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「介護事業所の80歳職員が交通事故で死亡」人手不足で進む「老々介護」の背景に「要介護者の急増」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.03.31 20:49 最終更新日:2023.03.31 20:53

「介護事業所の80歳職員が交通事故で死亡」人手不足で進む「老々介護」の背景に「要介護者の急増」

見通しのいい交差点で事故は起きた(写真・共同通信)

 

 3月30日午前9時ごろ、愛知県稲沢市内の交差点で、介護事業所の送迎車と乗用車が衝突、利用者など10人がけがをして病院に搬送される事故が発生。事業所の、80歳の男性パート職員が死亡するという、いたましい結果になった。

 

 このニュースを聞いて「80歳の方が介護職員?」と、驚いた向きも多いのではないだろうか。介護職員の人手不足が深刻化して久しいが、実際に介護の現場では「老老介護」が起きているのだろうか。

 

 

 2022年8月、介護労働安定センターが公表した、令和3(2021)年度の「介護労働実態調査」によると、訪問介護ヘルパーの平均年齢は54.4歳だった。年齢別の分布を見ると「60歳以上65歳未満」が、13.2%で最多。次いで「55歳以上60歳未満」が12.3%、「70歳以上」が12.2%だった。

 

「正規職員、非正規職員ともに、全体的に平均年齢が上がっているのは事実です。その背景にあるのは人手不足ですが、じつは、就業人数そのものは減ってはいません。むしろ増加傾向にあります。ですが、それ以上に介護を必要とされる方が増えているのです。

 

 そこで政府は『多様な人材の登用』を掲げて、食事の補助など、介護の資格がなくてもできる仕事に高齢者の採用を奨励しました。そのために年齢層が上がっている傾向にあるので、単純に『介護職員の高齢化』というのとは違う感じがします」(介護労働安定センター担当者)

 

 シルバーパワーに頼らざるを得ないということは、裏返せば20代、30代に、ヘルパー志望者が少ないということだろう。

 

「若い方々から『仕事がきつい』『処遇(給料)がよくない』というイメージを持たれているのは、実感しています。なかなか募集をしても集まらないという声も聞いています」(同前)

 

 東京都内の、あるデイケアホームの運営者が、実態を明かす。

 

「正規職員は60歳で定年になりますが、その後も、再雇用という形で勤務を続けてもらっています。そのため、70代後半の職員もいます。入浴介助など、力が必要な作業は難しいので、送迎のつき添いや食事介助、簡単なグループワークのお手伝いなどをしてもらっています。今後ですか? 職員の高齢化は避けられないでしょうね」

 

 職員の負担を減らすため、ベッドの下やトイレにセンサーを取りつけて、就寝の様子を見守ったり、尿の量を自動的に測ったり、などの改善策を進めているというが、それでもなお、現場は深刻な状況のようだ。

( SmartFLASH )

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