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渋谷区の公衆トイレ、女性専用が消えて共用トイレ化の理不尽…現地訪問した本誌女性記者の違和感とは

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.03.08 20:45 最終更新日:2023.03.08 20:45

渋谷区の公衆トイレ、女性専用が消えて共用トイレ化の理不尽…現地訪問した本誌女性記者の違和感とは

 

 渋谷区幡ヶ谷に新設された公衆トイレが、物議を醸している。

 

 ことの発端は、渋谷区議・須田賢氏のツイートだ。3月6日、須田氏は公衆トイレの写真をアップしたうえで、《幡ヶ谷で新しくできたトイレです。本日、近くに所用があって写真をついでに。誰でもトイレが2つ、と男性用トイレ。渋谷区としては女性トイレを無くす方向性なのですが、私はやはり女性用トイレは残すべきだと思います。皆さんはどうお考えでしょうか。》と呼びかけた。

 

 

 ツイートには大きな反響が寄せられ、現時点で3.7万いいね、2.4万RTに加え、4000件以上のリプライが集まっている。大半は、女性専用トイレがなくなったことへの不安や怒りの声だ。

 

《絶対利用しません。怖くて入れません》

 

《子供も私たち女性も安心して使えないので、女性専用がないトイレなんて絶対に利用しません。男女共有の怖さ(カメラ設置、父親を装っての連れ込みなどの犯罪の可能性)をもっと広めてください。よろしくお願いします。女性専用がないというのは、差別です》

 

《綺麗だとしても怖くて利用したくないです。今後子供が生まれたら外のトイレは危なくて使わせたくないと思っています。どうして女性用をなくしたのか理解に苦しみます。デザインにお金掛けるより、安心安全に使えるトイレを普通に作ってほしいです》

 

 件のトイレは、幡ヶ谷3丁目にあるという。本誌女性記者が、実際に訪問してみたところ、いくつかわかったことがあった。

 

 トイレが設置されたのは、京王新線・幡ヶ谷駅と笹塚駅のちょうど中間あたりの場所になる。車や人通りが多い2つの道が交わる交差点にあり、近隣住民らしき人たちが散歩したり、自転車で行き交ったりしていた。それなりに人目は多い場所といえそうだ。

 

 白いコンクリート調の建物は、スタイリッシュな印象を与えるデザインになっている。トイレの構成は須田氏のツイートどおり。入口から見て右側に小便器2台の男性用トイレ、真正面と左側に男女共用トイレがある。

 

 記者がしばらく観察した限りでは、女性利用者は見当たらず、ウーバーイーツの配達員と思しき男性が、男性用トイレに消えていった程度だ。

 

 ドアに記されたピクトグラムを見ると、左側の共用トイレは男女共用に加え、車椅子やオストメイト(人工肛門や人工膀胱をつけた人)、着替えをしたい人も利用者として想定されている。

 

 一方、真正面の共用トイレを見ると、それに加えて子連れの人、おむつ替えをしたい人が想定されているのがわかる。

 

 実際に2つの共用トイレに入ってみた。まず気になったのが、どちらの部屋も台形のような形をしており、かなり斜めになっている点だ。素人考えだが、これでは車椅子の人は動きづらいのではないか。

 

 もうひとつ気になったのが、生理用品などを捨てるサニタリーボックスが見当たらない点だ。一般的な女性用トイレには、それとわかるゴミ箱が横に設置されていたり、壁に収納されていたりする。だが、幡ヶ谷のトイレには、サニタリーボックスと断言できるものは確認できなかった。

 

 もしかすると、洗面台の下や横に設置されていた、ティッシュ入れのような銀色のボックスが該当するのかもしれない。ただ、このボックスは上部が半開きの構造になっており、よくある密閉型とは形状が違う。なにを捨てる場所なのかも、一切明記されていない。ここに生理用品を捨てるのは、ためらう人の方が多いのではないか。

 

 ちなみに、近所にある笹塚駅のバリアフリートイレには、サニタリーボックスがそれとわかる形で設置されていた。共用トイレだから、という理屈は通じなさそうだ。

 

 ひととおり利用してみた感想としては、「正直、女性としては使いづらい」の一言に尽きる。

 

 ある程度、人通りの多い場所にあるため、その点では多少の安心感があった。しかし、構造上、トイレの出入口で変質者と鉢合わせる可能性、後ろからついてこられて個室に押し込まれる可能性など、どうしてもいくつかのパターンを想定してしまう。ゴミを漁られるのではないかという不安もあった。

 

 これらは、女性専用トイレがあれば、それなりに防げる問題ではないだろうか。

 

 共用トイレを利用した性犯罪が過去に何度も起きている以上、こうした不安を「過剰反応だ」と一笑に付すことは、誰にもできないはずだ。

 

 2021年10月、20代女性が面識のない男に共用トイレへ連れ込まれ、わいせつ被害にあう事件があった。このとき使われた共用トイレは、品川区の設計コンペティションを勝ち抜き、グッドデザイン賞も受賞したという。

 

 性犯罪への不安が拭いきれず、サニタリーボックスも見当たらず、使いにくい構造となると、結果として女性利用者は遠のいてしまうのではないか。

 

 冒頭の須田氏のツイートが拡散されたのち、渋谷区は公式サイトで「渋谷区立幡ヶ谷公衆便所について」との声明を発表。

 

 該当のトイレは、渋谷区と日本財団が協働で進めるプロジェクト「THE TOKYO TOILET」で設置されたものであるとして、《新しい公共トイレのあり方を通して、ダイバーシティを受け入れる社会の推進を図ることを目的として、渋谷区内17箇所の公共トイレの整備を進めています》と説明。

 

《令和5年3月6日、Twitter上で渋谷区議会議員から『渋谷区としては女性トイレをなくす方向性』とのツイートがありましたが、渋谷区では今後のトイレ整備について女性トイレをなくす方向性など全くございません》と、女性専用トイレをなくしていくことは否定している。

 

 さまざまな方面に配慮するのは重要だろうが、利用者を不安にさせないことも大切なはずだ。今回の設計に、はたしてそこまでの議論はあったのだろうか。

( SmartFLASH )

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