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北朝鮮ミサイル開発に「日本人貿易商」が関わっていた!

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.06.11 11:00 最終更新日:2018.06.11 11:00

北朝鮮ミサイル開発に「日本人貿易商」が関わっていた!

左端の機械が日本製品に酷似(写真・時事通信)

 

 ついに米朝首脳会談が現実のものとなる。トランプ米大統領(71)は、北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長(34)と、6月12日にシンガポールで会談すると発表した。

 

 日米を筆頭に、各国は北朝鮮に圧力をかけ続けてきた。国連安全保障理事会で採択された北朝鮮への制裁決議は、じつに10回。2017年12月の国連安保理の制裁決議は、最低限の原油供給を除いて、ほぼすべての輸出入を禁じる “最強の制裁” とされている。

 

 だが、2018年に入って中国との国境地帯にある北朝鮮・新義州に入った商社マンは、現地のデパートの品揃えの豊富さに驚いた。

 

「棚には商品がぎっしりと並んでいました。日本の対北貿易は、2006年から全面禁止になっているはずなのに、日本製の家電や、楽器、腕時計などがあったのです。日本製の食料品もあって、スナック菓子や日本酒はもちろん、賞味期限が短い醬油やゴマ油といった調味料もありました」

 

 制裁をかいくぐってもたらされる豊富な民生品は、北朝鮮の核・ミサイル開発を支える貿易ネットワークの副産物だという。2011年から2016年4月まで北朝鮮制裁の国連安保理専門家パネル委員を務めた古川勝久氏はこう話す。

 

「2013年7月に、パナマ運河を航行中の北朝鮮の貨物船『チョンチョンガン号』に対して、米国の要請でパナマ政府が貨物検査をおこなったところ、貨物として積まれた大量の砂糖袋の下から、トレーラー6台とコンテナ25個が見つかっています。

 

 積み荷はキューバの軍港で船に積み込まれ、北朝鮮に向かう途中でした。コンテナには、分解された旧ソ連製のミグ21戦闘機、地対空ミサイルシステムなど、おびただしい数の通常兵器部品が入っていました」

 

 じつはこの積み荷には、日本人貿易商・A氏が深く関与しているという。

 

「取引を仕切っていたのは、北朝鮮最大の海運会社である、オーシャン・マリタイム・マネジメント社(OMM社)。A氏は、世界中に187社あるOMM社の関連企業群のうち、主要な役割を担うミラエ・シッピング香港(香港ミラエ社)の代表者です」

(同前)

 

 香港ミラエ社は、貨物船の手配、海外送金を通じて、OMM社の事業に携わっていた。

 

「A氏は、香港における少なくとも14社のOMM社関連企業を取り仕切り、8隻の北朝鮮関連船舶を所有する、キーマンの一人。都内港区の雑居ビルにある、日朝貿易を事業とする海運会社・K社の代表でもあります」(同前)

 

 民間調査機関の調査員は、「2002年に15億円以上の売り上げが報告されて以降、調査を拒否している。調査を受けなければ、小切手や手形などを介した商取引ができないため、現金取引だけでやっていたということになる。海運会社では聞いたことがない」とし、K社の特殊さを指摘する。

 

 2016年の国連専門家パネル報告書で、制裁違反者とされたA氏。本誌がK社の登記簿にある本社所在地を訪ねると、すでに別の企業が入居していた。ビルの関係者に尋ねると、「(K社は)2015年末くらいに退去した」という。

 

 代表番号に何度も電話をかけたが、出ることはなかった。A氏の自宅を訪ねたが、不在。

 

 A氏のような制裁違反者を取り締まる制度は不十分だ。

 

「制裁に違反したのは香港ミラエ社で、日本人のA氏が代表でも、日本の法律で裁かれません。しかも、K社とは別法人で、取引に関わった確証がないため、摘発の対象にならない。

 

 日本の対北制裁は、二国間貿易という古いモデルを前提としています。制裁逃れのために第三国を経由する取引で、A氏のように北に協力していることが明らかな場合でも、取り締まる法律がなく、摘発できないのです」(古川氏)

 

 北朝鮮のネットワークはこれにとどまらない。意図せずして、製品が北朝鮮のミサイル開発に利用されていた日本企業もある。

 

「2017年8月23日に朝鮮中央通信が報じた映像のなかに、『超低温恒温槽』という環境試験機がありました。超低温の気象環境が、ミサイルの素材に与える影響を試験していたものと思われます。ところがこの恒温槽は、ある日本企業が製造していた一世代前のモデルに酷似しているのです」(同前)

 

 本誌がその企業に問い合わせると、担当者は困惑してこう語った。

 

「弊社が1997年から2002年に製造していた超低温恒温槽に似ていますが、直接確認することはできず、当社製品と断定できません。当社製品には兵器開発の専用装置はなく、汎用性の高い製品を作っております。また、過去から現在にわたって、北朝鮮との取引はいっさいございません」

 

 この会社の製品を北朝鮮に調達したのは、いったい誰なのか。じつは北朝鮮が中東やアフリカの国々へ輸出しているとされるミサイル技術は、冷戦期に確立されたものだ。

 

「核やミサイル開発には、最新の技術や機器は必要ありません。実験機器などは、中古機器でも十分に対応可能です。インターネット上の購入ならば、偽名でも可能なのです」(古川氏)

 

「非核化」の実現は、まだ遠い未来になりそうである。

 

(週刊FLASH 2018年5月29日号)

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