 

 私は、ある取材先からの紹介で、官公庁の委託業務に携わってきた電通関係者から一般社団法人を介する理由などの証言や資料を得ることができた。関係者(性別、年齢などは特定につながりかねないので差し控える)は20年以上にもわたって委託業務に携わってきたキーパーソンだった。

 

「(官公庁関連部署の)売上は1000億円単位でしょうか。自民党に対する食い込み方はすごいし、経産省、農水省、総務省は特に強いんじゃないですか。

 

 入札の仕様書自体を作ってくれとお願いされたこともありました。中央官庁の役人って忙しくて、いちいち作っていられないんです。『ちょっといい?』と言われて、『これよろしく』って。

 

 仕様書の文言をできるだけお役所言葉を使った『霞が関文学』にするとか、そうした依頼も楽々引き受けられるので、一番使い勝手が良かったんだと思います。マンパワーがあるので」

 

 では、一般社団法人を介する理由はなにか。

 

「例えば、事業元の経産省がいるとした場合。その下にまずは一般社団法人を置くんです。確定検査ってあるよね。その確定検査って会計検査院も含めて、ピラミッドの頂点にある一般社団法人にしか基本的に行わないんですよね」

 

 確定検査とは補助金額を確定させるため、補助事業終了後に官公庁から受ける検査のことで、事務局が申請内容通りに補助事業を実施し、経費が適正に支出されたかをチェックする。官公庁は委託先から提出された実績報告書の内容を確認して、必要に応じて現地調査やヒアリングを行うこともある。

 

「第1次支払い先と請求の関係は、経産省と一般社団法人なんです。ということは、一般社団法人とか公的なイメージがあるところを介した請求と支払いで済んでしまうんですよ。そこから他の会社に再委託や外注をするんですけど、広告会社の内部規約では、第2次支払い先の原価は開示しないということになっていまして。

 

 だから、会計検査院の確定検査が第1次支払い先で止まってしまうんです。仮に経産省からサ推協に800億円払いました。そこからさらに広告代理店に700億円で流した場合、800億円の明細さえクリアになっていればいいんですよ。広告代理店に700億円だけ払いましたって証明だけすればいいんです」

 

 まさか……。私は背筋が寒くなった。血税の使途のチェックがこんなにもアバウトで杜撰なものとは思っていなかったからだ。

 

「一般社団法人が経産省に見せなければいけないのは、広告代理店からきた700億円の請求書だけなんですよ。実は、広告代理店がいくらでこの仕事をやっているかなんて追及されることはケースとして少ないんです。利益も乗っかっているので原価いくらなのって話になるんですけど、そこはぼかします」

 

 官僚サイドを取材していても、誰もが委託業務の原価がいくらなのか、利益は一体どれくらいなのか、分からないと首をかしげていた。知らないフリをしているのではないか。そう思ったこともあったが、どうやら本当に知らないようだ。もしくは知ろうとすることで関係性が崩れる懸念があったのだろうか。

 

「仮に800億円のうち、原価いくらなのっていうのを隠すためには、経産省から直(じか)で検査を受けるのはまずいんです。なので、広告代理店の上に一般社団法人を置く仕組みを考えたんです。そのやり方は合法かつ都合が良いので。

 

 もちろん、全部が全部、一般社団法人を介していると怪しまれるので補助金事業の規模や構造とかを見ながら判断しますが。いくつ一般社団法人を作ったか分かりません」

 

 ほとんど言葉を発していないのに私の喉はカラカラに渇き切っていた――。

 

 

 以上、高橋祐貴氏の新刊『追跡 税金のゆくえ~ブラックボックスを暴く』(光文社新書)をもとに再構成しました。集められた税金は無駄なく活用されているのか。毎日新聞記者が、税金の無駄遣いの実態を克明に明かします。

 

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