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大関昇進「栃ノ心」ロシア格闘技サンボの最強王者だった

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2018.05.31 11:00 最終更新日:2018.05.31 11:00

大関昇進「栃ノ心」ロシア格闘技サンボの最強王者だった

 

「彼が母国ジョージアで柔道やサンボをやっていたのは有名ですが、相当強かったらしく、あのままジョージアにいたら柔道で五輪に出場していた、と彼自身で言っていました。サンボのほうは祖父がソ連王者だったそうですから、格闘技の申し子なのでしょう」
  

 相撲ジャーナリストの荒井太郎氏がこのように評するのは、大関昇進が決まった栃ノ心(30)のことである。

 

 五月場所では、十二日目に192センチ155キロの横綱・白鵬(33)を何度も吊り上げ、土俵の外へ「寄り切り」。大関を手繰り寄せる勝利だった。角界一といえる怪力だが、栃ノ心はそれに負けない “センス” を、冒頭で荒井氏が語ったロシアの格闘技「サンボ」で培った。

 

 格闘技ライターの布施鋼治氏が解説する。 

 

「サンボとはレスリングと柔道を掛け合わせたような、相手と組み合って投げ技や関節技を繰り出す形の格闘技です。昔の日本の子供たちの多くが柔道や相撲をやっていたように、ロシアや東欧諸国では、『まずはサンボを』という感じで広く普及しています」

 

 栃ノ心は2005年にサンボでジュニア世代の欧州王者に輝き、民族相撲「チダオバ」でも無類の強さを見せた。 

 

「柔道やレスリングで数多くの五輪メダリストを輩出しているロシアや東欧諸国では、サンボで活躍してから五輪競技に転向するパターンがほとんど。欧州王者ならば、組み技系の格闘技において相当な才能を持っているはず。

 

 チダオバは、立った状態から競技服やそのベルトを摑んで相手を倒したり投げたりするので、これも下半身の土台を作ったのでしょう」(布施氏)
  

 これらの競技で強さを見せてきた栃ノ心にとっては、相撲も例外ではなかった。2004年の初来日で出場した世界ジュニア相撲選手権大会では、未経験ながら3位。2005年には同大会で準優勝し、鳴り物入りで春日野部屋へ。

 

 しかし、入門後は慣れない環境への適応に苦しみ、素行を注意されたことも数知れず。門限を破って、春日野親方(56)からゴルフクラブで殴られたこともあるなど、問題児だった。

 

「キレてもおかしくない一件でしたが、栃ノ心は『親方は自分のことを本気で考えてくれ、本気で怒ってくれた』 と感銘を受け、信頼するように。『稽古は嫌いじゃない』と語っているように、このときから稽古量もよりいっそう多くなっていった」(相撲担当記者)

 

 栃ノ心の “心” には、「日本の心を持った力士に」という親方の願いが込められている。母国の格闘技経験と日本で培った「不動の心」を併せ持った新大関が生まれる。
(週刊FLASH 2018年6月12日号)

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