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賃貸住宅家賃「30年ぶり高上昇幅」の異常事態「上げないと赤字に」オーナーの悲鳴と疑われる“便乗値上げ”
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生活に直結する「家賃」の高騰が始まりつつある(写真・AC)
消費者物価指数など経済指標の上下にあまり影響を受けず、「岩盤物価」といわれてきた家賃の高騰が、本格的になってきた。
「値上がりが顕著なのは東京都区部です。ここ20年、同都区部の家賃は横ばいか、やや下落傾向でした。
しかし、2024年11月の『東京都区部の消費者物価指数(CPI)』では、一般賃貸住宅の家賃を示す『民営家賃』が前年同月比で0.9%プラスになりました。これは30年ぶりの高い上げ幅ですが、入居のための物件探しが活発になる2月には、2%にまで上昇しています。
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牽引しているのは、千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区など、人気地区にある分譲マンションの賃貸で、オーナーは貸し出す賃貸物件の家賃を高めに設定しています。この傾向は今後も続くでしょう」(経済担当記者)
物価が上がっているため、家賃の上昇も致し方ないのだろうが、なかには「更新の際に5%を超える家賃アップを要求された」という声も聞こえる。なにが、これほど急激な家賃上昇につながっているのだろうか。
「大きな理由は、日銀の金利アップです。賃貸住宅を建設するときは、一般的な『住宅ローン』は使えません。『アパート・マンションローン(アパマンローン)』を組むのですが、金利は変動型で3~5%と高めです。その金利が、今後も上がることが見込まれます。
住宅ローンの変動型には、金利が上がってもすぐに返済額がアップしない『猶予期間』があります。しかし、一方のアパマンローンは、問答無用で上がった金利が適用されてしまう場合があるんです。そのため、今後の返済分アップも見越して、オーナーは家賃を引き上げているのです」(賃貸マンションオーナー)。
渋谷区でマンション投資をしている男性は、備品や内装費の上昇などを理由にあげる。
「京王線初台駅から徒歩2分、20平方mのワンルームマンションを、9万円で貸しています。
7年前は7万円だったエアコンを入れてありますが、いま、同程度のものに入れ替えたら11万円かかります。クロスの張り替えや害虫駆除費なども3割増しになっています。
おまけに管理費、修繕積立費、固定資産税も上がっていますから、家賃を上げないと赤字になってしまいます。5月に更新予定の入居者の方には、5000円のアップをお願いしようと思っています」
しかし、なかには「便乗値上げでは?」と疑いたくなるケースもある。
「親から相続した、目黒区内にある75平方m、3LDKのマンションを25万円で貸し出しています。最寄り駅から徒歩4分です。
8年ほど住んでいた方が3月に退去するので、仲介する不動産屋さんと新しい家賃について相談したら『入れ替わりのタイミングなので強気にいきましょう。30万円で募集をかけましょう』と言われました。
年間、60万円の増額はうれしいですが、『もらいすぎ』なのかなとも思ってしまいます」(区分所有マンションオーナー)
実質賃金が物価上昇を下回るなか、支出に占める割合が高い家賃の上昇は、景気を冷やす要因にもなりそうだ。