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「政治が家業で唯我独尊」「他人の痛みがわからない」周囲が語る河野太郎氏“変節の半生”の正体

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.10.28 06:00 最終更新日:2023.10.28 06:00

「政治が家業で唯我独尊」「他人の痛みがわからない」周囲が語る河野太郎氏“変節の半生”の正体

デジタル相の河野太郎氏。「お祖父さん(一郎氏)やお父さん(洋平氏)がなれなかった、首相になりたい気持ちが強いんでしょう」(杉尾秀哉氏)

 

 2023年4月、複数の報道機関の世論調査で「首相にしたい人」1位に選ばれていた、次の総理にもっとも近いといわれるデジタル相の河野太郎氏。かつて外相、防衛相など要職を歴任してきた河野氏は、行政改革担当相なども務め、大きな制度上の変更に際して持ち前の突破力を発揮。2021年の自民党総裁戦でも、下馬評では有力候補と目された。

 

 だが、河野氏はこれまで「変節」を重ねてきた政治家だ。かつて自民党の「無駄撲滅プロジェクトチーム」を率いていた河野氏は、2017年に安倍政権で外相に抜擢されるや、「外相専用機」の導入を表明し、批判を浴びた。

 

 その後、ワクチン接種推進担当相に就き、接種の加速化には成功したものの、ワクチン調達に失敗した事実を発表せず、自治体の接種予約の中止が続出。「情報公開」のスローガンが看板倒れとなったが、野党の追及を「言いがかり」と居直り、自己保身に努めた。

 

 

 デジタル相就任後の、マイナンバーカードのトラブルへの対応の不手際も批判されたが、最大の変節は、先の総裁選を前に、脱原発の主張を曲げ、再稼働容認に転じた点だろう。

 

 再び河野氏は、首相の座を狙う位置に返り咲けるのか、もうその目は残されていないのか……。その実像に迫るべく、河野氏と関わりのある人々を取材した。

 

 国民民主党代表の玉木雄一郎氏は、「英語が堪能で人脈が広く、海外の人と話すと、よく河野さんの名前が出てきます」と称賛するが、その政治手腕については厳しい意見だ。

 

「改革派と認知されているんでしょうが、(2020年の新型迎撃ミサイルシステム)イージス・アショアを断念したことなどは、中途半端な感がある。何兆円もの追加予算をそのために組んでいるんだから、結果的に税金を浪費していることになる。退路を断って、ときにはリスクを取ってでも突破しなきゃならない」

 

 河野氏が掲げた「脱原発」については、「そもそも現実的ではない」と批判する。

 

「自民党内でも脱原発論者は多いが、ロシアによるウクライナ侵攻の後、それを表立って唱える人はいないのでは? さらに、イスラエルとハマスの紛争が勃発した。もし総理大臣になるなら、そう理想論ばかり言っていられないでしょう。現にヨーロッパは、より安全な次世代型原発の開発に舵を切り始めている。そちらも検討しないで、脱原発を主張するのは無責任ですよ」

 

 変節についてはこういう見方もある。

 

「脱原発の主張がトーンダウンしたのは、総理の座を意識してのこと。以前のほうがエッジが立っていましたね。最近は角が取れて丸くなってきた」(デジタル庁担当記者)

 

 河野氏は、祖父の代から続く世襲議員。元TBS記者で、立憲民主党参院議員の杉尾秀哉氏はこうみる。

 

「河野さんの場合、お父さんの地盤や政治姿勢を継いでいるわけではない。ハト派だった父に比べ、タカ派的言動が目立つ。なにより質疑をしていて感じるのは、少数派への配慮に欠ける点。自分が気に食わないことがあると、すぐ態度で示す。面倒くさい相手は切り捨てて説得する気がなく、まるで唯我独尊。政治家が家業で、同質性の高い環境で育ってきたからでしょう」

 

 一方、慶應義塾高校時代の友人で弁護士の春日秀文氏は、河野氏を抜きん出た政治家だと評する。

 

「なかには学歴ロンダリングなんかして、能力的に祖父や親に劣る人が多いが、彼は本当に優秀なんですよ。問題解決能力は昔から高い。それに大変な読書家。当時、平塚のデカい屋敷を訪ねると、長い廊下の隅に三段、ずらっと彼の蔵書が積み上がっているんです。評伝の類が多く、おもしろい本があるとよくすすめてくれました。覚えているのは、ノーベル物理学賞受賞者が書いた回想録『ご冗談でしょう、ファインマンさん』ですね。一般教養が豊かに備わらないとトップに立てないと、思っていた節があります」

 

 勤め人時代から河野氏をよく知るのが、自民党参院議員の浅尾慶一郎氏だ。

 

「大学4年の終わりに出会って以来、仲間同士でときどき集まり、ある会合に呼んだメンバーに、後の奥さんの香さんもいたんです。河野さんは一点突破・全面展開という政治家。共感を集めるぶん、反発も大きいんでしょう。マイナの件は、利点があるからちゃんとやっていこうに尽きますね」

 

 河野氏も浅尾氏も、志公会(麻生派)に所属する。同会派の自民党参院議員の猪口邦子氏は、河野氏の派閥内での立ち位置をこう語る。

 

「政治哲学的に河野さんとは、共通する面が多い。マイナについては、ずっと紙だった住民票・保険証をデジタル化する以上、紐づけがスムーズに進まないのは当然です。その役目を一身に背負い、河野さんは職務を進めていらっしゃる。最大の応援団長である(麻生太郎)会長も任命の推薦を出した以上、ずっとフォローされていますよ」

 

 マイナ問題に対し、失敗を覚悟で取り組んでいると評価するのは、政治評論家の田原総一朗氏だ。

 

「自民党の多くの議員は、マスコミから叩かれるようなことは言いませんが、河野さんはあえてそれを言う政治家。原発の問題や防衛費増額論などに慎重な姿勢を見せるのは、お父さん譲りじゃないかな」

 

 周りが言わないことをあえて言った例外の一人に、小泉純一郎元首相がいる。田原氏は、小泉氏の名フレーズ「自民党をぶっ壊す」を引き出した張本人だ。河野氏にもそんなパワーを感じるという。

 

「それでも、派閥を抜けないところは河野さんらしい。一度は首相になってほしいと思う国民は多いはず」

 

 こうした期待の声も上がるが、日本維新の会参院議員の石井苗子氏は、河野氏の“変節の半生”をこう批判する。

 

「いつも自信満々で向上心が高い、政治家になるべく生まれてきた人。そういう次元に入ってしまうと、他人にどう思われようと関係ないんですよ。頭がすこぶるいい河野さんからは、『バカは引っ込んでろ』という圧を感じます」

 

 元自民党幹部で、現在は立憲民主党の重鎮のA氏に取材を申し込むと、秘書は「うちのAは相手にもしない」と一蹴。そして、河野氏に対する辛辣な意見を述べ始めた。

 

「関わる相手を平気で切る、他人の痛みがわかんない人でしょ。茂木(敏充)さんにせよ、西村(康稔)さんにせよ、そんな人たちが牛耳っているのが今の自民党。河野さんが首相になれば、日本は終わりです」

 

 河野氏は「霞ヶ関に人材が集まらない」と断じたうえ、官僚を質問攻めにして「震え上がらせる」と評判の人物。元厚労省医系技官の医師・B氏にその点を質すと、自身も被害に遭ったと苦笑する。

 

「医療関連の規制改革の自民党のヒアリングで質問に応じましたが、こちらに分があったのに、一度こうだと決めると譲らない。ずいぶんしつこく攻められました。自民のほかの議員らが『もういいじゃないか』と、説得に回るぐらいで。同僚の話では、コロナ担当相だったころの河野さんは、締切にやたらと厳しかったので『いつまでにできるんだ?』と問われると、わざと1カ月遅く伝えたりしたそうです。河野さんは頭の回転が速く、SNSをよく見ているので、世の中の変化に敏感。しかしながら、それゆえにコロコロ意見を変える。官僚がついていけず、世間からは変節漢とみられるのは当然です」

 

 異論を謙虚に受け止め、もうひと皮剥けられたなら、次期首相の座は近づくかもしれない。

( 週刊FLASH 2023年11月7日号 )

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