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「死ぬとき」をめぐる2つの大転換…ついに「自分の最期は自分で決める」時代に

ライフ・マネー 投稿日:2024.01.27 11:00FLASH編集部

「死ぬとき」をめぐる2つの大転換…ついに「自分の最期は自分で決める」時代に

 

「死ぬときぐらい 好きにさせてよ」

 

 これは2016年、宝島社が、新聞の全国紙4紙でおこなった企業広告です。樹木希林さん出演の大広告には、度肝を抜かれましたね。

 

 じつは現在、「死ぬとき」をめぐって、大転換が起こっています。ぜひとも知っておいていただきたいことは、2つです。

 

 1つめは、「人生の最期を、どこですごすか」ということについて、これまでとは考え方が180度、転換してきているということです。

 

 もう1つは、「自分の最期は自分で決める」という時代になってきている、そして政府がそれを後押ししている、ということです。

 

 

 これまでは、体調が悪くなると、病院で検査を受けたり、入院して治療を受けたりするのが当たり前、と思われていました。今でもそう思っている方も多いでしょう。実際に、病院で最期を迎える方が一番多く、全体の約8割くらいです。

 

 そのほかでは、1割強の方が、ご自宅で最期を迎えられ、残りの少しの方は、施設で最期を迎えられます。在宅死というのは、少数派であったのです。

 

 しかし、新型コロナで、病院の医療が変わりました。面会が制限されるようになったのです。「面会おことわり」という病院は、さすがに今は減りましたが、「親族に限る。2名まで。15分間まで」といった制限がつけられるようになったのです。こうした面会制限が続いている病院は多いのです。

 

 人生の最期の最後の段階になって、ご本人は心細いでしょうに、家族と会えない。また、ご家族の立場からしても、「最期は一緒にすごしたい、手足や背中をさすってあげながら、話をしたい」と思っても、できない時代になったのです。

 

 そこで、「状態が悪い、だから、家に連れて帰りたい」と希望される方が、とても多くなりました。これまでは「状態が悪いから入院」だったのに、今では「状態が悪いから退院して家に帰る」という時代になったのです。

 

 どうでしょう、正反対ですよね。

 

 病院側からも、「こんなに状態が悪いのに家に帰るなんて、とんでもない」と言われるようなことはなくなりました。「病院にいたのでは悔いが残る」ということに、病院も気がついてきたのです。

 

 もう1つの大転換は、「ご本人の意思によって、治療方針を決定する」ということが、確立されてきた、ということです。

 

 これまでは、ご本人の希望と、家族の意見が食い違う場合には、「息子が(娘が)そう言うなら……」と、家族の意見が優先されることも多かったのです。

 

 ところが、政府が「『人生の最終段階』では、治療方針は本人の意思に沿って決定される」とはっきり示したのです。誰に遠慮する必要もなく、自分の意思で、自分の最期の段階の生き方を決める時代になったのです。「死ぬときぐらい 好きにさせてよ」は、まさに今、実現しているのです。

 

 このことについて、詳しく説明しますと、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年)が制定されています。医療・介護に従事する人は、このガイドラインに沿うことが求められています。

 

 とはいえ、ご自分で意思表示ができる方と、できない方がおられます。本人の意思が確認できる場合には、本人の意思を尊重する、とされています。本人がいやがる医療行為を、無理やりに実施することはできません、ということです。

 

 本人の意思表示が確認できない場合には、ご家族がいる場合にはご家族に質問がされます。「ご本人だったら、どういう選択をされると思いますか?」と。

 

 これまでは、ご家族に「どうされますか?」と聞くことも多かったかもしれません。しかし、現在では、

 

「本人が(延命治療について)何かお話しされていたようなことは、ありませんか? 覚えておられませんか?」

 

 から始まって、

 

「ご本人だったら、どうされると思いますか?」

 

 という聞き方になります。「(子どもさん方は)どうされますか?」という聞き方は、今はおこないません。

 

 ご家族や友人など、本人の意思を推し量る人が誰もいない、という場合には、医療関係者が相談して、「本人にとって最善」と思われる選択をおこないます。「(お医者さんたちに)お任せします」というのは、この場面だけなのです。

 

 ご自分の考えや希望を、何度もご家族に伝えましょう。医療関係者やケアマネジャーさんなどにも、伝えましょう。できれば、紙に書いて、電話機の横や、ドアなどに貼り出しておきましょう。

 

 これが、いざという時に「残された人たちに迷惑をかけない方法」です。本人がこう望んでいるのだから……」と、みんなが一致した方向で動くことが、一番後悔が少なくなるのです。

 

 

 以上、髙橋浩一氏の新刊『在宅緩和ケア医が出会った 「最期は自宅で」30の逝き方』(光文社新書)を元に再構成しました。24時間往診の在宅療養支援診療所を運営してきた医師が、在宅緩和ケアを依頼してきた患者との数々のストーリーを紹介します。

 

●『在宅緩和ケア医が出会った 「最期は自宅で」30の逝き方』詳細はこちら

( SmartFLASH )

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