社会・政治
「令和のコメ騒動」の一方で「1日3~4t」廃棄米が“家畜の飼料”になっていた! リサイクル工場に潜入

“廃棄米”を豚の飼料に加工していく工場。大量の海苔巻きが見える(写真・梅基展央)
国民民主党の玉木雄一郎代表が、放出された備蓄米について「1年たったら動物のエサになるようなもの」と表現したことが物議をかもしたのは、5月28日。5月7日には、全国のスーパーでのコメの平均価格が、5kg4233円にまで値上がりした。“コメ大臣”こと農林水産相に就任した小泉進次郎氏が推し進めた備蓄米放出により、現在のコメ価格はかなり落ち着いてきたが、依然としてコメ不足が叫ばれている。
そんななかで、“ありあまる”量のコメを、家畜の飼料用に加工する工場がある。
神奈川県相模原市にある「日本フードエコロジーセンター」の工場には、大量の廃棄食品が運び込まれ、豚の飼料にリサイクルされていく。実際に現地を取材すると、弁当などに入っていた「炊かれたコメ」が、目の前で次々と加工されていく光景が広がっていた――。
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「日本フードエコロジーセンター」の高橋巧一社長に、運び込まれてくる食品、とくにコメの状況を聞いた。
「7割が食品工場から、残りが、スーパーや百貨店などから売れ残りとして運び込まれています。工場で作りすぎてしまったものや売れ残りなどのなかで、パンやうどん、コメなどの炭水化物が、1日に40tから45tほど、うちの工場に運ばれます。そのうち3~4tがコメですね。この数字は、ひところよりも若干、減ってはいます」
それは今回のコメ騒動からか、と思いきや、そうではないようだ。
「最近のコメ騒動のなかでの増減は、とくにないですね。直近というよりも、昨今の食品ロス削減だとか、物価高といったなかで、食品メーカーのほうで仕入れをかなり厳格化してやっていると思いますから、長期的に見ると減っている、という印象です。
とはいえ、弊社と同じように食品リサイクル法で登録されている事業者は、だいたい150~160社あると思いますから、減ったいまでも全国で見ると、相当な量のコメがリサイクルされているのだと思います」
だが、これはあくまでリサイクルされる食材の話だ。店頭に並ぶことのなかったほとんどの食材は、焼却廃棄されてしまう。
「廃棄量は、リサイクル量よりも圧倒的に多いです。それを自治体が、税金を使って燃やしているというのが現状なんです。飼料にしているのは、ごくごく一部で、その何十倍もの量が焼却炉で燃やされています。
実際、リサイクルするよりも焼却してしまうほうが安く済んでしまうので、そうした処置に流れてしまうのでしょう」
高橋社長の目には、コメ問題はどのように映っているだろうか。
「廃棄量を減らす発生抑制の試みは、行政や各メーカーや消費者がしていくべきでしょう。出てしまった廃棄はなるべくリサイクルしていくような取り組みが必要だと思います。また、供給過多を減らすためにも、コンビニやスーパーなどで商品が切れていても寛容になる、などの消費者の心がけも大切かもしれません」
農水省によれば、日本で1年間に発生する食品ロスの総量は472万tという。しかも、その半分が、家庭から出ている食品ロスだ。コメが不足しているいま、無駄にしている場合ではない。