今年世間を騒がせた、クマ被害。冬になった今も、12月19日に秋田県や新潟県で出没しており、年の瀬も予断を許さない状況が続いている。そのなかでも、冬眠をせずに冬をしない個体「穴持たず」に危機感が募っている。北海道猟友会札幌支部防除隊隊長の玉木康雄氏が解説する。
「札幌市では、今年は12月中旬くらいから冬眠に入るとみられていましたが、私も19日時点で大方のヒグマは冬眠に入ったと思っています。ただし、『穴持たず』という冬眠しないクマもいますから、注意が必要です。
【関連記事:世田谷一家殺人事件 21年めの新展開!警視庁が異例の実名出しで所在を追う「焼き肉店のアルバイト店員」】
クマは餌が取れなくなった時点で、そのままのたれ死ぬか、眠って春まで我慢するかの選択に迫られて、おおかたの個体は冬眠に入ります。眠るリスクと餌が取れないリスクを天秤にかけて寝るリスクをとる、というだけです。餌が取れれば寝る必要はありませんから、非常に狩猟が上手な特殊な個体や、人間の作った作物などを上手く奪取する能力がある個体は寝なくていいわけです。そうした特殊な個体を『穴持たず』といい、昔から存在してきました」
「穴持たず」の危険性を“現場”の人間はどのように見ているのか。玉木氏が続ける。
「『穴持たず』の一番の特徴は、高いハンティング能力です。真冬に餌が取れるということは、基本的に動物を食べているとしか考えられない。冬は山のどんぐりも取れない状況ですからね。そのような状況のなかで、カロリーを摂取する能力があるということは当然、鹿を仕留めるだけのスピードを出せるなどの狩猟能力に長けているということです。場合によっては、本当に限られた個体ですが、人間を襲う可能性が十分あります」
さらに、「穴持たず」以外にもこれからの季節で危険なクマがいる、と玉木氏は警鐘を鳴らす。一度冬眠したクマが、早めに起きてしまう可能性があるというのだ。
「クマは冬眠に入る時には胃の中は空っぽです。皮下脂肪を蓄えて眠りに入るのですが、今年は北海道だけでなく、全国的にクマの餌が非常に少ない。ですから、皮下脂肪が十分に蓄えられないまま冬眠に入ったクマが、通常よりも早い時期に目を覚ますという可能性もあります。一般的には餌が豊富であれば冬眠に入る時期が遅れ、少ないと早まります。今年で言うと、秋田県や石川県、新潟県などでは、この時期でもまだ出没しています。暖冬の影響があるからかもしれません。
これだけクマの生息地が増えた以上は、そういう『穴持たず』や冬眠期間が短いクマに出会うリスクがあり得る。山に入ること自体をやめる必要はないかもしれませんが、『山に入るには常にリスクがある』という用心だけはしないといけませんよね」
クマの恐怖は、冬になったとて消えることはないのだ。
( SmartFLASH )