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ヤクルト村上「経営上の魅力」G岡本「スター不在が痛手」侍ジャパンW主軸、球団の思惑絡むMLB移籍それぞれの“可能性”

巨人の岡本和真
8月24日、ヤクルトの村上宗隆が本拠地・神宮球場でおこなわれた阪神戦で、今季10号となるソロホームランを放った。これで自身は7年連続2桁本塁打をマークしたことになる。
9月の声が聞こえるこの時期にようやく2桁本塁打となれば、ファンは「遅い!」となりそうだが、今季の村上は上半身のコンディション不良で完全な出遅れ。一軍スタートは4月17日のことだったが、打席で強振したことで同じ場所を痛め、再度、二軍降格となった。そして、3カ月後の7月29日に昇格すると、ここまで出場わずか25試合で10本塁打。143試合に換算すると57本ペースとなり、やはり日本球界最高のホームランバッターであることを証明している。
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その村上は、今オフにポスティングシステムによってMLB移籍が既定路線だ。
「球団としては、ここ数年の最大の功労者だけに、快く送り出したい気持ちがある。その気持ちに応えようと、村上はいままで以上に打ちたいと考えていたようです。ところがケガで出遅れたため、それがかなわなかった。試合数は残りわずかとなりましたが、村上はできるだけ多く打って、恩返ししたい気持ちが強いようです」(ヤクルト担当記者)
ここまでくると、相思相愛のMLB移籍にも思えるが、この記者は「ヤクルトには出さざるを得ない事情がある」と続ける。
「ヤクルトの本拠地は神宮球場で、立地条件もよく人気球団と思っている人は多いと思います。しかし、ここ数年はBクラスに甘んじているため、観客動員数が伸びていません。2024年のセ・リーグの1試合における平均観客数は、3万4074人と好調でしたが、ヤクルトは2万8153人と大きく下回ってしまいました。しかも神宮球場は自前の球場ではなく、試合のたびに賃貸料が発生します。現在、ヤクルトは球団経営として決して安泰ではなく、そうしたなか、村上には約6億円、山田哲人には約5億円の年俸を払っているわけです(金額はともに推定)。とくに村上の年俸が経営を圧迫していることは間違いなく、『移籍してもいい』が球団の本音でしょう。
しかも、ポスティングでの移籍となれば、譲渡金として多額のお金が新チームからヤクルトに支払われることになります。2023年にオリックスの吉田正尚がレッドソックスに移籍した際、譲渡金は約20億円でした。村上はまだ25歳と若いので、吉田よりも大型契約が望めるため、経営が苦しいヤクルトにとって、譲渡金は大きな魅力のはずです」
村上同様、侍ジャパンの主軸で、同じ今オフにポスティングによってMLB移籍が確実視されていたのが、巨人の岡本和真だ。
しかし、村上と同じようにケガで長期離脱して復帰したにもかかわらず、彼の場合は移籍が怪しい雲行きとなっているという。ここまでの流れを巨人担当記者が語る。
「巨人はポスティングではもちろんのこと、海外FA権を取得しての移籍も『よし』としない風潮がありました。象徴的だったのが、2003年の松井秀喜のヤンキース移籍です。海外FA権を取得して、胸を張っての移籍を許されたわけですが、許したくない巨人は移籍会見の場をセッティングせず、すべて松井主導でおこなわれました。あれだけ巨人の躍進に貢献した選手に対してです。あまりにもひどい仕打ちに、巨人はかなりたたかれました。そのことがあり、球団内には『貢献者は快く送り出そう』という流れが生まれ始め、だからこそ、岡本のポスティング移籍を認めることとなったのです」
その流れが、なぜ止まってしまったのか。
「岡本不在は、巨人が考えていた以上に大きかったということですね。阪神に独走を許してしまったこともそうですし、野手で岡本以外にスターがいなくなってしまった。坂本勇人は衰えが著しく、もはやスタメンではなくなった。丸佳浩にしてもケガが多く、多くの出場は望めない。泉口友汰ら中堅ががんばっていますが、知名度的にはイマイチ。要するに、現在の巨人はスター不足が深刻なわけです。ヤクルトは村上がいなくなっても山田がいますが、巨人には代わる選手がいません」(同前)
岡本が置かれた立場を考えると、菅野智之を思い出さずにはいられない。菅野も岡本と同じように、若いころからMLB志向が強かったが、移籍できたのは35歳となった今季。菅野はチーム状況が悪いなか、“オールドルーキー”として唯一の2桁勝利をあげている。だが、「MLBの舞台で全盛期の菅野が見たかった」と思っているファンは多いはずだ。
村上と違って、岡本は2026年の6月30日には30歳となり、ベテランの域に達する。彼に残された時間は、それほど多いとはいえないはずだ。