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【現地凄惨ルポ】ガザ地区で進行する飢餓と泣き続ける子供たち「パンは2日に1切れ」現地ジャーナリストが明かす人道危機

原始的な焚火でなんとか食事を取るガザ地区の住民
2025年5月18日、イスラエル軍はガザ地区への大規模な地上侵攻を開始したと発表した。イスラエルとイスラム組織ハマスは、仲介国カタールでの停戦交渉を再開したばかりだった。2023年10月におこなわれたハマスによる越境攻撃に対する報復として始まったガザ侵攻。終わりの見えない“虐殺”により、現地ではかつてないほど深刻な人道危機が生じているーー。
「イスラエル軍は、ハマスのせん滅と、人質の奪還を目指しかつてないほどの規模で全面侵攻をおこないました。しかし、ガザ地区にはハマスが利用する数多くの地下トンネルが張り巡らされており、そもそも戦闘員とガザ市民を見分けるのは容易ではありません。結局、イスラエル軍は一般市民の犠牲を容認して攻撃をおこなっています。累計ですでに約5万人以上の死者が出ています。
2025年1月には、ハマス側が人質を解放することを条件に一時的な停戦に至りました。ようやく和平の兆しも見えましたが、停戦状態が長く続くことはありませんでした」(国際ジャーナリスト)
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こうした戦火の影響を最も強く受けるのは、ガザで暮らす無辜の市民たちだ。
「死と隣り合わせの中でも、ガザの人々は生きるために声を上げ、耐えています。しかし、ほこりと瓦礫に覆われた町では、料理の匂いもパンの香りも、食器の音も失われ、空腹の子どもたちの泣き声と、子どもたちに何も与えられない母親の沈黙だけが残されています」
と深刻な実態を語るのは、ガザ地区在住・ジャーナリストのサメハ・アハメッド氏だ。彼自身、生まれて間もない我が子を戦闘で亡くしている。市民を苦しませるのは、激しい地上戦に加えて、支援物資の輸送が国境で足止めされていることだ。
「2025年3月以降、イスラエル軍はガザへの人道支援物資と燃料の搬入を全面的に遮断しています。食料、医療、燃料といった基本的な物資や飢えそのものを“武器”として、人々を追い詰めようとしているのです」(サメハ氏)
ガザ地区は東京23区の面積の6割ほど。そこに220万人が暮らしており、人口密度が高い。だが、西は地中海、南をエジプト、それ以外の場所はすべてイスラエルに囲まれており、実質的にはイスラエルがすべての人の移動や物資の流入をコントロールしている状況だ。
「イスラエルによる厳しい封鎖により、小麦粉が市場や家庭から完全に消えました。かつて当たり前のように食べていたパンが、今では“遠い夢”となっています。ある家庭では、家族1人につき2日に1度、パンを一切れしか食べられないほどの食料難です。缶詰やわずかな豆類で命をつなぐ日々が続いています。現地のパン職人は、『私たちはレンズ豆やパスタを粉にして代用パンを作るしかない』と話し、『それでも焼いていない日はない。でも自分の家族にはもう3日何も焼いていない』と語っています。
5月上旬には、非営利非政府組織のワールド・セントラル・キッチン(WCK)が主要な倉庫で食材が完全に枯渇したことを受け、1年半ぶりに調理活動を全面停止しました。国境閉鎖され続けたことにより、補給が完全に途絶えたことが原因です。
この厨房が停止したことで、ガザ地区全域にある多くの避難キャンプや医療施設への食事提供が中断されることとなり、飢饉が深刻化しています」
当然、食料が減れば、健康は保てない。
「ガザ市内の病院では、戦闘による負傷者の治療が続いていますが、今や医師たちは“傷”ではなく“飢え”が命を奪うことを危惧しています。栄養失調により免疫力が低下し、治療中の子どもたちは髪が抜け、母親たちは食べ物を子どもに譲るために倒れてしまう。そんな光景が日常茶飯事なんです。
ガザの飢餓は自然災害ではなく、人為的に作り出された静かな殺人とも言えます。報道が減ってしまえば、沈黙による共犯となりかねません。“目を逸らさないこと”こそがもっとも求められている国際的な行動と考えています」
5月19日には、約2カ月半ぶりに封鎖が解除され、ベビーフードなどを含めた物資がガザ地区に届いた。だが、220万人を養う量にはほど遠い。乳飲み子から体が不自由な高齢者まで、罪のない人々が飢餓と空爆の恐怖とともにいまも生きているーー。