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「日本の総理なら『やれる』。はよ子ども予算も倍増せい!」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第3回】
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.05.26 06:00 最終更新日:2023.05.26 06:00
「これからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」「少子化対策は待ったなしの瀬戸際」。
3月に政府が公表した「異次元の少子化対策」の“たたき台”には、少子化に対する危機感を表わす文言が並んでいます。でも、どこまで本気なのか。“やってるふり”をしているとしか思えない。
そして、いよいよ6月までに「対策」の財源を含めた大枠が決まる。ここで、岸田政権の少子化対策の何があかんのか、整理します。
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明石市で「子供を核としたまちづくり」を目標に、さまざまな施策を実現してきた私に言わせれば、政府の対策は、あまりにもレベルが低い。打ち出した策を全部実行したところで、まったく意味ないですわ。どうせ全部できないし、半分程度にショボくなる。怒りを通り越して情けないよ。
政府は、児童手当の所得制限撤廃や支給期間延長、育児休業制度の拡充などを主張しているが、中身を見てみると、予算を気持ち程度増やしただけで、まったく諸外国の水準に追いついていない。
とにかく異次元なんて言わんでええから、「普通の」少子化対策をせえよ、と。今の日本は、子供に異常に冷たい。ほかの国では、「子供は社会が育てる」という共通認識ができているのに、日本は「子供は親が見ろ」という発想から抜け切れていない。「子供を応援すれば経済もよくなって、みんなのためになる」という当たり前のことが、今の日本の政治家はわかってない。
当然、人が生まれるってことは、その人が食べて働くわけだから、消費が生まれ、労働によって価値が生まれる。子供一人に3000万円、5000万円かかるとしても、その子が2億、3億と生涯賃金を稼ぐ。そのうちのおよそ半分ぐらいを税金や保険料で払ってくれるんやから、絶対にペイする。
しかし、子供が生まれなかったらなんの価値も生まれないし、今いる人間でいろんなコストの負担をするから、どんどんシワ寄せが生じる。働き手が減って、介護もまわらなくなり、国を守る自衛隊のなり手も足りなくなる。
国の経済成長のためにも、社会に安心を提供する意味でも、「子供は未来だ」という発想に転換せなあかん。そういう方針転換を打ち出すのは総理大臣の仕事やのに、岸田さん自らもわかっていない状況。政治家が権限行使できるのはビジョン、カネ、ヒトの3つで、政府の少子化対策は、まず誤った認識に基づくビジョンがろくでもない。
次にカネについては、日本の子ども予算は、昔からOECD諸国の半分程度。何十年も半分しか子供に使ってなかったら、そりゃ子供は増えないし、貧困になりますやん。
たとえばフランスも、1990年代に少子化になったとき、国は思い切って方針転換した。具体的には、3人子供を産んだ女性は、老後の年金が増える。つまり、たくさん産んだ方が安心して暮らせるわけ。また、子供が3人になれば家族全員、遊園地が入園無料、といった政策をとった。そうやってフランスでは、3人めが生まれていったんです。
つまり、国民をして「だったら子供を作ろう」と思わせるだけの政治のメッセージが必要なんです。
そしてヒト。子供に寄り添うような人材を育成してこなかったから、人数も質も足りていない。だから、子供の虐待死がなくならないんです。これは政治の責任ですよ。
本来、総理大臣こそが、今の少子化問題を解決できる立場にあるんです。総理には予算編成権があるから、カネを動かせる。それを実行するために人事異動もできる。子ども予算の倍増なんかすぐできるんやから、はよやれよと。
話は横にそれますが、岸田総理は「検討ばかりで決断と実行ができない」と批判されているけど、じつはそうやない。たとえば、賛否相半ばした安倍元総理の国葬や、防衛費の増額なんかは、即断即決したやないですか。
国葬については、総理の地位を安定させるために、安倍派の有力議員に味方になってもらいたいという思惑があったんやろうし、防衛費の増額は、アメリカの意向に沿うことが自分の保身になると考えたんちゃいますか。
もうひとつ言うと、岸田総理は長男の翔太郎氏を政務担当秘書官にしたが、これも人事権を行使して決めたわけ。岸田総理は、その気になれば、ちゃんと「決断と実行」ができる人なんですよ。
だったら、「異次元の少子化対策」だって、反対があっても、リーダーとして腹をくくって、「子ども予算は次年度から倍増」と決めればいいだけの話。
よくみんな誤解してるけど、総理が決断しても周りが従わなければ実行できない、というのは嘘。
もし内閣の方針が一致しなくても、総理大臣はすべての人事権を持っているんだから、総理の方針に「ノー」という大臣にはにっこり笑って、「代わってもらうことになるけどいいかな」とひと言言えばいい。官僚も同じ。財務省の事務次官に対して、「倍増よろしくね」と言えば、済むに決まってるやん。「嫌だ」と言うなら、「残念だが別の部署に行って頑張ってくれ」と告げて、やってくれる次官に首をすげ替えればいいだけ。みんな辞めたくないから、言うことを聞くに決まってます。
総理はそれほど、強い権限を持っている。現に、小泉純一郎元総理は郵政民営化に反対した大臣を罷免し、反対した議員には「抵抗勢力」と烙印を押し、郵政解散で落選させたやないですか。総理大臣が決めたら、それが内閣の方針になるんです。
もっとも、私に言わせれば、子ども予算は倍増なんかでは足りない。今から倍増したところで、何十年間も子ども政策にカネを使ってこなかったツケがあるから、まったく不十分。さらに上乗せして3倍増くらいにせんと、日本は少子化を脱することはできんでしょうね。
ちなみに明石市は、予算が2000億円のうち、子ども予算を125億円から297億円まで2.38倍に増やしましたが、これは市長のやり繰りだけでできたんです。明石市のような小さな街でできたんやから、国が本気でやろうと思ったら、間違いなくできるはずよ。
市長より総理のほうが、よっぽど実現はラク。財政規模もケタ違いやし、いざとなったら国債も発行できる。また言うてしまうけど、私が総理大臣やったら即やる。
その代わり、周りは敵だらけだから、引きずり降ろそうとするエネルギーが働きます。“殺害予告”も来るかもしれない。けれど、反対されたら、総理から国民に語りかけて共感を得ればいい。そして選挙に勝てばいいわけ。岸田総理も、与党の有力議員ばっかりに媚を売らんと、ちゃんと国民のほうを向いた政治をやれば、どんな改革だってできるはずです。国民のためにやることをやれば、必ず国民は応援してくれます。
“異次元”の政策の予算と財源は間もなく明らかになる。その名のとおり効果を発揮し、少子化を食い止められるか
写真・共同通信