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「ジェネリック、本当は出したくない」性欲減退・吐き気・血圧乱高下が発現しても、現場が出さざるを得ない理由【現役医師&薬剤師座談会】

社会・政治 投稿日:2024.02.22 06:00FLASH編集部

「ジェネリック、本当は出したくない」性欲減退・吐き気・血圧乱高下が発現しても、現場が出さざるを得ない理由【現役医師&薬剤師座談会】

臨床、処方の現場は「ジェネリックより先発品を」と願っている(※写真はイメージ)

 

 相次いで不正が発覚し、深刻な供給不足を招いているジェネリック医薬品(後発医薬品)。さらに医療の現場からは、「効果が低い」「副作用が心配」「症状を悪化させる」など、続々と告発が寄せられた――。

 

A医師(都内の総合病院内科に勤務)「風邪などの症状で、一時的に服用する場合は問題ないと思いますが、疾患によっては、ジェネリック医薬品は避けたほうがいいかなと思うことは、皆さんもありますよね」

 

 

B薬剤師(都内の大手調剤薬局勤務)「ぶっちゃけ、かなりありますね(笑)」

 

A医師「診療所の一般内科外来を担当していたときのことです。ある患者さんの血圧が、数年来120/80くらいで安定していたのが、突然130/90になってしまったんです。聞くと、『1カ月くらい前から、経済的な負担を減らそうと、ジェネリックに切り替えた』と。血圧の薬は種類を問わず、こういったケースがよくあるような気がします」

 

B薬剤師「私も同じようなことがありました。患者さんから頼まれて、ずっと続けていた血圧の薬をジェネリックに変えたところ、やはり血圧が高くなってしまって……。結局は先発品(先発医薬品)に戻したんですよ」

 

C薬剤師(東京近郊の個人薬局勤務)「ジェネリックは、先発品と “成分さえ一致していればいい” 的なところがありますから。だけど、錠剤のコーティング剤や粒子の大きさ、添加剤が違うと、薬の溶け方に問題が出てきます」

 

B薬剤師「先発品は、もっとも効果的なタイミングで成分が溶けるように設計されているのですが、ジェネリックの場合、成分が一気に溶けだしてしまうことがありますよね。その結果、服用した人の血圧のコントロールが崩れてしまうんです」

 

■医師に無断でジェネリックに変更し、てんかんが悪化

 

D医師(東京近郊で脳神経内科を開業)「ジェネリックに変えてからの副作用も心配ですね。先発品から切り替えた後、体感としては50人に一人くらいがなんらかの違和感を訴えられています。ただ、ジェネリックと副作用との因果関係を明らかにすることが難しいのも事実なんです」

 

C薬剤師「そういうケースは、本当に多いんですよ。最近も、ジェネリックに変更した後に、吐き気や嘔吐などの消化器症状が発現した患者さんがいました。医師から『薬の添加物の影響なのかな?』との問い合わせを受けましたが、薬剤師にわかるわけもなく……結局は先発品に戻すと、症状は落ち着きました」

 

E医師(都内で皮膚科を開業)「最近だと、AGA(男性型脱毛症)治療などの自由診療で、少しでも経済的負担を減らすためにジェネリックを希望される方が多いですね。先発品であるプロペシアをジェネリックに変えたところ、性欲減退やうつ症状といった副作用が出てしまった患者さんがいました」

 

D医師「じつは私も、長期間、てんかんの発作を抑制できていた患者さんが、ジェネリックに変えた後に悪化してしまったことがあるんです。日本神経学会のガイドラインでは、先発品でてんかんの発作が抑制されている患者さんに対し、ジェネリックへの切り替えを推奨していないにもかかわらず……。今でも反省することしきりです」

 

A医師「抗てんかん薬は、有効な用量の幅が狭く、わずかな成分の違いでも病状が不安定になることがありますからね。ガイドラインでは、ジェネリックへの切り替えに際しては、『医師及び患者の同意が不可欠である』とされていますよね」

 

D医師「はい。それなのに、私が担当していた患者さんのケースでは、クリニックから遠い薬局だったこともあり、ジェネリックに変更する際に、私になんの連絡もなかったんです」

 

A医師「たしかに、クリニックの “門前薬局” にはこちらの要望を伝えられても、患者さんに違うエリアの薬局に処方箋を持って行かれると、こちらの処方の意図を無視したジェネリックが渡されてしまうことがあります。困りますよね……」

 

E医師「患者さんからは、薬局で『ジェネリックはイヤです』と言っても、何度も説得されて、ジェネリックをゴリ押しされたという話も聞きます。処方箋には “先発品から変更不可” という指示を出せるのですが、それでも時々、薬局から『患者さんがジェネリックを希望してます!』と電話がかかってくることもある。強引だなと思います」

 

B薬剤師「それは、私たち薬剤師も仕方なくやっているので……。ジェネリックの使用率が高いほど薬局の利益が増える『後発加算(後発医薬品使用体制加算)』のため、経営者からはジェネリックの使用割合を増やすように、毎日のようにプレッシャーをかけられているんですよ」

 

D医師「医者にも似たような制度があります。『一般名処方加算』といって、薬の製品名ではなく、成分名で処方箋を明記するんです。6月から、この一般名処方加算の点数がさらに引き上げられます」

 

B薬剤師「一般名処方だと、薬局では先発品とジェネリック、どちらを処方してもいいことになる。必然的に、薬局はジェネリックで用意することになります。国を挙げてジェネリックを推奨しているわけですから、この流れは変わることはないでしょうね」

 

■製造・品質管理基準は遵守されているのか

 

A医師「2020年の小林化工による睡眠導入剤成分の混入事故以降、日医工や沢井製薬などのジェネリック大手でも不正が相次いで発覚しました。各社の管理体制に不安がないといえば嘘になります」

 

C薬剤師「先発品もジェネリックも、『GMP基準(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)』を満たした工場で製造されていますが、こうも不祥事が相次ぐと、基準を遵守できているのか不安ですよね」

 

B薬剤師「製薬会社の各工場には、GMP管理者として薬剤師が置かれますが、GMPについて学べるのは、富山大学や東京理科大学などごくわずか。GMP遵守も口先だけなのかもしれませんね。かくいう私も、薬学部時代はそんな基準があること自体、知りませんでした(笑)」

 

D医師「とても興味深いですね。私も、いま初めて知りました(笑)。いや、ほとんどの医師が、薬がそんな基準にのっとって製造されていることを知らないんじゃないかな」

 

C薬剤師「ジェネリックメーカーは190社あるといわれていて、自社工場を持たない会社は他社に製造を委託するんです。同じ工場で複数のメーカーがジェネリックを製造している現状は、異物混入のリスクが避けられないんじゃないでしょうか」

 

 2月15日に発表された日本製薬団体連合会の調査では、ジェネリック医薬品のうち、35.8%が出荷停止や限定出荷となっている。

 

 製薬会社が多い北陸地方で起きた地震も原因のひとつだが、不祥事による業務停止などの行政処分がおもな原因だ。

 

「今の薬不足を解消するには、ジェネリックを推進するより、先発品を安価にし、流通を促せばいい」。E医師の “正論” に、参加者たちは深く頷いた。

 

写真・保坂駱駝、取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)

( 週刊FLASH 2024年3月5日号 )

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