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権田、板倉、三笘、田中…“夢” 見た4人の同時出場が叶う!「少年サッカークラブ代表」が見てきた「若き向上心」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.11.24 17:17 最終更新日:2022.12.03 17:39
11月23日、サッカー日本代表は「FIFAワールドカップ カタール2022」のグループリーグ初戦で、強豪国のドイツに2対1で逆転勝ちを収めた。
この試合で、ある “夢” が叶った人がいた。川崎市立鷺沼小学校のグラウンドで練習する「さぎぬまSC」で、約18年にわたって務めている、澤田秀治さん(64)だ。
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今回、選出されたサッカー日本代表で、GK・権田修一(33・清水エスパルス)、DF・板倉滉(25・独ボルシアMG)、MF・三笘薫(25・英ブライトン)、田中碧(24・独デュッセルドルフ)と、4人もの選手を「さぎぬまSC」から輩出しているのだ。
カタールW杯の開幕前に、澤田さんは本誌の取材にこう答えていた。
「できることなら、カタールW杯では4人同時にピッチに立って活躍してもらいたいですね」
23日の試合で、それは叶った。スタメンで権田、板倉、田中が出場すると、後半12分から三笘が途中出場。後半26分に田中が途中交代してしまうが、約14分にわたって、4人が同時にピッチに立った。
「さぎぬまSC」の創立は1979年。男子が各学年ごとの6チーム、女子が1チームの計7チームに、約150人ほどが在籍している。とても広いとはいえない校庭で、土曜、日曜、祝日の午前、または午後の時間を半分にして、2、3チームが交代で練習している。
澤田さんは本誌の取材にこう答えていた(以下、発言は澤田さん)。
「私たちのクラブは、『サッカーは楽しいスポーツなんだと伝えたい』を前提にしています。まず体験会を経て、希望すれば誰でも入団できます。たくさんのOBがいますが、(メンバーに選ばれた)4人に共通していたのは『誰よりも上手くなりたい』という向上心でしたね」
17期生の権田は、父親も熱心だったという。
「うちのクラブは、親も練習に参加するんです。ゴンちゃん(権田)のお父さんは、バスケットボールの指導者で、お母さんも元選手。スポーツに理解のあるご両親でした。
なので、チーム練習でGKの出番がないとき、代わりにお父さんが投げたボールをゴンちゃんがキャッチする練習をよくやっていましたね。お父さんは練習のとき、毎回、来てくれていました。
ゴンちゃんは低学年のころから、ほかの子供より頭ひとつ大きくて。6年生になったときには、身長がたしか175cmくらいあったと思います。
大きな体で最後尾から指示をよく出していましたね。ピンチやミスをしたときこそ『ドンマイ、大丈夫!』『シュートを打たれても俺が止めるから』と、チームを勇気づけていた姿が忘れられません」
25期生の板倉は、2年生のときに1年ほど在籍した。
「彼は、小学生時代はオフェンシブなポジションでした。2年生のときの合宿で、2ゴールを奪って、文集に『6年生に褒められたことがすごく嬉しかった。もっと練習していっぱい点を取りたい』と書いていました」
板倉の1年後に入団したのが三笘だった。
「このころからドリブルが得意で、ちょっとモノが違うというか、特殊なサッカー観を持っていました。
よく覚えているのが、彼は味方がドリブルして前線深くまで侵入すると、それについていくんです。で、ボールを取られると、いち早く自らチェイシング(追いかけること)して取り返す。すると、ゴール前ですから、より大きなチャンスになるわけです。
誰が教えたわけでもないんですが、このプレーをよくやっていました。小学生でここまで頭を使ってできる子はいませんよ」
4人のなかでいちばん若く、27期生の田中にも、忘れられない思い出があるという。
「体験会のことでした。まだ幼稚園児ですから、飽きたり、上手くできなかったりで、親御さんのところに行って泣く子が多いんです。彼も、さっきまで楽しそうにボールを蹴っていたと思ったら、ひとりで校庭の隅で泣いていたんです。
それで、僕が膝の上に乗っけて『どうしたの? 上手くできなかった?』と聞いたら、顔を真っ赤にして首を横に振るわけです。そして『ボク、こんな練習つまらない。もっと難しい練習がしたい』と言うわけです。
まだ幼稚園児だったのに、碧はひとりだけ意識が違いました。本当に熱心で、練習でわからないことがあると、どんどん質問してくる。こんな意識の高い子には、初めて出会いました」
なぜ、4人ものW杯選手を育てることができたのか。澤田さんは「たまたまですよ」と笑うが、「強いて挙げるなら、2つのことが考えられます」と続けた。
「ひとつは、OBの大学生の子たちが練習を見に来てくれること。ふだんは我々が教えていますが、やはり、若く活きのいい大学生たちが、その時代に合ったプレーなどを教えてくれるのは、大きいと思います。
もうひとつは、先ほどもお話ししましたが、親が参加するクラブだということ。親にしっかりと子供に関わってほしいんです。
お父さんたちには、サッカーを勉強する意味でも、4級審判員の資格を取ることをお願いしていて、多くの方が取っています。すると、家庭でもサッカー中心の会話ができるんですね。
練習のあと、お風呂に一緒に入って『コーチはああ言っていたけど、お父さんはよかったと思うよ』とか。食事のときも、ビデオを見ながら、会話の中心はサッカー。
オリンピックなんかを見ていても、日本が強い体操や卓球は、ご両親がもともとその競技をやっていた選手が多く、いわば英才教育を受けていたんですね。うちのクラブでも、それに近いことをやっていたことで、子供たちの成長に繋がったと思います」
さぎぬまSCは例年、3月末に体験会を開き、4月に12~13人が入団していたという。ところが、日本代表選手が一気に4人も出たことで、大きく変わった。
「2022年は4月に24人、さらに5月にも29人が入団してくれました。現在、新1年生の入団は待ってもらっている状態なんです。
まさに彼らの効果ですね。また、子供たちは4人を身近に感じ、励みにもなっています。頑張れば4人のようになれるかもしれないと。そうやって目標が持てるから、努力ができるんです。みんな目を輝かせ、楽しそうに練習しています」
( SmartFLASH )