一時止まっていたメジャー移籍計画を佐々木朗希は、自らの実力で再度、動かし始めた。
10月1日、佐々木はシーズン最後の登板、楽天戦に先発し、5安打1失点、108球の力投で今季初完投。この勝利は自身初の二桁勝利となり(5敗)、ロッテの3位と2年連続クライマックスシリーズ(CS)出場を確定させた。
まさにエースの投球内容だった。9回を投げ被安打はわずか5、与えた四死球はゼロだった。
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今季は苦労の多いシーズンだった。佐々木といえば160キロ超えの剛速球が代名詞だが、ケガや体調不良もあり、18試合の先発で160キロを超えた速球を投げたのは半分にも満たない7試合だった。
「佐々木は速球で追い込み、フォークで三振に仕留めるのが投球パターンでした。ローテーションに入った2022年は奪三振が173個、奪三振率が12.04。翌年は135個、13.35でした。でも、球速の落ちた今季は129個、10.46と数字的にも落ちているんです。それでも初の10勝を挙げた。これは何を意味するかといえば、三振に頼らずとも勝てる投手になったということ。苦しいシーズンでしたが、大きく成長した年でもありました」(ロッテ担当記者)
また、この試合ではメジャー移籍で本命視されるドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長をはじめ、ヤンキースなどメジャー10球団以上の関係者が会場となった楽天モバイルパークに足を運んだ。
「今季も1年を通じてローテーションを守ることができず、シーズン中盤には熱望していたポスティングシステムでのメジャー移籍はなくなったと言われていました。ところが、シーズン佳境の9月には4試合に先発し3勝1敗とエースの投球を見せ、CS進出に大きく貢献した。これで消えたと言われたメジャー移籍話も再燃しています。3位からのCS進出になりますが、リーグ3位からの日本一は2010年の千葉ロッテだけなんです。その再現となれば、ロッテとしても無視できない話になります」(同前)
だからこそ、佐々木の投げる試合には多くのメジャースカウトが集結する。
「佐々木に対するメジャーの評価は大谷翔平、ダルビッシュ有、山本由伸より上なんです。また、彼は2001年11月生まれのまだ22歳。MLBには、海外プロリーグから25歳未満の外国人選手を獲得する場合、契約金、年俸などを低く制限する通称『25歳ルール』があります。獲得するには年俸や契約金を足しても500万ドル程度(約7億2000万円)で済む。現地では、獲得に名乗りを挙げるのは、『メジャー全30球団』と言われています」(現地記者)
今回も客席から熱い視線を送っていたフリードマン編成本部長は、「彼は素晴らしく才能があるピッチャーであることはあきらか。私は日本には何年も前から来ていて、いろんな才能のある投手を見てきたが、彼は過去にアメリカに渡った投手たちの仲間に入る人材です」と、最大級の評価を与えている。
一方、直接対決で敗れた楽天はCS進出の可能性が消滅し、3年連続4位が確定。その責任のためか、今江敏晃監督の去就は決まっていないという。就任1年めだが、チームは大ナタを振るうかもしれない。
選手も同様、厳冬が待っている。その筆頭が200勝まであと3勝で今季に臨んだ田中将大だ。開幕から2軍暮らしが続き、初登板は9月28日のオリックス戦だった。
「ロッテとのCS進出争いが佳境を迎えていましたから、今江監督は士気を上げる意味でもオリックス戦に先発させました。しかし、今江監督が懸念していた球威はやはり衰えていて、この日も5回4失点で敗戦投手。2日には出場選手登録を抹消されたので、プロ18年めで初めて未勝利のシーズンとなりました。年俸は、復帰した2021年は日本球界最高額の9億円でしたが年々下がり、今季は2億6000万円。今季は未勝利で、しかも登板は1試合だけでしたので、年俸がどれだけ下がるのか、あるいは未契約になるのか、想像もつきません」(楽天担当記者)
22歳の若者は世界最高峰の舞台に心躍らせ、元メジャーリーガーの35歳は来季の契約に恐れおののく。プロの世界とはいえ、厳しい現実が待っている。
( SmartFLASH )