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特殊詐欺「ルフィ事件」元「掛け子」受刑者の手記(5)闇バイトを考えているやつへ「得た金以上のどん底が必ず待っている」

社会・政治 投稿日:2024.03.22 06:00FLASH編集部

特殊詐欺「ルフィ事件」元「掛け子」受刑者の手記(5)闇バイトを考えているやつへ「得た金以上のどん底が必ず待っている」

ルフィの部下「モリ」氏が獄中から寄せた手記

 

 フィリピンを拠点に、4人の指示役をトップとする特殊詐欺グループが引き起こした「ルフィ事件」。同グループが関与した詐欺被害は、2018年11月~2020年6月で、60億円を超えるとされる。また、摘発された4人が現地収容所から指示し、2022年から2023年にかけて相次いだ広域強盗は、日本社会を震撼させた。

 

 2019年11月、4人の下で働いていた詐欺電話の「掛け子」36人が拘束され、日本に送還。そのうちのひとりで、有罪判決を受けて現在、服役中の「モリ」氏(仮名・30代)が、本誌へ手記を寄せた。その手記を、5回にわたって掲載する(手記中の名前はすべて仮名)。

 

 5回めは、日本へ送還され、刑務所で日々を送る現在の心境をつづる。

 

 

 コロナが始まり、ビクータン収容所に残された36人のうちの18人は、いったいいつになったら帰れるのか。もはや帰れる気がしなくなっていた。先に18人が送還されたときは、残った者はすぐに帰れるとみんな期待していた。だが、だんだんその熱が冷め、現実を知っていくうちに、早く日本に帰って、パクられて刑務所に行き、罪を償いたいと思うやつが増えていた。

 

 ビクータンで生活を始めてから1年8カ月後の2021年7月、やっと日本への送還が決まった。それをみんな喜んだが、キヨトとヒライだけは違った。キヨトは、フィリピン現地の半グレ組織に送還を止めてもらうよう、働きかける電話を何度もしていた。もう大丈夫だとの返事ももらっていた。

 

 送還当日、キヨトは送還されず、ヒライは送還されることになった。こいつは空港に着いても暴れていた。キヨトは2020年1月ごろ、一度、ビクータンから保釈され、1カ月ぐらいしたら戻ってきた。ちなみに、ルフィがビクータンに入ってきたのは2021年5月ごろだったが、コロナ陽性だったり、その後、いったん違う施設に移送されたりして、ビクータンの中では一度も会うことなく送還された。

 

 送還当日、車でマニラ空港までたどり着いたら、日本の刑事たちが待ち構えていた。1年8カ月ぶりの娑婆。出国手続きを終え、トイレに行くと、めちゃくちゃきれいだ。そのことを刑事に言うと、フィリピンのトイレはめちゃくちゃ汚いと言いあっていたらしい。ビクータンの環境にいたから、俺の感覚がマヒしてしまっていた。

 

 飛行機に乗り、離陸すると同時に逮捕された。だいたいの人は、逮捕されるとパニック状態になると思うが、俺らはだいぶん落ち着いていたと思う。なぜなら、パクられるのをこんなに待ちわびている集団はいないはずだ。これでやっと、一歩前進したという気持ちだ。あとは無駄な抵抗はせず、一刻も早く刑務所に行き、罪を償おうという気持ちでいっぱいだった。警察署の留置所で入った風呂はいまでも忘れられない。何しろ、2年ぶりに入った風呂だったからだ。

 

 フィリピンで1年で1億円稼ぐために行き、2年半後に失った物は多々あれど、得たものはいまの刑務所くらいしかない。一時的には大金を得て、いい思いをすることもあるかもしれない。しかし、待っているのはバッドエンドでしかない。被害者はもちろん、多くの人にとてつもない迷惑をかけることになる。終わって気づいてからじゃ、マジで遅い。自分にとって大切な人間にもしものことがあっても、パクられている間は、何もすることもできず、指をくわえて、ことが進むのを待つしかない。

 

 いま、もし裏バイト、闇バイトの類をしようと考えているやつは、思いとどまることを薦める。金なんて最低限あれば、人生を楽しめる。考え方ひとつだ。パクられたら、マジで終わりだ。得た金以上のどん底が必ず待っている。人間として成長することもない。何かしらの十字架を背負って一生、生きていくことになる。一生、誰かに後ろ指をさされて生き続けなきゃいけない。堂々と胸を張って生きることはできなくなる。

 

 ルフィたちは、生きて刑務所を出られることはないと思う。こいつらがやってきたことを考えれば、それでも安い。詳しくは書けないが、人が何人も消えている。生きているものの、体の一部を欠損させられた奴もいる。日本でおこなわれた一連の広域強盗も、実行役の面接の際、真実はほとんど明かされることはなく、実行段階で初めて明かされる。引くに引けない状況に追い込まれ、やらされているやつも少なくないはずだ。それが、彼らの常とう手段だからだ。俺が言うのもおかしいが、刑務所に入って、罪を償って許されるものではないと思う。しかし、それが日本の法律だから仕方がない。

 

 俺が収容所にいる間に、強盗の指示があったかどうかだが、ダルマ、キヨトとその子分5、6人ぐらいで、最初は収容所内で掛け子をやっていたらしいがうまくいかず、タタキ(強盗)に切り替えていったらしい。ルフィやキヨトが強盗をやり出したのは、俺らが送還された後の話だ。

 

 彼らが逮捕された後でも、強盗のニュースをちょくちょく目にした。ルフィら以外にも、指示役が海外にいるのだ。フィリピン、カンボジア、タイあたりでは、警察や役所への賄賂が効き、半グレ集団には都合のいい国である。潜伏先としては良好だし、日本の警察は介入できないので、やりたい放題に近い。何年もパクられずに、犯罪行為を続けている集団はじつに多い。

 

 KTVやジャパニーズレストラン、ショッピングモールでは頻繁に同業と遭遇する。なぜ同業とわかるかというと、ズバリ見た目だ。堅気のフィリピンにいる日本人の男は、90%以上が年配者だ。一方、同業は若いやつが圧倒的に多く、タトゥーなど入れていれば、ほぼ確定と言っていい。

 

 こういう奴らが、闇バイトをあっせんするメンバーで、まだまだ海外に生息していて、そういう世界に引き込まれる危険性が転がっているのだ。

 

 最後に、俺は現在、とある刑務所で、雑居で集団生活を送っている。殺人犯もいれば、万引きの常習犯もいる。反省しているやつ、まったく懲りていないやつ。何にせよ俺が、いまやるべきことをしっかり定め、それに向け、1日1日、コツコツ進むだけだ。

( SmartFLASH )

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