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松中信彦×川崎宗則、SBホークスで見た王監督の「若手操縦術」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2020.09.12 06:00 最終更新日:2020.09.12 06:00
チームとしては団結していたが、個々が馴れ合う関係ではなかったことで、互いに厳しいことが言い合えたとも、2人は強調する。
松中「試合前のノックで緩慢なプレーをすれば、ベテラン、若手に関係なく、みんなが厳しく言い合っていました。仲よくなりすぎると、言わなければいけないことも言いづらくなります。互いに仲間であると同時にライバルでもありますから、グラウンド内では、バチバチな部分がありました」
川崎「ふだんはバラバラでも、王会長の前でだけは、みんな真面目なふりをして、ひとつになっていたけど(笑)」
松中「試合後も、大勢で食事に行くようなことはなかった。みんなにかわいがられていたのは、宗くらいですよ(笑)」
強い組織には、それをまとめるリーダーがいる。2人は王監督のもとで、リーグ優勝や日本一のみならず、第1回WBCで世界一も経験している。世界のホームラン王は、やはり理想のリーダーでもあったのか。
松中「会長は、やっぱり現役のころから数多く優勝していましたし、どうすればチームが強くなるかを知っていました。発言にまったくブレがない、という点でも信頼できました。
試合中は、細かいことはほとんど言わない。バッティングに関しても、配球を読めというより、『とにかくストレートを叩け』と」
川崎「打てなかったら、『なんで打てないんだ? 打てよ、お前!』みたいな(笑)」
松中「負ければ、もちろん怒られますが、『この人をなんとしても勝たせたい』という気持ちになれる人でした。WBCでも、メジャーリーガーがサインを欲しがるんです。あらためて、“世界の王” のすごさを実感しましたね」
川崎「結局は、そこじゃないですか。いかに、その人のために頑張ろうと思えるか。リーダーの資質ということで言うなら、たとえミスをして怒られても、そこに人間味があって、その人に花を持たせたいと思えるかどうか。それは、リーダーに絶対に欠かせない要素だと思います。
会長は、こと野球に関しては厳しかったですが、ユニホームを脱ぐと、ものすごく紳士で誰に対しても優しかったですからね」
プロ野球の世界は、選手それぞれが個人事業主で、立場的には全員が横並びともいえる。2人はWBCでイチロー氏とともに戦い、川崎は尊敬する “師匠” を追いかけて渡米したほどである。
川崎「イチローさんは松中さんと一緒で、背中で引っ張るタイプでした。2006年と2009年、2度のWBCでは、イチローさんにリーダー的な役割を期待する声がチーム内にありましたが、イチローさんは『自分はプレーするだけだ』と、はっきりと言っていました」
松中「彼の準備のすごさには感心しました。僕がデッドボールを受けた翌日、早めに球場に行ったら、すでにイチローは練習している。天才といわれていますが、『尋常ではない努力をしているんだな』と」
川崎「多くを語らずにプレーで見せる。イチローさんは『試合でベストなパフォーマンスを見せるのが、野球選手としていちばんシンプルな仕事の仕方だ』という考え方でした」