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大谷翔平“歴史的活躍”の裏でYouTubeに蔓延する「海外の反応」うたうフェイク動画…生成AIが生んだ“荒稼ぎ”の実態

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記事投稿日:2025.10.25 19:10 最終更新日:2025.10.25 19:11
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
大谷翔平“歴史的活躍”の裏でYouTubeに蔓延する「海外の反応」うたうフェイク動画…生成AIが生んだ“荒稼ぎ”の実態

ブルージェイズとのワールドシリーズに挑む大谷翔平(写真・アフロ)

 

 10月18日(日本時間、以下同)、ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズで10奪三振、3本塁打を放った大谷翔平。世界中のドジャースファン、そしてMLBファンが彼の“偉業”を絶賛する言葉は、海を越えて日本にも届いてくる。

 

「前人未到」「歴史的快挙」「GOAT」「伝説」「ベーブルース越え」……たとえ英語ができなくても、こうした言葉にいまでは簡単に触れることができる。YouTubeを開き「大谷 海外の反応」と打ち込めばいいのだ。

 

「いわゆる『海外の反応』と呼ばれるものですね。アスリートの活躍からグルメやアニメなど、日本に関連するあらゆるものについて、海外での反応を翻訳して紹介するコンテンツです。いまでは、YouTubeで一大人気のジャンルとなっています。そしていま、海外で“ウケている”ものといえば、何よりも大谷翔平です。大谷を称える現地ファンの言葉はもちろん、現地のテレビ番組での解説者のコメントなど、ありとあらゆる言葉が翻訳されています」(ITライター)

 

 海を渡った日本人が絶賛される様子を見るのは、当然、楽しいもの。検索すると、おびただしい数の動画がアップされ、数百万回も再生された人気動画まですぐに見つけられる。

 

 だが、もしこの言葉がフェイクだったら――。じつはいま、大谷人気にあやかった出典の不たしかな「海外の反応」動画が増えているという。

 

「いろいろなパターンがあります。たとえば『翻訳』と銘打っているものの、脚色しすぎて正確でない場合や、ネット掲示板を翻訳したと主張しながらも原典が記されていないもの、過去に発言した内容を、不自然なフェイク動画であたかもテレビ番組で話しているかのように加工したものなどです。なかには、『大谷がオルティズに直筆の手紙を書き、オルティズが感動して涙を流した』とか、『大谷が密かにトラウトと会食をしていた』など、まったく根拠のないフェイクニュースを流しているものもあります。ここまで来ると、悪質です」(同前)

 

 実際、本誌が著名な現地の解説者や、MLBのレジェンドプレーヤーが大谷を絶賛した、という内容の動画をいくつか調べたところ、動画内で紹介されている発言が、いっさい大手メディアのニュースで紹介されていないケースが多々あった。要するに、翻訳ではなく“創作”というわけだ。

 

 ITジャーナリストの三上洋氏はこう解説する。

 

「大谷さんの場合は、“美談”のフェイク動画が多い印象ですね。すごくかっこいい話とか、子どもを救ったとか、大谷さんが言ったことで誰かが元気になったとか。思わず泣いちゃうような、いい話に仕立てるっていうパターンです。完全な創作の場合もあるし、もともとあったエピソードを誇張・脚色したパターンも、けっこうあります。

 

 ただ、プレー動画そのもののフェイクは少ない印象です。これは活躍しすぎて、リアルな動画で十分“嘘っぽい”ぐらい強烈な印象があるからでしょうね(笑)」

 

 こうしたコンテンツの狙いは、もちろん広告収益だ。

 

「YouTubeでもTikTokでも、再生されればされるほどお金になりますから、何より収益が目的です。また、場合によっては再生数を稼ぎ、チャンネル登録者数が増えた状態でそのアカウントを転売するというやり方もあります。被害に遭っているのは大谷さんだけでなく、故・エリザベス女王やトランプ米大統領など、著名な人物はもれなく“ネタ”にされています。なかには、アインシュタインなど過去の偉人を使う場合もあります」(三上氏)

 

 こうした動画を支えているのが、近年、進化が著しい生成AIだ。

 

「現在のフェイク動画は、すべてAIを利用して使ったものです。5年ほど前は、既存の動画の一部を変更(顔の差し替えなど)する程度でしたが、2、3年前からは、自在に動くキャラクターのフェイク動画が作られるようになりました。さらに最近では、AIが参考にすべき元動画なしで、ゼロから生成できるAIも登場しています。つまり『大谷が歩く動画を作って』と指示すれば、存在しない映像をAIが作れるのです。

 

 英語圏など日本語圏外の人も、フェイク動画産業に参入しやすくなりました。AIを使えば、簡単に日本語のテロップや音声をつけて投稿できるようになっているのです」(三上氏)

 

 本誌は、こうしたフェイク動画の投稿者と思しきひとりに取材を申し込んだ。すると、投稿している動画は「パロディチャンネルでエンタメ動画」であると説明したうえで「内容に脚色を加えている部分もある」としつつ、視聴者を勘違いさせているのであれば「方針を変更する」と回答した。

 

「何が嘘で何が本当なのか、YouTubeの動画だけで見抜くには非常に難しいでしょうね。投稿者には法的リスクもあります。動画によって相手の名誉を傷つければ名誉毀損。また、肖像権の侵害にもなります。さらに有名人の場合、パブリシティ権といって、名前や姿を勝手に商業利用して収益を得るのは、本人の権利の侵害です。これらは民事訴訟で争うことになりますが、現地メディアや大谷さんサイドが個別に訴えるのは現実的ではありません。そのため、これほど多くの動画が投稿されているのでしょう」(三上氏)

 

 まさに大谷を利用した荒稼ぎ。これもスターの宿命といえるのか……。

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