社会・政治
石破茂首相「年収の壁150万円」引き上げを “拒否”…党内では許容論も「国民民主に手柄をあげない」さもしい “裏事情” とは
石破茂首相が、1月28日の衆院本会議でおこなった代表質問の答弁に批判が殺到している。石破首相は、国民民主党が求める「年収103万円の壁」の撤廃について、
「(政府与党が昨年12月の税制改正大綱で決めた123万円で)法案提出に向けた準備をしている」
と語り、150万円程度への引き上げを検討しているとの一部報道について「認識していない」と、きっぱり否定してみせたのだ。
この引き上げ幅は、2024年12月の自公与党と国民の3党幹事長会談でおこなわれた「178万円を目指して、来年から引き上げる」という合意を、事実上、棚上げするものだ。
「所得税などがかかり始める年収の壁については、国民民主党が徹底して178万円への引き上げを求めています。しかし、自民党と公明党との3党協議では、自民党から123万円までの引き上げしか提示されず、国民民主党税調会長の古川元久代表代行はその場ですぐに離席する “事件” も起きています。
自公与党は過半数の議席を持たない少数与党です。野党の協力なしには予算案は成立しません。実際、古川代表は1月29日にはこのままだと『とうてい予算に賛成できない』と明言しています」(政治部記者)
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こうした状況を踏まえ、上記のような “150万円への引き上げ” が報じられたわけだが……。
「石破さんは、かなり冷たい様子ですね。たしかに理屈上では、2024年12月に3党協議が打ち切られてから、1回も開かれていませんから、当然、最後に話し合いのあった123万円から数字が動くわけがありません。ただ、内々で150万円まで引き上げる可能性を国民に伝え、再び3党協議を開始することだってできるはずですが……」(同)
実際、自民党内部でも “150万円許容論” が出てきているのだ。
「178万円はさすがに厳しいですが、150万円なら引き上げ容認派は党内に多数いますよ。今年は参院選もありますし、これ以上世論の支持を失いたくない。引き上げることによって4〜5兆円程度の財源不足になるわけですが、財務省幹部のなかにもこれぐらいなら許容範囲だとする人もいます」(自民党関係者)
では、なぜ石破首相はかたくなに国民民主党との妥協をおこなわないのか。
「強い “味方” が現れたからですよ。ずばり日本維新の会です。そもそも、2025年度予算案は、大阪万博の開催関連経費が組み込まれています。吉村洋文大阪府知事が共同代表の日本維新の会としては、予算案に反対しにくい立場なんです。しかも、同党が主張する高校授業料の無償化は、予算でいえば6000億円程度。石破首相にとって、維新の要求を飲むほうがリーズナブルなんです。
これまで自民党は何かと問題の多い大阪万博に『維新の問題だから』と距離を取るようなスタンスでした。ところが、石破首相は、19日には万博会場を訪れ、28日に出席した『国際博覧会推進本部』の会合では、『あと75日で開幕』『もうほとんど日が残っていない』『私自身も、面会した各国首脳に直接万博への来場を呼びかけている』などと大阪万博を礼賛。まさに吉村府知事への露骨な “すり寄り” をしたわけです。
逆に、もしもこのタイミングで150万円への引き上げを認めると、明らかに国民民主党の手柄になります。6月の都議選の前哨戦とされる26日投開票の北九州市議選では、国民民主党のひとり勝ちでした。ここでますます国民民主党を勢いづけるようなことをしては、7月の参院選にまで影響しかねません。だったら、“落ち目の維新” と組んだほうが自由が効くという目論見なんです」(政治ジャーナリスト)
己が権力を維持するために、次々とすり寄るターゲット変える――あまりに情けない政権運営で、肝心の “民意” が無視されているのは間違いない。
「こうした石破さんの動きに怒り心頭なのは役職停止中の玉木雄一郎氏ですよ。石破さんの『検討していない』発言が出た日にはXを更新して、
《この日に行われた衆院代表質問でこの期に及んで、150万円への引き上げについて検討すらしていないとは。インフレに苦しむ国民の手取りを増やす気など全くないということか》
と、強い言葉を使って批判し、
《もう、参議院選挙で勝って議席を増やすしかない》
と結んでいます」(同)
ところが、玉木氏の決意について、全国紙の政治部デスクはこう言って突き放す。
「178万円という “無理な注文” を続けることで、話を前に進めていないのは玉木さんも変わらないですからね。
玉木さんは役職停止中で身軽なためか、20日からダボス会議に出席。各国首脳やIT企業の経営者らとのランチ写真などを毎日のようにXに投稿していました。閲覧数もかなり多かったようで、帰国した玉木さんは『これからは外交もやろう。ウケがいい』とご機嫌だったそうです。
地道な交渉を重ねて公約を実現することより、自民を批判して党勢を拡大することに頭が向いているんですよ」
結局、物価高に苦しむ庶民のことは、誰も見ていないというわけだ。