
2025年1月28日、八潮市で陥没した道路(写真・梅基展央)
1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没を受け、全国で下水道管の調査が進んでいる。直径2m以上、設置から30年以上が経過した下水道管が対象で、その距離は約5000キロにもなる。
だが、道路の陥没はいまも止まらない。6月29日には埼玉県川口市で市道が陥没。53年前に設置された下水道管の腐食が原因とみられる。7月1日には茨城県水戸市の国道が陥没。こちらも70年ほど前に設置された下水道管の老朽化が原因だ。
道路の陥没は年間に1万件ほど発生しているが、夏場に増えるというデータがある。国土交通省の研究機関の資料によれば、道路陥没件数が最も多いのが7月で、次いで6月、8月となっている。最少は2月だ。
【関連記事:断水招く「水道管破裂リスク」高い街を最新AIが計算…千葉・流山市はじめ “全国最弱都市” が明らかに】
「陥没の原因はさまざまですが、多いのは道路の下にある下水道管や排水施設の破損です。それにより周囲の土砂が流され、空洞が発生するのです」
そう説明するのは横山芳春氏(だいち災害リスク研究所所長)。地盤災害の専門家だ。
「夏場に多くなるのは、暑さでアスファルトが軟化するため。舗装が陥没しやすくなります。そして、雨量が増えるためです。梅雨や台風、ゲリラ豪雨などで水量が増え、下水管や排水施設への土砂侵入が増えて、空洞が拡大するのです。また地下水位が上昇したり、流れが変わることも影響します」(以下「」内は横山氏)
陥没の大きな要因とされる下水道管。下水道管が原因で起きる道路陥没は、年間に約2600件にものぼる。
総務省によると、全国の下水道管、約52万キロのうち、法定耐用年数の50年を超えている(老朽化率)のは7.3%。我が国の高度成長期に都市が拡大、上下水道の整備が進んでから約50年が経過したことを考えれば、今後老朽化率は急上昇することは明らかだ。なかには東京都三鷹市の61.4%、武蔵野市の60%と、下水道の老朽化率が著しく高い自治体もある。
陥没は「地盤」が関係することが少なくないと、横山氏は説明する。
「大きな陥没が起きた埼玉・八潮が典型的な例ですが、やはり軟弱な地盤では陥没が起きやすいと言えます。八潮は6000年前ころには入り江のような海で、陸地になったのは約2000年前とされています。そのため、地表から30~50mまでゆるい泥や砂の層からなる軟弱な地盤が続いています。
ただしこれは八潮に限った話ではありません。八潮を含む東京・埼玉東部はもちろん、大阪や名古屋、福岡、広島など、日本の大都市の多くが軟弱地盤の上に形成されています。水運に適した沿岸部に都市が発達してきた、日本の宿命ともいえるかもしれません」
また、大きな地震のあとにも陥没が起きることが少なくないと、横山氏は指摘する。
「地盤が液状化したところでは、道路の下の砂が動いたりして空洞が発生することもあります。地震直後ではなくても、その後空洞が大きくなって陥没が起きることもあります。現地調査をおこなった熊本や能登でも、そういった事例を数多く目にしています」
水道管の老朽化、軟弱な地盤が陥没を引き起こす大きな要素だが、そういった場所を知る手立てはあるのだろうか。
「NHKが公開している『全国水道危機マップ』というサイトがあります。上水道の老朽化率や耐震化率が、市町村単位でわかります。また、自治体が公開している上下水道などの資料を調べることも有効でしょう。地盤については、『J-SHIS 地震ハザードステーション』や国土地理院の『重ねるハザードマップ』『地理院地図』、また自治体が出している液状化や地盤の揺れやすさなどのハザードマップを調べてみてください」
そして何より大事なのは、地下の世界を“イメージする”ことだという。
「道路にマンホールがあるということは、地下に配管など何かがあるということ。それが何で、いつできたのか、どのようなものか。ここの地盤はどういった成り立ちなのか。そうやってイメージを持つことで想定できるリスクもあるはずです」
まずは自分の住む自治体の資料を確認しよう。