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カンボジア特殊詐欺摘発、異例の「50人捜査」を実現させた日本の「法整備支援」活動

社会・政治 投稿日:2023.04.21 16:50FLASH編集部

カンボジア特殊詐欺摘発、異例の「50人捜査」を実現させた日本の「法整備支援」活動

4月11日に逮捕され、羽田空港に到着した特殊詐欺グループメンバーの男性(中央)(写真・梅基展央)

 

 4月11日、カンボジア特殊詐欺グループ19人が、移送中の航空機のなかで警視庁に逮捕された。同グループは、特殊な通知番号変換ソフトを使ってNTTの職員を装い、現地から日本に「アダルトサイトの未収金がある」と通知。電子マネーをだまし取っていたとみられる。

 

「逮捕された19人のうち、リーダー格とされる岡本大樹容疑者以外は、かけ子とみられています。高額なリゾートバイトがあるなどと誘われてカンボジアに入国し、パスポートを奪われ、ほぼ監禁状態で詐欺行為をさせられていたようです。

 

 

 今年1月、今回の逮捕者の1人が日本大使館に『ホテルで特殊詐欺をさせられ、外に出してもらえない。助けてほしい』とSOSメール送り、大使館の通報で現地警察がホテルを捜索して19人を拘束しました」(全国紙の警視庁担当記者)

 

 同グループによる特殊詐欺の被害は75件にもなるというが、拘束された19人は現地警察の取り調べに対し、ほぼ黙秘していた。これは容疑者らが “ボス” と呼んでいた岡本容疑者の暴力による恐怖支配から抜け出せない影響だという。

 

「岡本容疑者本人は電話をかけず、完全な監視役に徹していたようです。複数の部屋に数名ずつ監禁され、1日8時間以上も発信作業をさせられていました。

 

 食事は外部から持ち込んだ格安の弁当が配られるだけ。詐欺行為に “成功” したかけ子には、1時間程度の監視つきの外出許可や甘いデザートが支給されることもあったといいます。

 

 寝床もベッドではなく、マットを敷いただけの粗末なもので、ほぼ雑魚寝。かけ子は住所や親兄弟などの個人情報を握られており、岡本容疑者からは『逃げたら日本の暴力団が必ず探し出す』などと脅されていたようです」(現地メディアの記者)。

 

 もっとも岡本容疑者も “追われる側” だった可能性があるという。

 

「東京出身の岡本容疑者はいわゆる “ワル” で、未成年者のころから地元警察署にマークされていたようです。ただ、暴力団の正式な組員になったことはないようです。

 

 2014年頃、池袋の雑居ビルにサパーを開店したものの、店は従業員まかせで、岡本容疑者は店の売り上げを持ち出してはキャバクラやガールズバーで飲み歩いていたと。

 

 結局、かなりの額の借金を背負い、3年ほどで夜逃げ同然で店を畳んで消えてしまったため、同業者の間では闇金の取り立てから逃げるため姿を消したのだと噂されたようです。カンボジアで特殊詐欺を始めたのも、金に困ってのことでしょう」(事件担当記者)

 

 フィリピンから移送された “ルフィ強盗団” のように、時差や物価の安さ、携帯電話の入手のしやすさなどから、東南アジアを拠点とする日本人犯罪集団はこれからも増えるのは間違いない。

 

 つまり、今後は国際的な捜査協力の重要性がさらに高まることになる。じつは、その有力な鍵になると注目されているのが、法務省による「法整備の支援」活動なのだ。全国紙の司法記者がこう解説する。

 

「今回の移送に関して、カンボジア当局は日本の捜査員を50人も受け入れ、さらに外交使節でもないのに、入出国の手続きを簡易化するなど、全面協力したと聞いています。友好国であろうと、外国の捜査員を50人も受け入れるのは異例のことです。

 

 これが実現したのは、日本が長期にわたり続けてきた法整備支援のおかげです。背景にあるのは1970年代後半の旧ポルポト政権です。ここで多くの司法関係者はインテリと見なされ、政権によって “消されて” しまいました。

 

 そこで日本は、その後の復興を支援するため、カンボジア司法に対し、多くの司法関係者を送り、法整備に協力してきました。カンボジア司法にとって、日本の司法は “先輩” です。相互に信頼関係があるため、スムーズな移送になったわけです」

 

 法務省に確認したところ、外国への支援等を担当する法務総合研究所国際協力部がこう答えた。

 

「カンボジアへの法制度整備支援は1994年から始まり、すでに30年近くの歴史があります。JICAを通じた民法と民事訴訟法の起草支援により、2006年に民事訴訟法が、2007年に民法が制定されました。

 

 その後も不動産登記など重要な分野の法令の起草や、訴状の書式、さらに法曹人材の育成など法令から運用までの支援を続け、現在もJICAプロジェクトの長期専門家として2名の検事が派遣されています。

 

 法制度整備支援はカンボジアだけでなく、ベトナムはカンボジアより早い1986年から、他にもインドネシア、ラオス、ウズベキスタン、ネパール、ミャンマー、バングラデシュ、中国など合計十数カ国に実績があり、法令の整備や人材育成のプログラムの支援活動をおこなっています」

 

 ODAによる “おカネ配り” ばかりが外国支援ではないのだ。

( SmartFLASH )

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