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33年ぶりの “大幅賃上げ” たった5%に呆然…日本経済復活の条件は「最低賃金2000円以上」【泉房穂のケンカは勝つ第39回】

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.03.27 06:00 最終更新日:2024.03.27 06:00

33年ぶりの “大幅賃上げ” たった5%に呆然…日本経済復活の条件は「最低賃金2000円以上」【泉房穂のケンカは勝つ第39回】

ニセコを取材したキャスターと。「ラーメンも平均時給も1000円の日本は異常。ラーメン2500円、時給2000円のニセコが世界標準よ」(泉氏)

 

 33年ぶりの大幅賃上げ。連合が3月15日に発表した、春闘の第1回回答の平均賃上げ率は5.28%となった。

 

 世間は大騒ぎやけど、この32年間、政府は何やっとったんや。しかも、やっと上がったと思ったら、たった5%。これはちょっと前までの法定利率と同じ。つまり、それくらいの賃上げは当然ということや。

 

 

 海外では賃金上昇は普通で、先進国で日本だけが30年以上も賃金が上がらなかった異常な国だということ。賃上げを喜んどる場合じゃない。

 

 だいたい、今回の賃上げの恩恵を受けるのは大企業の正社員。そもそも連合は大企業が中心の組織で、中小・零細企業の社員や非正規労働者にとってはほとんど関係のない話。だから、将来への不安で結婚を躊躇し、少子化が進む。連合が大幅賃上げと喜ぶだけでは、状況は変わらん。

 

 先日、テレビのロケで、2泊3日で北海道のニセコに行ってきた。ラーメン一杯が2500円もするといわれる実態を取材するのが目的。

 

 そこで、海外からの観光客にたくさんインタビューした。アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、マレーシア、シンガポール、台湾など、いろいろな国の人に聞いても、「ニセコは安い」と異口同音に答えた。ラーメン2500円が高いという人は、一人もいなかった。アジアの人も「日本のほうが、自分の国よりも安い」と驚いていた。

 

 ニセコに来ている外国人は、バブリーなカネ持ちばかりというわけではなく、実際は普通の家族連れが多い。そんな人々が、日本は安いと言っている。

 

 さらに特筆すべきことに、彼らは「日本では1時間1000円で働いてるの?」と、目を丸くしていた。自国では時給が2000円、2500円という。

 

 一方、日本はずっと時給1000円程度が普通になっている。30年以上、ほとんど上がっていない。経済は低迷を続け、いつのまにか他国から取り残されてしまった。そのことを、ニセコに行って痛感した。

 

 ニセコのアルバイトは時給2000円以上も珍しくない。日本では高いといわれるが、海外ではニセコが当たり前ということ。

 

 日本がいかに「安い国」になったか。それは、経済誌「エコノミスト」が発表する「ビッグマック指数」にも表われている。日本ではビッグマックは480円だが、韓国では約600円、アメリカでは約800円、スイスでは約1000円する。

 

 さらに安いのが、日本の賃金。

 

 たとえば、韓国では20年前の最低賃金は時給500円程度。日本の半分ほどやった。日本は30年前も今も、時給は1000円前後。韓国はその間に倍以上になって日本を抜いた。

 

 スイスなんて約4000円。アメリカは約2400円、ドイツやフランスも約2000円やから、日本は低すぎる。岸田首相は、2030年代までに最低賃金の全国平均を1500円にすると言っているが、今すぐやれと。目標も2000円にすべき。

 

 この30年あまり、日本で普通に給料が増えていれば、時給は現在の2倍になってもおかしくなかった。高度経済成長のころは、給料は倍々ゲームで増えていったんやから。

 

 5%程度上がったって、この間ずっと給料が上がらんかったから、とても追いつかん。先に物価が上がり始めて実質賃金が目減りしているから、賃上げも帳消しよ。

 

 岸田首相が賃上げに光を当てたのは悪いことではないが、トータルで可処分所得を増やすことに加え、人々に安心感を与えることが不可欠。人は安心して初めてお金を使い、経済が回る。

 

 安心を生むのは、ほかならぬ負担軽減策。しかし、国の政策はそれと逆。「子ども・子育て政策」の必要性を謳いながら、一方で扶養控除を引き下げる方向。控除が少なくなるぶん、結局増税になる。子供のいる家庭は、これで安心できるわけがない。

 

 また、少子化対策の支援金制度は、支援とは名ばかりで実質は負担金制度。子育て層も含む形で、保険料上乗せを画策している。大企業はまだしも、自営業者が入る国保はしんどい。子供の数だけ保険料を取られるわけで、そりゃ子供を産もうとはならない。

 

 税金や保険料を合算した国民負担率が5割近い日本で、これ以上税金や保険料の負担を増やす必要はない。扶養控除をなくしてはならないし、支援金制度は見送るべき。

 

 明石市では、生活支援のために、子育てサービスや高齢者の地域コミュニティバスの無償化などをやってきた。

 

 ほかにも、国の交付金を地域商品券に置き換えて配ったり、奨学金制度を作ったり、商店街のテナント料を補填したりした。自治体は税金や保険料を変えることはできないから、明石市独自の負担軽減策をおこない、市民がお金を使えるようにしたわけや。それで地域の経済が回り始めた。こうした施策は、そもそも国が率先してやらなあかん。

 

 私が子供のころの国民負担率は2割だったから、10稼いだうちの8は自分の家族に使えた。そのうえ、毎年給料はどんどん上がっていったから、将来に夢がある楽しい時代やった。

 

 今の国民負担率はほぼ5割やから、半分しか使えない。これからもっと負担が増えて給料も上がらなければ、子供をもう一人作ろうとは思わないし、お金を使わず貯金に回すから、経済を萎(しぼ)ませる。

 

 最後に私の提言。経済を回復させるために国がやるべきは、最低賃金を欧米並みの2000円以上にすると同時に、給料の倍増を目指すこと。一方で、トリガー条項発動などの減税を断行し、支援金導入はやめる。子供にかかる医療費、保育料、給食費などは全国一律で無償化する。そして、食料品をはじめ生活必需品の消費税は、イギリスなどと同様、ゼロにする。

 

 とにかく庶民がお金を使えるようにならなければ、経済は回らない。庶民がお金を使えるようになってこそ、日本も復活するはずや。

( 週刊FLASH 2024年4月9日号 )

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