社会・政治
「農水省が諸悪の根源」コメ高騰の真犯人“減反政策で需要ギリギリ”“スーパーに卸すより外食産業”関係者が明かす実態
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備蓄米放出を発表する江藤拓農水相(写真・時事通信)
2024年5月ごろまで5kg2400円程度だったコシヒカリは、先月4000円を突破するなど、異常な米の高騰が続いている昨今。農水省は「流通の円滑化」を目的に、国内で保管されている100万トンの備蓄米のうち、約2割となる21万トンを市場に放出することを発表した。
「政府が備蓄米をコメの高値対策で放出するのは初めてです。ただ、2024年の主食用コメの収穫量は679万トンで、前年比で18万トン増。6年ぶりに前年を上回る収穫量でした。なぜ、コメそのものは多く収穫できているのに値段がここまであがっているのか、多くの識者が首をかしげるような事態になっています」(社会部記者)
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何が原因でここまで高騰しているのか。“犯人”はいったい誰なのかーー。そもそも、この数年は「コメが余っていた」と語るのはJA関係者だ。
「きっかけは2020年のコロナ禍です。緊急事態宣言で外食産業は軒並み休業を余儀なくされました。その結果、コメの在庫がダブつき、米価が大幅に下落しました。
実際、60kgあたりのコメの卸売価格が1万円を切った地域もありましたよ。現在は2万5000円弱なのでその40%程度で、この価格では農家は作るだけで赤字になってしまいます。そこで政府は、その対策として主食用コメから飼料用コメへの転作に補助金を積み増すようになりました。結果、飼料用コメの作付面積は2021年から2022年にかけて、過去最高の14万ヘクタールにもなりました。こうした背景もあって、コメは需要予測のギリギリまで減らされていた、という背景があります」
減反政策で需要ギリギリの収穫量。そこでコメ農家には“ある選択肢”が生まれたという。
「全農や農協に売るのではなく、民間のコメの卸業者に売るというものです。全国平均で農協と全農の扱い高はすでに50%程度。自分で値段交渉をしたり販路を開拓できる民間業者にシフトしつつあるんです。とくに今はコメ不足ですから、高値で買ってくれる民間業者に持ち込むわけです。結果、2024年は生産量と需要の差、約39万トンほどが流通せずにどこかに“備蓄”されています。数字にして生産量の5%弱程度ですが、需要ギリギリしかないんですから、やはりコメ不足になるんです」(関係者)
さらにこうして高値でコメをかき集めた民間業者は、スーパーよりも外食産業を優先するようになる。現役のコメ問屋社員はこう語る。
「やはり日頃の付き合いもありますからね。例えば外食産業はコメがなければ商売を閉めなければならない。また、パック入りライスを製造する食品会社も、やはりコメがないとどうにもなりません。病院や学校もそうで、コメが確保できなければ給食予算が組めません。こうした『どうしても欲しい』というところに優先的に回します。
一方、スーパーなどの小売店は優先度が低い。しかも大型チェーンにはその購買力をたてに、これまでさんざん買い叩かれてきたという経緯があります。感情的にもあまり協力しようという気持ちがわかないんですよ。コメがなくても商売ができますしね。これもスーパーからコメが消えた理由のひとつです」
国の政策の失敗のつけが庶民に回ってきているということなのか。