
つば九郎(写真・共同通信)
株主総会といえば、株主が不甲斐ない経営陣に厳しく質問する場面を想像する人は多いはずだ。
しかし、6月25日、東京・港区のグランドプリンスホテル新高輪で行われたヤクルト本社「第73回定時株主総会」では、少々違った光景が見られた。もちろん厳しい意見はあったが、株主からはヤクルトスワローズへの質問、意見が集中。なかでも2月に担当者が亡くなり、以降、活動休止となっていたつば九郎に対するものが多かったという。株主のひとりは「何らかの形で戻してあげてほしい。できれば幼少の頃のつば九郎のキャラクターで戻してくれると、ファンと球団が一緒になって育てることができるのかなと思っております」と、ときに涙を流しながら訴えた。
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これに対し、ヤクルトの林田哲哉代表取締役社長オーナー代行は次のように説明した。
「(つば九郎は)31年間かけてスタッフとファンの皆さまとともに育ててきたマスコットであります。われわれも皆さんの意見を真摯に受け止めて、今株主さんが申し上げられたような、幼少の頃のつば九郎であったり、これからのつば九郎であったり、今もう少し検討を重ねて再登場させたいと思っていますので、ご期待していただければなと思います」
球団きっての人気者でもあったつば九郎は現在活動休止中だが、それでも神宮球場ではグッズを身につけるファンで溢れ、その人気ぶりはいささかも衰えていない。
「少し前になりますが、2015年に山田哲人がトリプルスリーを達成し、2018年にはMLBから青木宣親が復帰しましたが、そのとき、彼らの関連グッズはかなり売れました。2人とも、そのシーズンのグッズ売り上げは首位を独走していたんですが、いずれの年も最後の最後で上回ったのがつば九郎なんです。2014年に始まったグッズ売り上げナンバーワンの座は、2022年に村上宗隆が三冠王を獲得したときに一度途切れましたが、翌年にはトップの座を奪い返しました。そのくらい人気は凄まじく、とくにちびっ子ファンからの支持は絶大なんです。新たなつば九郎グッズが売り出されれば売れることは間違いない。そこに球団が目を付けるのは、至極当然のことなんです。二代目の誕生はすぐかもしれません」(ヤクルト担当記者)
株主総会閉会後、林田氏は報道陣の囲み取材に対し、つば九郎の再登場の時期について明言は避けたものの「基本的には来シーズンくらいと思ってもらっていいですよ。でもステップも考えられるんじゃないか。いろんな場面で予告編できないかなとかね。お尻だけ見せるとか」と、すでに復帰に向けた演出を考えている模様。
ヤクルトはセ・リーグでも人気球団の一つに数えられるが、ホームでの観客動員数が200万人を超えたのは、故・野村克也監督が率いてセ・リーグを制し、日本一になった1997年まで遡らなければならない。2024年は199万8846人と、あと一歩だった。悲願達成のためには、つば九郎の復活も必要不可欠だろう──。