社会・政治
「備蓄米」1kg400円で販売に歓迎の一方…専門家すら「食べた人はない」と口をそろえる“異常事態”少しでもおいしく食べるには?

備蓄米の随意契約が始まった翌日の5月27日、笑みがこぼれる小泉進次郎農水相(左写真・長谷川 新/右写真・共同通信)
コンビニ大手の「ファミリーマート」が、5月27日に政府備蓄米の随意契約に申請し、6月上旬から1kg入りのコメを400円(税別)で販売する予定であることが報じられた。
政府は、小泉進次郎農水相が先導する形で、2021年産を10t(トン)、2022年産を20tの計30tの備蓄米を、随意契約で売り渡すことを決めている。
ファミリーマートが、この備蓄米を1kg400円で販売することに対して、Xでは《6合分ですね 味がわからないですし少量販売は助かるし高くない これはいい売り方》《1キロ単位で売ってくれるのは助かります!》《お金があまりない時も手軽に買える、これは当たる。さすがファミマ!》など、歓迎する声があがっている。
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たしかに、このコメ価格高騰のなか、安く手に入るのは大歓迎だ。
ただ今回、政府が売り渡すのは新米ではない。2022年産なら“古古米”、2021年産なら“古古古米”にあたる。
実際の味はどうなのかーー。
まず、都内のコメ店の「お米マイスター」に聞くと「味は食べたことがないから、わからないですね。備蓄米は“すえた臭い”があると聞いています。保管状態次第では、食べられないことはないと思いますが……」と話した。
米穀販売業者の団体である日本米穀商連合会に聞くと「おそらく、食べたことのある人はいないと思いますよ。古古米、古古古米を持っているのは国だけです。流通していないので、食べた人を探すのは難しいと思いますよ」と言うのだ。
先ほどとは別のコメ店にも聞いてみたところ、「認定5ツ星お米マイスター」のA氏は、「私も食べたことはないですが」と前置きしながらも、古古米、古古古米について、こう話してくれた。
「古古米や古古古米などのそんなに古いお米は私も食べたことないですね。ふだん、人が食べるお米として流通していませんから。私が食べたことあるのは、せいぜい古米(現在であれば2023年産)くらいです。
古いお米は、臭いもあるので、精米をきつめにしないと食べられないと思います。普通は玄米を精米して、白米にする場合は1割減るのですが、おそらく2割くらい削らないと食べられないでしょう。なので、今回の備蓄米は粒が小さくなるはずです」
味も精米次第といったことなのか。さらに、備蓄米の特徴について、こう続ける。
「備蓄米の倉庫は14度くらいで、そんなに室温が低くないと思います。たぶん酸化している状態で、すえた臭いがすると聞いています。どんな味がするのか想像できませんが、お米は米油を作れるくらい油分を多く含んでいるので、古いお米は油分が酸化してしまっていて、油をまとっている状態です。
もともと、お米は普通の食品と違い、低温倉庫で保管され、湿度70%で管理されています。備蓄米の保管状態がどうなっているのかはわからないですが、知り合いのコメ卸業の方が備蓄米の倉庫に入ったことがあり、『すえた臭いで、ねっとりしている』と言っていました。
私たちお米の専門家たちは、その様子から“忍者米”と言うのですが、備蓄米は袋を開けて、精米機に入れるときに、ふわーっと粉が舞うんです。つまり、備蓄米は精米が難しいので、売る側が精米してあげてから売ったほうがいいと思います。古いお米を売るのは、けっこうたいへんだと思いますよ」
そして、備蓄米を少しでもおいしく食べるための注意点などについては、こうアドバイスする。
「古いお米を炊く場合は、水を多めにしないと食べられないと思います。また、臭いを消すために、3合あたりに酒を大さじ1杯ほど、加えたほうがいいと思います。もしくは、炊き込みご飯のように、味のついたご飯にしないと食べにくいでしょう。
備蓄米は味を重視しておらず、本来は飼料米とか加工米という扱いなのです。それを人間が食べるわけですから、注意が必要です。今回の備蓄米放出について『古古古米を、なんで人間が食べなきゃいけないんだ』と、憤慨していらっしゃるお客さまもいました。
小さいお子さんがいらっしゃる方は、古いお米は心配なようで、2024年産のお米をあわてて買いにきている状況です。ただ、去年収穫されたお米は、数がとても少なくなってきています。
今回の古古米、古古古米は、精米がたいへんだと思いますし、消費者の方も、買ったはいいけど白ご飯として食べるには、ちょっと工夫しないといけないでしょう。味は我慢してもらうしかないのでは。まあ、安さと引き換えですけどね」
ファミリーマートの備蓄米販売では、親会社である伊藤忠商事のグループ企業が、精米とパック詰めをおこなうそうだ。
果たして、そのお味はーー。