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プーチン大統領「3日間停戦」発表の“腹の内”を専門家が分析「『ウクライナ属国化』の目標は変わらない」

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記事投稿日:2025.05.03 12:55 最終更新日:2025.05.03 20:39
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
プーチン大統領「3日間停戦」発表の“腹の内”を専門家が分析「『ウクライナ属国化』の目標は変わらない」

2025年4月25日、モスクワで会談をしたロシアのプーチン大統領(右)とスティーブ・ウィトコフ米中東担当特使(写真・時事通信)

 

 いよいよウクライナに平和が訪れるのか──。

 

 4月28日、ロシア大統領府は、プーチン大統領の決定として、5月8日午前0時から11日午前0時までの72時間、すべての戦闘行為を停止すると一方的に発表した。

 

「5月9日が、旧ソ連の対ドイツ戦勝80周年記念日にあたるからです。声明では、ウクライナに対しても3日間の停戦を求めていますが、ウクライナ側が停戦を破った場合は『ロシア軍は適切に対応する』と警告しています。これに対し、ウクライナのシビハ外相はXで『ロシアが本当に平和を望むなら、即時に停戦すべきた。なぜ5月8日まで待つのか』と不信感を示しています」(国際政治担当記者)

 

 今回の一時的な停戦の目的は何なのか。元時事通信外信部長で拓殖大学海外事情研究所客員教授の名越健郎氏に話を聞いた。

 

「プーチン大統領は、4月19日にもキリスト教の復活祭に合わせて、19日の午後6時から21日の午前0時まで30時間の停戦を宣言しましたが、結局、その間もウクライナへの攻撃がやむことはありませんでした。今回の停戦案はむしろ、米国向けの“ジェスチャー”の意味合いが強いでしょう。というのも、停戦交渉が一向に進まない現状に、トランプ米大統領がいらだっているからです。

 

 トランプ大統領は4月26日、バチカンでフランシスコ教皇の葬儀に出席した際、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談しました。そこで、ロシアがウクライナの首都・キーウにミサイル攻撃を繰り返していることを非難し、『ロシアに制裁を加えろ』と発言しています。プーチン大統領としては、トランプ大統領がロシアに強硬な姿勢を取ってくる可能性があるので、停戦することで、彼の顔を立てようとしているんです。つまり、米露関係の改善を視野に入れているわけです」(以下、発言は名越氏)

 

 

 米国への牽制という意味では、今回の停戦案は対外的なものだが、ロシア国内での批判緩和策でもある。

 

「ロシア国内の世論調査では、6割から7割が『停戦交渉を進めるべきだ』という意見です。とくに、経済テクノクラートやオリガルヒなどが同意見を主張しています。戦争によって2025年は経済が落ち込むリスクがあり、原油価格も下がっていますからね。戦争で80万人以上の死傷者を出しており、厭戦気分も広がっています。そのため、ロシア最大の祝日である戦勝記念日を盛大に祝って、国民向けにも和平のジェスチャーを示す必要があるんです。

 

 また、戦勝記念日にモスクワの『赤の広場』でおこなわれる軍事パレードには、中国の習近平国家主席ら各国の首脳陣が参列する予定で、停戦の提案には国際社会からの批判を和らげる意図もあるでしょう」

 

 では、プーチン大統領はウクライナとの恒久的な停戦をどの程度、本気で考えているのか。その本音が露わになったのが、4月25日にモスクワでおこなわれた、プーチン大統領とトランプ政権のスティーブ・ウィトコフ特使の会談だったという。

 

「会談の詳細な中身は明らかにされていませんが、各メディアの報道などによれば、トランプ政権がロシアに有利な仲裁案を提示し、合意が得られなければ仲介をやめると警告した、ということです。もともと、プーチン大統領が要求していた『東・南部4州の併合承認』は、あまりにもロシア寄りとの指摘が米政府内でありました。そのため、今回の“最終提案”とされる仲裁案は、米国がロシアのクリミア半島領有を公式に承認し、東・南部4州の実効支配も認めるというものになりました。今回は、ウクライナへの安全提供は曖昧にしか言及しておらず、米紙『ニューヨーク・タイムズ』によれば依然として『ロシアに著しく有利な内容』とされています。

 

 ただ、その最終提案ですら、プーチン大統領はかたくなに態度を変えなかったそうです。つまり、プーチン大統領は『ウクライナの属国化』という目標は変えていないんです。かりに今回の一時的な停戦が実現したとしても、ロシアは一定期間を経て、戦力を立て直し、再侵攻する可能性が高いと思います。また、停戦交渉がうまくいかなかった場合、ウクライナの主要施設へのミサイル攻撃を強化するという話もロシアのSNSでは流れています」

 

 5月1日、米国とウクライナは、鉱物資源を共同開発する「復興投資基金」設置を定めた協定に署名したと発表した。これが、ウクライナの停戦にどう影響するのか。各国が固唾を飲んで見守っている。

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