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2400人の投資家から170億円超を集金「フィリピン社債」無許可販売で逮捕された“キラキラ社長”たちの映え写真

須見容疑者(右)は橋本容疑者(左)のことを「女帝」と称していた(須見容疑者のインスタグラムより)
フィリピンに拠点を置く企業の社債購入を無登録で勧めたとして、警視庁は「S DIVISION HOLDINGS」(以下、SDH)を経営していた須見一容疑者ら、男女9人を金融商品取引法違反容疑で逮捕した。約2400人から計171億円もの資金を集めるなど、大型事件の様相を呈している。
9人は主犯格の須見容疑者をはじめとするSDHの幹部、社債を売るための代理店2社の関係者らで構成されている。なかでも西日本で広くセミナーを開催し、多くの顧客を獲得していたのが橋本とよみ容疑者だった。
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かつて、須見容疑者は彼女を「女帝」と称していたが、その実態は虚飾にまみれていたようだ。セミナーに参加した関西在住の被害者女性Aさん(30代)が、次のように話す。
「私は美容関係の個人事業主です。橋本さんも、もともと美容系の事業をしており、インスタグラムのフォロワーは2万人以上。美容業界では知られた存在だったのです。彼女は3年ほど前、『お金の勉強会』を始めたんです。コロナ禍で、業界は大変な思いをしていました。多くの美容関係者と同じく、私も橋本さんのセミナーに行くことにしました」
セミナーで、橋本容疑者はこう語っていたという。
「『男性は投資をしても自分のためにしか使わない。でも、家族や子供のためにお金を使う女性たちこそ、お金を持つべきだ』と。そして、“安心できて着実な投資先”として、これから発展するというふれ込みの『フィリピン社債』を勧めてきました。橋本さん自身も子供がいるので説得力を感じ、1000万円近くを投資しました」(Aさん)
橋本容疑者のセミナーに集まった人の多くは女性経営者で、シングルマザーも少なくなかったという。Aさんと同じく約1000万円を投じたBさん(30代)も、その2つに当てはまる。
「2022年9月ごろに投資し、翌月から約10万円の配当が振り込まれるようになりました。しかし、半年ほどで入金が途絶えたんです。SDHに問い合わせると、海外からの送金に問題が発生しており、来月から再開するというのです。でも、数カ月たってもお金は振り込まれません。結局、『フィリピンの新規事業が動きだしたら配当金を出せます』と話を濁されました」(Bさん)
不安に思ったBさんが、配当金を諦めて元金だけでも返済するようかけ合うと、SDHはこんなことを通告してきた。
「『配当金を出せなくなったので、元金を返済する』と言うのですが、月に1万円ずつだと。そんな少額を返されても、元金が全額返ってくるまでに私は死んじゃいます。『すぐに全額返済してほしい』と言おうと思ったら、今回のニュースが飛び込んできました。『ああ、これでおしまいだ』と思いました」(Bさん)
今回の事件では、集めた総額171億円のうち、配当として支払われることのなかった約120億円の行方がいまだわかっていない。ある捜査関係者は、橋本容疑者の派手なカネ遣いに注目していた。
「橋本容疑者は自身のSNSに、高級外車を購入したと自慢げに投稿していました。それだけではなく、沖縄にある高級マンションのペントハウスを、今回集めた資金をもとに購入したのではないか、とみています」
橋本容疑者のSNSは、ほかにもフィリピンでヘリをチャーターし、宮古島でのバカンスを楽しむ様子など、“キラキラ女社長”をアピールする写真であふれている。
主犯格の須見容疑者も、50万円の高級スニーカーを購入しようとする様子や、ロールスロイスが並んだ“映え写真”をポストしている。そこには、《一流は一流とつるむ 二流は三流とつるむ》というポエムが添えられていた。
須見容疑者が投稿した橋本容疑者との2ショットのタイトルは「仲間」。警視庁は彼らについて、詐欺容疑での立件も視野に入れて捜査しているという。