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日本シリーズ本番!愛弟子・ 赤星憲広氏が語る「岡田彰布がやっぱり阪神を日本一にするワケ」

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.11.02 06:00 最終更新日:2023.11.02 06:00

日本シリーズ本番!愛弟子・ 赤星憲広氏が語る「岡田彰布がやっぱり阪神を日本一にするワケ」

岡田彰布監督

 

 いよいよ、38年ぶりの日本一が手の届くところまできた。選手は全員が平成生まれという、12球団でいちばん若いチームは、球界最年長の監督のタクトで自在に踊っている。「岡田マジック」の源を、愛弟子・赤星憲広氏が明かす。

 

 38年ぶりの日本一を目指し、日本シリーズに挑んでいる阪神タイガース

 

 

「この1年間、徹底してやってきた『守りの野球』を、リーグ優勝目前になっても、クライマックスシリーズの舞台でも、選手たちがプレッシャーを感じることなくできていました。2005年、僕らは、優勝が近くなったとき、めっちゃ意識して硬くなって苦労しましたが、彼らはすごい。重圧をものともしない。いい意味で、いまどきの選手たちなんだなと思います。強いですよ」

 

 本誌10月31日号に引き続き、2005年優勝時の盗塁王で、野球評論家の赤星憲広氏に阪神の強さの秘密を聞いた。

 

 矢野燿大(あきひろ)前監督時代の複数ポジション制をがらりと変え、今季、岡田彰布(あきのぶ)監督は、一塁大山悠輔、二塁中野拓夢(たくむ)、三塁佐藤輝明を固定。開幕戦は小幡竜平が遊撃手を務めたが、4月初旬から木浪聖也が入った。

 

「メンバーを固定したので、出番が減る選手が増えるだろうと思っていたら、小幡や小野寺(暖・だん)が、ワンチャンスで結果を出しました。なかでも、去年まで二塁のレギュラーだった糸原(健斗)は、序盤こそあまり結果が出ていなかったけど、監督が使い続けて打つようになった。シーズン後半はとくに、糸原の活躍が目立ちました。出番が少ないなかで結果を出すのは、とても難しいことです」

 

 投手陣の起用法も光った。

 

「先発ローテーションを守ったのは村上(頌樹・しょうき)だけなんですよね。村上も最初はローテーションの一角ではなかったけど。ほかは伊藤将司、西純矢、才木浩人、大竹耕太郎と、代える戦力があったからとはいえ、一定期間投げたら抹消してリフレッシュする時間を作って、また一軍に上げるといった使い方をしていました。昔だったらやってなかったと思います。桐敷(拓馬)がフレッシュオールスターゲームで、ストッパーとして9回に登板したときに、『こいつは中継ぎやと思った』と監督はおっしゃってましたけど、見事にハマりました」

 

 代打陣や中継ぎ陣がコンディションを維持できる環境を整え、適材適所で起用する。岡田監督が、個々の選手の状態を把握しているからこそ、 “岡田マジック” は成功する。その岡田監督の卓越した観察眼について、赤星氏は現役時代を思い出し、述懐する。

 

「僕が3試合連続マルチ安打を記録して、自分でも調子がいいのを実感していたとき。いい感じでバッティング練習をして、終わってベンチに戻ろうとしたら、監督が『おーん、お前、気づいているか? 今日か明日くらいから調子落ちるぞ。最近のバッティングのビデオを見てみろ』って言うんです。僕が内心、『どういうこと? めっちゃ調子いいんですけど!』って思いながら動画を確認すると、肘の角度の入り方が少し違ってきてると気づいたんです。監督は、『戻しておかないとおかしくなるよ』っていうことをおっしゃっていたんですね。誰よりも選手の変化に気づくのが早いんです」

 

 2006年、選手会長を務めていた赤星氏は、何度か監督室に呼ばれたことがあった。

 

「『あいつ、なんかおかしくないか? お前、見てて気づかへんか? ちょっと気にして見ておけよ』『あいつ、最近なんか悩んでるんやないか』とか。選手の体調やメンタルの状態に異変を感じると、いいタイミングで、的確なアドバイスをくれるんです」

 

▪️岡田監督が号泣した日

 

「2008年のシーズンは、優勝して監督を胴上げできるはずだったのに、(優勝できず)辞任に追い込んでしまった。新井(貴浩・現広島監督)が骨折して、矢野さんも怪我して、僕も公にはしてなかったけど親指を骨折していました。怪我人ばっかりで監督に申し訳なかった。今でも、僕らには監督に対して負い目があります」

 

 この年、阪神は7月の時点で2位巨人に最大13ゲーム差をつけて独走していたが、巨人の猛追にあい、優勝を逃した。岡田監督は、V逸の責任を取り、辞任を表明した。

 

 2008年10月20日、京セラドーム。阪神は中日に0-2で敗れ、クライマックスシリーズ第1ステージでの敗退が決まった。試合終了後、球場内には岡田監督の現役時代の応援歌が流れ、「かっとばせー! 岡田!」の声が響いていた。当時現役だった赤星氏は、監督室に飛び込んだ。ファンの声援は、監督室にも届いていた。

 

「監督、ファンが岡田コールしています」

 

「ええんや。俺は辞める人間やぞ」

 

「いや、だから行かないかんのです。(ユニフォームの)ズボンをはいてください。ファンが待っています」

 

 赤星氏は岡田監督を連れてグラウンドに戻った。

 

 金本知憲(ともあき)氏、鳥谷敬(たかし)氏、藤川球児氏ほか、選手たちが並んで待っていた。

 

「監督、胴上げしましょう!」

 

 マウンド付近で5度、宙に舞った。選手たちが次々と岡田監督に握手を求める。岡田監督は、人目をはばかることなく号泣した。

 

「僕らは監督のために優勝したいという強い思いがありました。今の選手たちは、僕らより監督との年齢が離れていますが、今年、優勝したときの監督と選手の様子を見ていたら、彼らも僕らと同じように、監督をそんなに遠くに感じてないように見えました。年齢のギャップを感じさせない力みたいなものが、岡田監督にはあるのかもしれません。『おーん、あれな、それな』だけでなく、もう少し言葉でうまく説明ができると、もっと伝わると思いますけどね(笑)」

 

 あれから15年。今シリーズの締めくくりは、笑顔の胴上げに違いない。

 

あかほしのりひろ
1976年4月10日生まれ 愛知県出身 2000年度ドラフト4位で阪神入り。プロ入り1年めに、盗塁王と新人王を獲得。以後2005年まで5年連続盗塁王を獲得し、通算381盗塁は球団最多記録。ゴールデングラブ賞6度受賞。2009年現役引退。現在、野球評論家 

 

写真・馬詰雅浩(赤星氏)

( 週刊FLASH 2023年11月14日号 )

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