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【クマのスーパー立てこもり】猟友会所属ハンターが語る“麻酔銃”の難しさと被害激増の実態

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.12.03 19:50 最終更新日:2024.12.03 19:51

【クマのスーパー立てこもり】猟友会所属ハンターが語る“麻酔銃”の難しさと被害激増の実態

観光道路でヒグマと遭遇(画像提供:内田雄紀氏)

 

「役所から(害獣駆除の)要請を受けて出ているのに、現場に着くと動物愛護団体の人からは結構、厳しい言葉を投げつけられます。クマの駆除の場合、捕獲から処理までで1万円を少し超えた金額が貰えるだけ。危険度を考えれば割に合いません」

 

とは、クマの駆除で出動経験のある猟友会会員だ。

 

 

 秋田県スーパーで従業員を襲い怪我をさせたうえ、2日以上も店内に居続けたクマが12月2日、捕獲された。体長1mほどで、設置された箱罠にかかったという。取材した現地テレビ局の報道局記者が明かす。

 

「居座ったというより、最初に発見した際、バックヤードに通じる出入口を封鎖したため閉じ込めた格好です。その後の措置に手間取ったというのが実情ですね。箱罠にはハチミツをかけた誘導用のエサを入れていたようですが、店内には販売していた肉や果物もあり、『罠にかかるかなあ』と、出動した猟友会関係者は心配していました。立てこもり事件等に対応する特殊事件捜査係(SIT)の隊員も対応していましたが、閃光弾や催涙弾を使った突入はまったく考慮されていませんでした。重装備とはいえ、弾薬で興奮した状態のクマに立ち向かうのは危険すぎるからです」

 

 クマによる人身被害と発生件数は、昨年が統計のある2006年以降で最多を記録。今年上半期の出没件数も最多という。環境省はクマを今年4月に指定管理獣とする省令を改正し、駆除対策を強化した。3日の閣議後の会見で浅尾慶一郎環境相は、

 

「住民が苦労していることは受け止めている。できるだけ早く、クマの被害に対応できるような法律を提出したい」

 

 と述べ、一定の条件下であれば市街地で猟銃の発砲ができるよう鳥獣保護管理法の改正を目指すことを明らかにした。

 

「しかし一方で、主に動物愛護の観点から、駆除だけを目的とする対策強化に異論があることも確かです。今回のクマは殺処分する予定ですが、すでに抗議の電話が殺到しているとのことです。さらに、クマを殺すことなく捕獲できる麻酔銃を使用しないことへの疑問も上がっています」 (社会部記者)

 

 だが、都道府県の猟友会が団体会員になる大日本猟友会は、「麻酔銃の取り扱いについては、当団体の管轄外と考えます」(広報担当者)とにべもない。狩猟免許は環境省の管掌事業で、猟法によって免許が分かれている。銃を使った猟法には第1種(散弾銃、ライフル銃)と第2種(空気銃)があり、麻酔銃が管轄外とはどのような事情なのか。先の猟友会関係者がこう続けた。

 

「麻酔銃はケタミンなどの睡眠剤を使用します。これらは医師の処方がなければ使用ができないので、麻酔銃は医師か獣医師しか使えないのです。医師や獣医師で狩猟免許を持つ人はごくわずか。当然、人材が足りていません」

 

 ここ数年、山のエサ不足のため、クマが市街地に下りることが多くなったとされているが、自治体の対策もあり今年は山のエサが豊作という。それでも市街地にクマが下りるのは、食品販売店や飲食店、家庭などから出る食品ゴミが目当てだという。

 

「クマは縄張り意識が強い。1回、漁ったゴミ捨て場は自分のものだと考えるので、何度でもやってくる。実際、今回のクマも生息地と予想される山から5km近くも移動しています。夜間未明だったと思われますが、この間に出くわした人がいなかったことだけでも運がよかったということです。秋から冬にかけてがクマの出没のピークですが、エサが豊富なら冬眠しないクマも出ます。

 

 また、東北ではヒグマなみに巨大化したツキノワグマの出没報告が多数あります。クマと鉢合わせたら、襲われないことを願うしかない。場当たり的に駆除するだけでなく、より抜本的な対策を講じるべきです」(猟友会会員)

 

 まだまだクマとの闘いは続く――。

( SmartFLASH )

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