
ブルワーズ戦で3本めの本塁打を放ち、ベンチに合図を送る大谷翔平(写真・共同通信)
■【大谷翔平】不調時も、打ち損じたゴロの打球速度は速かった
「このパフォーマンスでは、ワールドシリーズで勝つことはできない」
ドジャースのロバーツ監督が、大谷翔平に呈した苦言が嘘のようだ。
10月18日(日本時間、以下同)、ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズの第1打席で左腕・キンタナのスラーブを右翼席最上段へ。第3、第4打席も本塁打を放った。ポストシーズン(PS)の打率1割台をようやく脱した。
大谷にいったい何が起きていたのか? 野球の統計的なデータ分析「セイバーメトリクス」をおこなうDELTAの宮下博志氏に話を聞いた。
「レギュラーシーズン(RS)とPSの成績を比較すると、三振率が37.5%と高く、スイートスポット率(打球がヒットになりやすい8~32度の角度で飛ばした割合)が35.9%から10.5%と大幅に下がっていて、ポップフライやゴロが激増していました。データを見る限り、不調の原因はスイングの精度にありました」(データは10月15日時点。以下同)
敵チームは大谷対策として、左投手をぶつけてくる。
「外角に逃げていくスライダー系に苦労しており、空振り率が62.5%と高く、スイートスポット率は0。クリーンヒットは1本もありませんでした。一方で、内角へ食い込むシンカーでインコースを意識したスイングを強いられ、アウトコースはストライクの球でもほとんど見逃していました。左投手にインコースを攻められた結果、PSでの打撃ポイントは8.1cm、つまりボール約1個ぶん、体に近いところで打たされていたのです」
とはいえ、これまで大舞台で結果を残してきた大谷。このままで終わるはずがない。
「RSよりも上回っているのが、ハードヒット率(打球のうち、153km/h以上が占める割合)。打ち損じたゴロの打球速度が速いんです。スイングスピードも平均122km/hと変わっておらず、パワーは維持できていました。今回の3発で、ついに本領を発揮したといえるでしょう」
■【山本由伸】「ゾーン」周辺のコントロールがずば抜けている
山本由伸は、PSに入っても好調をキープしている。10月15日、対ブルワーズ第2戦で先発し、7奪三振1失点で、チーム21年ぶりとなるPSでの完投勝利を飾った。
「山本投手の特徴は、まずボールゾーンでのスイング率が高いこと。スライダー、スプリット、カットボール、シンカーなど、MLBの平均値よりも高い確率で、打者にボール球を振らせることができています。そして、審判がストライクと判定する確率が50%ギリギリの『ゾーン』周辺にコントロールできる点もずば抜けています。しかも、どの球種でも勝負ができる。圧倒的な球威ではなく、際どいコースで打者との駆け引きに勝利しています」
フォーシームは150km/h台前半で、さらに多彩な変化球が勝負球として使える。メジャーでもトップクラスのバッターが、山本のボールに四苦八苦しているのは、その軌道にも理由がある。
「右打者、左打者で、それぞれ見え方は変わりますが、とくに左打者は、フォーシーム、カットボール、スプリットの区別がつきません(画像4参照)。ボールが同じ軌道をたどりながら、アウトコース、インコース、そして手元で落ちるボールに変化するため、左打者はつねに三択を迫られている状態にあります。毎回、じゃんけんをしているようなもの(笑)。この軌道は、山本投手の制球力の賜物です」
■【佐々木朗希】落差は47cm! スプリットも健在
ブルペン陣の救世主・佐々木朗希。メジャー復帰後の球種は、160km/hを超えるフォーシームと、“消える魔球”のスプリットの2種類のみだ。
10月10日のフィリーズとの第4戦、17日の対ブルワーズ第3戦では圧巻のピッチング。5月に右肩の怪我で離脱し、8月15日、マイナーで投げた球速平均は150.8km/hだったが、2カ月弱で完全復活をとげた。
「マイナー降格前のフォーシームの空振り率は10.1%でしたが、メジャー復帰後は50.0%に上昇。制球力も大幅に改善されました。RSでは引っかけたようなボール球が多かったのですが、復帰後はゾーンに集中しています」
一方のスプリットについて、宮下氏は「現在、メジャー史上最高クラスです」と語る。
「フォーシームとの落差は47cmと鋭く、空振り率は降格前の35%から54.2%に。制球は変わらず散らばっていますが、フォーシームと軌道が同じで、手元で落ちるのか、伸びてくるのか、打者は判断が難しいんです」
ワールドシリーズでも、大暴れする3人が見られそうだ。
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