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メッツ移籍の千賀滉大を買っていた「ノムさんの言葉」元代理人が分析「メジャー移籍を切望してきた選手は活躍する」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.01.23 20:20 最終更新日:2023.01.23 20:20
海外FA権を行使した千賀滉大投手(29)が、ニューヨーク・メッツと5年総額7500万ドルで契約した。背番号34は史上最高ともいわれる大投手のノーラン・ライアン氏もつけていた背番号であり、大型契約と相まって球団の期待の高さがうかがえる。
筆者が野村克也監督の個人マネージャーを務めていたころ、取材などで監督が話していたことをメモで残しており、そのなかには、千賀投手への言及も多かった。たとえば2015年のシーズンオフのメモには、「俺や千賀みたいなのは、日本中にたくさんいるのではないか」とある。
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才能があっても、いまだ日の目を見ない選手は数多いという意味合いの発言で、テスト生として南海に入団し、三冠王を獲得するほどまで出世した自身に千賀投手をなぞらえたものだった。
もっとも同年、千賀投手は後半戦に怪我から復帰したばかりで、先発としての実績はほとんどなかった。それでもその年のクライマックスシリーズや日本シリーズでの活躍を見て、これは素晴らしい投手に成長するはずだと監督は確信していたのかもしれない。
さて、NPBでの千賀投手はたびたび怪我をしており、その実力の割に成績は物足りないと感じるファンもいるかもしれない。MLBでも故障の心配をする声が聞かれる。
ただ、個人的には千賀投手は、MLBで好成績を収める可能性が高いと考えている。なぜなら、あくまで報道による情報だが、千賀投手は長年にわたってMLBに移籍することを願い続けていたからである。
MLBに移籍する日本人選手の中には、早い時期からMLB移籍を切望してきた選手もいれば、そうでない選手もいる。その違いは、移籍後の伸び代に大きく影響する可能性が高い。
MLB球団に移籍すると、日本人選手は母国との違いを多く経験することになる。最初の洗礼はキャンプだろう。日本と異なるやり方に直面して、「これがメジャーか、新鮮だ」と感じるのと、「なんでこんなやり方をするんだろう」と感じるのとでは、野球に臨む姿勢として雲泥の差がある。MLBへの憧れが長く強かった選手ほど、日本との違いをポジティブに捉えられるが、そうではなかった選手にとってはストレスになってしまうのだ。
同様のことは、MLBからNPBにやってくる外国人選手についても言える。私は代理人として、日米間で移籍する選手を多く見てきたが、異国での活動や生活に馴染めず、実力どおりに活躍できない選手も少なくなかった。MLBで活躍した選手ほど、NPBへの移籍を「都落ち」のように感じてしまい、力を発揮できないことが多い。逆にNPBで活躍しなければキャリアが終わってしまう、と強い危機感を持っている選手は、いい結果を残す傾向がある。
どんな仕事にも当てはまると思うが、多少なりとも楽しみながら取り組むのと、ことあるごとに戸惑いを覚えているのとでは、業績に大きな差が生じるものだ。その点、千賀投手は前者に当たると思われ、活躍を期待したくなる。逆にいえば、NPBでの最後の数年間は、ストレスのほうが大きかったのかもしれない。
もちろん、MLBは憧れだけで活躍できるほど甘くはない。どんなにモチベーションが高くても、MLB球への対応や過密日程、移動距離の長さなど、怪我や不調につながる不可抗力は存在する。
ともあれ、育成契約出身で初となる日本人メジャーリーガーが、世界最高の打者たちを翻弄する姿が楽しみだ。
(文・小島一貴)
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