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積水ハウス55億円詐取「地面師のドン」が手口を明かした
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.10.24 06:00 最終更新日:2018.10.24 06:00
「あの女性は、地面師の間では知られた人。今回とは別の詐欺事件でも、ニセの地主役で出てきていた。『またあんたか』と言ったことがある」(都内の不動産関係者)
東京・五反田の旅館「海喜館」をめぐり、積水ハウスが55億円を騙し取られた地面師事件。ニセの地主役を演じたとして逮捕された羽毛田正美容疑者(66)は、ふだんは生命保険外交員として勤務し、自身の子供らと暮らしていた。
近所の住人は驚きを隠さない。
「毎朝『おはようございます』と笑顔で挨拶して出勤していました。営業か何かの仕事だと思っていましたが、まさか地面師だったとは……」
逮捕者は9人。カミンスカス操容疑者(58)と会社役員の男D容疑者(63)は逃走し、三木勝博容疑者(63)は別の詐欺事件で10月16日に逮捕された。
警察の動きは察知されていた。全国紙社会部記者が言う。
「10月12日に逮捕する予定だったが、検察が捜査を詰めきれず16日に持ち越された。その間にカミンスカス容疑者の国外逃亡を許した。警視庁は激怒している」
ただ、地主役のオバちゃんは100万円か200万円しかもらえず『私の取り分が少ない』と怒っていたようだ」(不動産会社役員)
劇団のような事件には、台本を書く人物がいる。警視庁が次に逮捕の準備を進めているのは、事件の計画を練ったといわれる地面師のドン・受刑者X(65)だ。
都内で最も有名な地面師として知られ、現在はほかの地面師事件で服役中。このXと本誌は2017年9月に接触した。彼は「五反田の事件には関わっていない」としながらこう語った。
「俺は5年ぐらい前(2012年ごろ)から海喜館の地主に手紙を出して、再開発を提案した。五反田駅近くの一等地だ。さまざまなゼネコンから地主に宛てた手紙は数十センチの束になっていたそうだ。
地上げ案件として、旅館の近くに事務所を構え、図面まで作ったが、地主には接触できなかった」
Xは当初、不動産業者として地主に接触を試みた。そこで吸い上げた情報を基に、地面師として動くことになったようだ。
Xは“台本”をこう描いてみせた。
「まずは権利書の偽造だ。ニセの権利書を作ることがいちばん難しい。本物の権利書を作った当時の法務局のハンコを知らないと作れない。
権利書の紙も時代によって違うから、古い紙が必要。それらを用意できる人間がいるので、依頼する。表紙も必要だ」
次に、地主の役者を選ぶ。
「物件ごとにグループを作るんだよ。ニセの地主役のオバちゃんや、ニセの弁護士役や司法書士役など、いろいろ手配する人間がいるから、そこに依頼して、地主役を決める。
地主役が決まれば、身分証明になるものを作る。偽造パスポートなんてすぐに作れる。印鑑証明、納税証明書、運転免許証だって簡単だ。
グループの結束はそんなに固くない。外された人物が裏切ってマスコミにリークする場合もある」
Xはあくまで一般論だと話したが、警察は彼こそが五反田事件の黒幕とみている。
「今回の筋書きはXが全部描いたと、本人が言っていた。先に逮捕された面々はいわば、詐欺師にすぎない。事件の全貌を描いたXこそ本物の地面師だ」(前出・不動産会社役員)
舞台は成功したかに見えたが……台本どおりにはいかなかった。
(週刊FLASH 2018年11月6日号)