スポーツスポーツ

なぜ阪神は優勝できないのか…藪恵壹が指摘する「高卒選手の育成が下手すぎ」問題

スポーツ 投稿日:2023.05.03 11:00FLASH編集部

なぜ阪神は優勝できないのか…藪恵壹が指摘する「高卒選手の育成が下手すぎ」問題

藪恵壹(写真:アフロ)

 

 高校野球の指導者たちが異口同音に語っているという、ある “噂” がある。
阪神だけには、選手を預けたくない」

 

 ちなみに「阪神」「高校生」「行かせたくない」の3つのワードでヤフー検索をかけてみると、なぜか「2018年」に書かれたとされる記事が頻出する。

 

 

 藤浪晋太郎が入団から3年連続で2桁勝利をマークしながら、プロ4年目の2016年から成績が伸びなくなり、制球難で苦しみ続けていた頃だ。

 

 2018年、藤浪の母校・大阪桐蔭高は、藤浪がエースとして大車輪の活躍を見せた2012年以来の、甲子園春夏連覇を果たしている。

 

 根尾昂(中日2018年1位・投手)、藤原恭大(千葉ロッテ2018年1位・外野手)ら優勝メンバーから4人がドラフト指名を受けるのだが、藤浪が “停滞” していた状況に、高校野球の指導者らが阪神の育成力に疑問符をつけ、教え子を送り出すことへの不安があるというのが話の大筋だ。

 

 高卒のたたき上げ、生え抜きのプレーヤーが、なかなか出てこない。その現状に、いつの間にやら「だから阪神はアカンのや」「だから阪神は弱いんや」という “定番の理由付け” が添えられ、育成下手のイメージがずっとつきまとっている。

 

■監督の在籍期間と高卒選手の育成期間の “ギャップ”

 

 阪神の「ドラフト1位」で新人王に輝いたのは、田淵幸一、岡田彰布、藪恵壹、髙山俊(千葉/明大/2015年1位)の4人。新人王は8人いるのだが、高卒の選手は一人もいない。

 

 その一人である藪は、阪神で11年間プレーした後、2005年にFA権を行使、藤浪が2023年からプレーするオークランド・アスレチックスへ移籍した。

 

 メジャー2シーズンで100試合に登板し、7勝1セーブ10ホールドをマーク。サンフランシスコ・ジャイアンツでの2008年には39歳199日で、当時の日本人メジャー最年長白星もマーク。帰国後の2010年は楽天でプレーした後、2011年から3年間、阪神の1、2軍で投手コーチを歴任している。

 

 藪は、阪神からコーチ就任のオファーを受けると、メジャーや他球団での豊富な経験を踏まえ、最新のトレーニング法や練習に関し、パワーポイントで資料を作成した上で、球団首脳とのミーティングに臨み、プレゼンテーションを行ったという。

 

「阪神は監督が代わると、また『ご破算で、願いましては』となる。方針が途切れて転換しちゃうし、伝統が続かないんですよね。ウチのシステムに入れば、必ずこうなりますよというのは、セ・リーグならヤクルトであり、広島であり、DeNAであり、パ・リーグだとソフトバンクであり、西武ですよね。阪神にはないですよ。そういうのが出てこない」

 

 日本一翌年の1986年以降、2022年までの37シーズンで監督はのべ12人。「3年」平均で、政権交代が起こっていることになる。

 

 高卒選手は、大学へ行ったと仮定しての「4年」が育成期間といわれている。だから計算上では、監督の方針がその育成期間中に途切れてしまうことになる。阪神の育成に一貫性がないとよくいわれるのは、この点が大きく関わっている。

 

 だからこそ、この “ギャップ” を埋めるのが「フロントの力」であり、それがチーム作りの根幹を担う「育成」を左右するのだ。

 

■掛布以降伸びていない高卒野手

 

 それだけに、藪の指摘は、驚愕の事実でもある。
「誰一人、いないでしょ?」
「高卒野手」が、ここ30年近く、阪神では伸びていないというのだ。

 

「掛布さんくらいでしょ? 後は、今岡(真訪〈誠〉・兵庫/東洋大/1996年1位)も、岡田(彰布)さんも、鳥谷(敬)も、みんな大学出。これだけの歴史があって、高卒のキャッチャーなんか、誰もいないでしょ? ゼロでしょ?」

 

 藪の指摘を受け、生え抜きの「高卒野手」に関して調べてみた。

 

 1980年から8年連続で掛布雅之が「開幕4番」を務めたが、その “掛布後” に、高卒の生え抜き選手で「開幕4番」を務めたのは、2000年の新庄剛志(福岡/西日本短大付高/1989年5位)、2003年の濱中治(和歌山/南部高/1996年3位)だけ。その2人も、その後の「開幕4番」はなく、クリーンアップ定着もできていない。

 

 掛布以降の高卒野手で、阪神在籍中に通算500安打以上を放ったのは、807本の関本賢太郎(奈良/天理高/1996年2位)と505本の浜中、955本の新庄の3人だけ。1656本の掛布の後、高卒野手では “大台” に誰も到達していないのだ。

 

 田淵以降の主なレギュラー捕手を見ると、若菜嘉晴はクラウンライターライオンズ(現西武)から、木戸克彦は田淵と同じ法大出身、嶋田宗彦(和歌山/1984年4位)も社会人の住友金属出身、山田勝彦(愛知/1987年3位)は東邦高からの入団だが、2003年には日本ハムへ移籍している。

 

 2019年から2022年まで4年間、阪神監督を務めた矢野燿大は中日から、城島健司(長崎/別府大附属高〈現明豊高〉/2010年移籍)はメジャーのマリナーズからの移籍で、梅野隆太郎(福岡/2013年4位)は福岡大出身だ。

 

 育て切れないのか、育つまでに時間がかかって待てないからなのか――。2015年からの3年間、ドラフトで高校生の野手を指名していない。

 

 

 以上、喜瀬雅則氏の新刊『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?』(光文社新書)をもとに再構成しました。熱烈阪神ファンの元番記者が、なぜ阪神は優勝できないのか、徹底検証します。

 

●『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?』詳細はこちら

( SmartFLASH )

続きを見る

スポーツ一覧をもっと見る

スポーツ 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事