
“新党作りの先輩”渡辺喜美氏
7月20日投開票の参院選。公示後、最初の週末を迎えた7月5日、報道各社が序盤の情勢を報じたが、多くは自公の苦戦を予測している。さらに情勢を詳しくみると、注目度が高い新興政党の2党が明暗を分けている。
勢いがあるのは「参政党」。2020年に誕生したばかりで、代表の神谷宗幣参院議員を含めて国会議員は5名だ。うち、参院議員は2名だが、新聞各社の世論調査によると、今回は10議席獲得をうかがうという。
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一方、2024年7月の東京都知事選で160万票あまりを獲得、小池百合子都知事に次ぐ2位になった石丸伸二氏が率いる「再生の道」は苦戦を強いられている。6月の都議選では、候補者42名を擁立したが全敗という結果に終わった。
なぜこうなったのか。2009年に「みんなの党」を結成した“新党作りの先輩”渡辺喜美元衆院議員に理由を聞いた。
「再生の道ですが、都議選の告示前にこんなことがありました。複数の現職都議から『石丸さんから誘われている』という相談を受けたのです。
そのなかで『都知事選の選挙期間中、石丸さん陣営が集会をライブ配信した業者に報酬を支払ったことは、公職選挙法違反の疑いがある』と報道されていたことが話題になりました。
石丸さんも記者会見で、この報道を受けて『法令に違反するおそれはあると思う』と述べています。
選挙戦になれば『選挙違反疑惑から逃れるために新党を結成したのではないか』という疑惑が出る可能性もあることから、現職都議たちは石丸さんと行動をともにしませんでした」
渡辺氏が「現職がいない政党は選挙で苦戦します」というように、再生の道は都議選で結果が残せなかった。
「さらに『政策は候補者任せ』と明言したことからわかるように、政策を練り上げて作られた党ではありません。
こう言っては悪いですけど、政治の素人が集まっているように見えます。有権者もそのあたりを見透かして、支持離れが起きているのではないでしょうか。石丸さんの尖った部分もなくなったため、コアな応援団がいなくなってしまったと思います。
私の父(故・渡辺美智雄氏)は『政治は結果が大切だが、(政策を実現させる)動機やプロセスも試される』と言っていました。『動機とプロセス』に有権者から疑問符がついたのでしょう」
一方で渡辺氏は、参政党について驚いたことがあるという。
「政策は自民党の最右派に近く、オールドリベラルから見ると“古色騒然”と思ってしまうほどです。しかし神谷さんにはまったくブレがありません。その政策が、20代の方々には新しく感じるようです。
さらに支持者からは『政策の中身というより、TikTokを見ておもしろい政党だな、と思って支持しています』など、アッケラカンとした声もあり、驚かされました」
参政党に“弱点”があるとすれば、それは「ケンカ別れ」だと渡辺氏は指摘する。
「みんなの党は“渡辺個人商店”でしたが、参政党も“神谷個人商店”です。しかし、世帯が大きくなると意見の対立も出てきます。それがやがて、分裂の火種になるのです。みんなの党がそうでした。
江田憲司さんと柿澤未途さんが『日本維新の会と一緒になった方がいい』という意見を唱え、それが一部の勢力から、だんだんと連帯運動になってしまった。
周囲から『早く2人と袂を分かったほうがいい』と助言されていましたが、私は温情派なのでそれができず、結果として党の分裂という大失敗につながりました。
参政党も組織が大きくなれば、同じように分裂の“火種”が出てくるはずです。個人商店の政党は、必ずそういう試練が訪れます。その火種を見つけたら、あらかじめ摘んでおくことが大切。党を運営するには、ある程度の冷酷さは必要なんです」
失敗から学んだ助言は重い。