
カート・スズキ新監督に笑顔をみせるエンゼルスのペリー・ミナシアンGM(写真:Imagn/ロイター/アフロ)
2025年のワールドシリーズ(WS)が10月24日(日本時間25日)に迫る一方、敗れた28球団は早くも、来季に向けての準備を進めている。
なかでも注目されたのが、ロサンゼルス・エンゼルスの新監督に元MLB捕手のカート・スズキ氏が就任したことだろう。エンゼルスから発表されたのは、21日(同22日)のことだった。
スズキは16年間の現役生活で、複数の球団でプレー。2021~2022年の2シーズンをエンゼルスでプレーするなど、大谷翔平とバッテリーを組んでいたことでも有名だ。古巣へは監督として戻ってきたことになる。
エンゼルスの監督といえば、2000年から2018年までマイク・ソーシア氏が長期政権を築いてきた。その間、ナ・リーグ地区優勝を6回果たし、2002年には球団唯一のWS制覇も達成した。
しかし、ソーシア氏が監督を退くころはチームにとって過渡期で、補強面もうまくいかなかったことで、低迷期に入ってしまった。ここ10年は連続で負け越し、ポストシーズン進出も2014年を最後に遠ざかっている。
2025年は72勝90敗で、球団史上最悪だった前年の63勝99敗からは9勝、上積みできたが、最下位に沈んだ。継いだ監督たちは長続きせず、監督交代が相次ぐのは当然の流れだったのだろう。スズキ氏はソーシア氏が退いたあと、5人めの監督となる。
「エンゼルスは、補強面では監督にしろ選手にしろ、知名度を重視する傾向があります。今回の監督人事にしても、トリー・ハンター氏やアルバート・プホルス氏といった、チームのOBであるスーパースターを第一候補に進めていました。『野球観や指導者としての資質ではなく、またも“名前”か』と頭を抱えるファンは多かったのです。
しかし、土壇場でスズキ監督誕生ということで、落胆から歓喜に変わりました。新監督は現役時代に特別な成績を残しているわけではありませんが、堅実なバッティングに加え、グラウンド全体を見渡せるキャッチャーというポジション柄、優れた野球観の持ち主という評価もありました。
ナショナルズに在籍していた2019年には世界一も経験しています。こうしたことから、監督未経験ながら、長く低迷するチームの再建を任されたのでしょう」(現地記者)
どちらかといえばミーハー傾向にあるチームだけに、地に足をつけた人物の監督就任に、地元ロサンゼルスもほっと一安心といったところか。
ところが――。発表からわずか1日後の22日(同23日)、ペリー・ミナシアンGMが記者会見で「契約は1年」と明かしたのだ。
「この発表には驚かされました。大ベテランの選手を1年のみで契約することはよくありますが、監督で最初から1年契約というのはほとんど聞いたことがありません。
常勝軍団の監督を引き継いだなら、チームをあまり変える必要がないため、1年契約はあるかもしれません。しかし、エンゼルスは若くて優秀な選手が台頭してきたにもかかわらず、長く低迷期に入っています。チームを根本から変える必要があるのに、1年契約は信じられません。
じつは2027年に、労使交渉によるストライキが発生する可能性が指摘されていて、ケチで知られるアート・モレノオーナーが『そのときに、スズキ監督に給料を払いたくないから1年契約にした』といった噂が、まことしやかに語られるようになってきました。
結局、地元ファンは理不尽な展開に『またも迷走か』と落胆し、大ブーイングとなっているのです」(同前)
生前、野村克也氏は監督交代について、本誌に次のように語っていた。
「監督交代は、チームを変える必要があるからやることなんだ。それには時間がかかるし、本音を言えば3年から5年はほしいところ。でも、最近の傾向として契約期間は短いでしょ。引き受ける人もたいへんだと思うよ」
天国で、名将はきっとボヤいていることだろう。
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