●DH制が導入されたら…足が遅くても、守備が下手でも“長生き”できる
では、セ・リーグのDH制導入が決まれば、どんな選手にメリットがあるのか。
「いまお話したインハイ―デッドボールのリスクでいえば、“制球難” だと言われている(1)阪神の藤浪晋太郎選手などは、DH制が導入されない現状が続くなら、パに行って思い切った投球をしたほうがいいと思います。
それから一般的に言えば、『守備が下手で足が遅くても、打撃のいい選手』には恩恵がありますよ。『走攻守』の三拍子が揃ってなくてもいいので、極端なことを言えば、引き締まった体でなくても構わない。DH制が導入されれば、そういった選手の “プロ寿命” が長くなる可能性が高くなるんです」
スポーツ紙デスクにも、「セ・リーグ6球団でDH制に向いている選手」をあげてもらった。
「まず年齢から、常時の出場が難しいベテランが挙げられます。たとえば、巨人の(2)亀井善行や、ヤクルトに移籍した(3)内川聖一。守備力は落ちていますが、打撃に関しては、まだまだ一級品です。彼らが4打席立つのは、各球団にとっても脅威のはずです。
また、代打が中心の選手もそうですね。(4)阪神の原口文仁や(5)広島の長野久義などは、1打席だけではもったいないですよ」
さらにDHは、「若手の成長にもつながる」と続ける。
「(6)中日の根尾昂は、大きく育てたいからDHには起用しないかもしれませんが、彼に必要なのは、何よりも経験。代打などで起用するよりも、DHできっちり4打席を任せれば、成長に繋がるはずです。
それは、“捕手王国” の広島にも言えること。球界を代表する会沢翼がいるため、(7)坂倉将吾や(8)中村奨成といった、将来性が豊かな捕手の出番が限られています。そこにDHがあれば、2人を打者として起用できる。
また、ときには会沢をDHにして、2人のどちらかが代役を務めれば、捕手の重労働リスクを低減させることもできる。そうすれば板倉や中村の出場機会も増やせますし、経験を積ませることもできるわけです」
2リーグ制で異なるルールを用いているスポーツは、米国MLBを含め、野球しかない。日本シリーズで “接戦” が見られる日は、やってくるのだろうか。